第6話 次世代

 カレーライスを振る舞った翌日、勇者御一行様は隣の屋敷にいる父に挨拶しに行った。昨日はお休みを貰ったが、僕は母の手伝いがあるのでユーリとギルドハウスに向かう。


 母は当然のように勇者様のようすを気にかけていた。


「イクスはどうだった? ちゃんとおもてなしできた?」

「喜んでくれたと思いますよ」

「そう……お父さんの話だと、イクスは勇者を引退するらしくて」


 思えば彼は勇者としては少し老けていた。

 元気な方だとは思うけど、勇者として活躍するには年がいきすぎな印象だ。


「そしたらそれを聞いたお父さんがね、お前のために彼を引き取ったらしいの」

「僕のため?」


 父は裏が読めないところがあるからな、何を考えているのだろう。


「オーウェンは自覚ないかもしれないけど、貴方のユニークスキルはすごいのよ?」

「それで?」

「つまり命を狙われてもおかしくないの、拉致されて利用される可能性だってある」

「そのためのイクスさんなんですか?」

「って、お父さんは弁解してたけど、どうなのかしらね?」


 母はそう言い、今月の商品一覧を僕の隣で作成していた。

 母は先日のような横領事件を恐れて、注意書きも付け加えている。


『この一覧表の改定はまずありえないと思ってください 以上』


 先日の件で僕も学べば、母も学び、それを目撃していたみんなも学ぶ。

 みんなはこう思ったはずだ、ギルドで何かやらかしたらまず三日死ぬ、ってね。


 ギルドで手伝っていると、イクスさんが顔を出した。


 ギルドハウスにいたメンバーは勇者の来訪に歓声をあげる。


「みんな元気いっぱいだな、俺にも分けてくれよ」


 母さんがやって来た勇者に対応していた。


「イクス、何しに来たの」

「レイラも知っての通り、俺は勇者を引退することにした」

「ええ、それで? 今までお疲れさま」

「まさか自分でも引退後の生活を考えられなくてな、ちょっとやる気なくしてたんだ」


 ――だけど、お前の息子見たらふつふつと何かがこみあげてきたんだ。


「俺は今日限りで勇者を辞める、そしてオーウェンの家庭教師になるよ」


 家庭教師となぁ~?

 母の制止も聞かず、イクスさんはずかずかと僕に歩み寄り肩に手を置く。


「俺の時代は終わった、次の時代のことはお前に任せる!」


 イクスさんの大それた台詞に僕は愛想笑いするしかなかった。


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