183.挑戦者
ひとつ、重要なことがある。
彼女は逃げ出した。疎外感に耐えられず、逃亡した。居づらくなって、学校と関わらない道へと進んだ。
《スカイハイ》にのめり込み、レトロゲームの攻略に心血を注ぐようになった。
「面接はここで終わりなのだが、首藤くんにひとつ聞いてもいいだろうか?」
「恥はもう十二分にかいたのじゃ……もう何でも好きに聞くのじゃ……」
「首藤くんはなぜ自分でRTAをやろうと思ったのだね?」
では、彼女は外界を閉ざしてゲームに逃避するだけの少女だったのか。
「首藤くんの説明を聞く限り、世界一への挑戦は決して楽なものではない。挑戦する姿に感動したというのならば、その挑戦する誰かを応援するだけでよかったのではないかね?」
「なんじゃ、そんなことか。答えは決まっておろう」
答えは否。
「――『ワシ』が爪痕を残したいのじゃ。『誰か』なんぞにこの栄誉をくれてはやれんよ」
首藤陽姫は逃亡した先での挑戦者であった。
逃亡した先での、真なる挑戦者であったのだ。
◇◆◇
「がお――――――――――――――――――――――――――――――――――――」
上位チャット:いつもより長い
上位チャット:これが有名なエルフの遠吠えです
上位チャット:新たな伝承を作らんでもろて
「驚かないな」
六回目の探索フェーズを、エルフは投票前に入れ替わったスタッフのアバターで開始していた。
上位チャット:いや、びっくりしたはしたけど
上位チャット:試合が続いているから、消去法でスタッフだなって
上位チャット:ゲームの質問と回答してた幼女と逆神様は抜けるし、その間に炎太郎は変な動きしてなかったし
上位チャット:エルフさんの入れ替わりにあえて協力するのは、狂人のスタッフしかいない
上位チャット:でも、女性陣しか真似られないんじゃなかったの?
「頑張って言ったぞ?」
上位チャット:開始前の意気込み?
上位チャット:違いそう
上位チャット:スタッフの声真似した時に「頑張ればスタッフは覚えられるかも」って言ってたよ
上位チャット:なるほど、頑張ったのか
上位チャット:頑張ったのね
上位チャット:頑張り屋
上位チャット:えらい
上位チャット:花丸あげちゃう
上位チャット:お前ら、それでいいのかw
「ん」
上位チャット:褒められてちょっとお耳が立つエルフ
上位チャット:いいぞ……もっとだ、もっとお耳しろ……!
上位チャット:お耳民がw
上位チャット:褒めて伸ばす教育
上位チャット:耳を?
上位チャット:違う
上位チャット:それはそうと、勝ち切れませんでしたね
上位チャット:バレちゃったもんなぁ
「そうだな。回答を間違えばそこで終わりだったのに、ヨーキは
上位チャット:なんだか嬉しそう
上位チャット:ご満悦エルフ
上位チャット:人狼で正体を看破されたのに決着しないのも大概珍しいんだけどな
「お、炎太郎」
「げえっ、エルフさんっ!?」
「がおー」
「ちょ、待っ――」
上位チャット:あ
上位チャット:あ
上位チャット:あ
上位チャット:死んだwww
上位チャット:ばったり出会って二秒で昇天
上位チャット:兄貴が凄く雑に殺されて笑った
上位チャット:さすがです、兄貴!
上位チャット:ここぞという場面での活躍! これぞ兄貴!
上位チャット:炎民は炎太郎をリアクション芸人か何かと思ってる?
上位チャット:草
「幸運」
上位チャット:仕組んでたわけでもないのか
上位チャット:だが、待ってほしい。エルフさんが幸運だったのではなく兄貴が持っていただけではないだろうか?
上位チャット:ちょっと頷けそうな提言をするのやめてもろて
上位チャット:幸運ってことは、エルフさんは炎太郎を狙ってたの?
「おう」
上位チャット:あ、そうなんだ
上位チャット:その心は?
「――ヨーキと勝負するって約束したからな。俺はここで受けて立つ」
逃亡した先で世界一をもぎ取った少女は、再び困難へと挑戦する。
◇◆◇
「お」
炎太郎の死体を確認していたエルフの手が止まった。
上位