【掌編・幕間】フクロウは冬をやり過ごす

簡単で粗雑な入団指南

 いつも拙作をご愛顧いただき、本当にありがとうございます。


 今回はこちらで、本編「赤の魔竜と歪の月」とは関係なく、近況ノートにてPV50000感謝企画として募集しましたスピンオフのお話を「幕間」と銘打ってお届け致します。

 普段の展開ではお見せ出来ていない、登場人物達の側面を書いています。いつもとは違った雰囲気をお楽しみいただけると本当に嬉しいです。

 また、PV60000達成企画を同時に募集しております。どの様な些細なものでも構いません、本編に絡んだ私にやらせたい事や書かせたい話を、是非気兼ねなくご提案下さい。詳細は近況ノートをご覧いただきたく思います。

 重ねて、本当にありがとうございました。そして、いつもありがとうございます。 








 なぁなぁ、そこのお前。…うん、ぼーっと立ってるそこのお前。


 お前、新入りだな?大丈夫、言わなくても俺には分かるぞ。「新入りは大体ぼーっとしてるもんだ」って、ハンダール言ってた。「初めはうちのアットー圧倒されちまう」んだって。


 俺、ゴブリンのぺギル。ハンダールに会って、皆と会って、それから一緒にいるんだ。皆と同じヨーヘイ傭兵…フクロウ団の一員なんだ。

 よし!新入りのお前に、俺が特別に、皆を紹介してやるぞ!そんな顔するな、……えーっと……お代は見てのお帰りだから!な!



 フクロウ団っていうヨーヘイ傭兵団は、元々四人から始まったんだ。今は六十人ぐらいいるみたいなんだけどな。初めの四人が、あの角のテーブルに座ってる。

 で、皆をまとめる総長が一番えらい。その次にえらい……文鳥……あ、それそれ、分団長!それがいて、その下に副長がいて、…まぁ良く分かんないけど、えらい奴いっぱいいるんだ。



「じゃあ何か?!俺が自分でどっかに放り出してきちまったって言いてぇのか?!」


 初めの四人のうちの一人、栗髪ヒゲ坊主がアヴォルノ。熊みたいにおっきいけど、気の良い奴だし、いっつも誰かに怒られてる。ハカイソー破戒僧なんだって。

 …あのヒゲ、すごく痛いんだ。だから酔ってるあいつはきらい。


「その可能性は否定出来ん」


 腕組んでむずかしい顔してるのが、エルフのクーゼルク。セーレー精霊魔法が使えるし、弓がうまいんだ。

 あと、あんまりしゃべんないし、のろわれてたけど今はのろわれてないし、空飛べるんだって。わけが分かんないな。


「私も同感です…今日も酷い深酒でしたからね」


 アゴにヒゲ生やしてて、なんだかふわふわしてるのがゼニン。昔はシンドー神童って呼ばれてた魔導士なんだ。名前、変わったみたいだな。……ちがうのか?

 あいつ、たまに自分で自分のこと「天才」って言うんだ。俺と同じだな!


「そもそもあんた、日頃から酒に呑まれ過ぎなんだよ。大して強くもないくせに」


 赤い髪のおっかなそうな女が、レジアナ。フクロウ団の総長で、剣がすごいし、しじゅちゅ屍術もすごいみたい。

 でも本当にすごいのは、誰が相手でも本気で蹴っ飛ばすところ。



「でも流石にちょっと…あり得なくないですかね」


 隣のテーブルにいるのが、初めの四人じゃない分団長たち。


 今、首ひねってるのが、アレート。|いっつも皆を遠くから見てニコニコしてる。トーゾク《盗賊》で、扉を開けたり、カギを開けたり出来るんだって。

 カギがかかってたら壊せばいいのにな。


「全然あるでしょ!泥酔する時はとことんなんだから!」


 その隣でおなか抱えて笑ってる女が、ニザ。すごく珍しいライカンスロープ人狼ってやつなんだ。……ん?そうだろ、すごいだろ!ちゃんと言えるんだぞ、ライカンスロープ!ライカンスロープ!

 ……ちゃんと言えるようになるまで、ずっと練習させられたからな…。


「少し落ち着いて考えてみませんか」


 あの銀髪がエシュー。すごく強い剣士で、時間の魔法も使えるんだ。で、あんまりしゃべらないのに、たまにしゃべると笑われたりしてる。

 クーゼルクもそうだけど、しゃべらないやつって変なの多いな。



「依頼からの帰り道では私も確認していますわ、間違いありません」


 反対側のテーブルが、副長たち。


 杯片手にしてるのが、ギサルカ。キゾク貴族…?とかいう生まれの女魔導士で、アヴォルノの副長なんだ。いつ見てもアヴォルノを怒ってる気がする。

 でも、仲良さそうなんだ、すごく。見てると父ちゃんと母ちゃん、思い出すんだよな。


「じゃあ帰って来てからなんですね…となると…」


 腕組んでる栗色の髪の男が、ネルエス。弓とかシンセー神聖魔法も出来る剣士で、クーゼルクの副長。クーゼルクが大好きだぞ。

 多分、フクロウ団の中だと、俺の次にまともなやつ!


「アヴォルノ分団長…そう言えば、一度外出されましたよね?」


 隣に座ってるリザードマンの男が、リンザル。槍がすごいし、見た目が格好良い!あと、ハンダールが言ってた…そうそう、なんだって!

 あ、でもでも!絶対に棒でつつくなよ?……怒られるんだ、ものすごく……。


「あ、それ私も一緒だったよ。消耗品の買い出し行ったんだ」


 頬杖ついてる小柄な女が、ネネイ。二本剣を使う剣士で、ネネイもしじゅちゅ屍術が使えるんだ!レジアナの副長で、レジアナに怖い顔できるのはネネイだけなんだ。

 皆が言うには、姉ちゃんがいっつもそばにいるんだって。どこにいるんだろ。


「じゃあもう決まりだろ、おっさんが落っことしてきたんだよ!はい終わり終わり!」


 あの、めんどくさそうな顔して頭掻いてるのがハンダール!力の強い戦士で、アレートの副長!いっつも俺をおぶって面倒見てくれてるんだ!

 で、ずーっと…本当にずーっと文句言ってんだ!良く疲れないよな!


「ですが、この雪の中ですよ?出先で手袋を脱ぐ用事が先ずありません」


 長い黒髪を結んでるのが、セルエッド。矛槍…?の使い手で、ニザの副長なんだ。ニザがすごく自由だから、いっつも困った顔してる。

 自由、俺も好きだぞ!何やってもいいって事だろ?……え?!違うのか?!


「あーあ…あんなに怒ってたのに、本人うとうとし始めちゃいましたよ…」


 肩をすくめてるのが、エランド。エシューの副長で、魔導師なんだ。双子で、姉ちゃんが隣の国にいるんだって。

 エランドも、エシューが大好きなんだ。あんまりしゃべらないやつって、好かれるんだな。



「一度状況を整理する必要がありますね。先ずは目を覚ましていただかねば」


 で、あのテーブルは、副長でもなんでもないけど、欠かせない仲間。えらいやつらといつも一緒にいるんだ。


 難しい顔してんのが、ルベル。隣の国から来てる剣士で、なんだかんだで一緒にいてくれるんだ。キャクショー客将…とか言うんだって。

 そういや、俺もなんだかんだだからキャクショーだぞ、きっと!


「そうは言ってもあの調子じゃあ…起こしたら起こしたで怖いしなぁー…」


 その向かいに座ってるのが、ディジオ。アレートとおんなじトーゾク盗賊で、壁をすり抜けたりできる体質なんだぞ!

 …ずっと思ってて、今また考えてみたけど、やっぱりあいつ変だな!


「当人がいびきとは…これでは埒が明かんな」


 わ!そっくりだなルフェッド!ほら見て、クーゼルクの弟なんだけど、眉間のシワまでおんなじだ!槍とセーレー精霊魔法が使えるぞ!

 で、あんまりしゃべんないところまでクーゼルクと一緒なんだ!おかしな兄弟だな!


「このまま寝かせてあげたらいかがです?ほら、あんなに幸せそうな顔してますし」


 あの端っこでニコニコしてるのが、マリー。シンセー神聖魔法が使える戦士で、エシューの奥さんなんだ。俺にもいつも、ほんとに優しいぞ。

 …でもな、俺知ってるぞ。ああいう人は怒るとおっかないんだ、すごく。



 俺が名前覚えてんのは、これで全員。他にもいっぱいいるけど、皆いいやつばっかりだから、いっぱい一緒に飯食ったり、酒飲んだりして、仲良くなってやってくれよな!

 ……え?これか?おっきいだろ!へへ…これアヴォルノの手袋なんだ。「今日寒いな」って言ったら貸してくれたんだ。

 もちろん、すぐ逃げたぞ。頬ずりされたら痛いからな!



【完】

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る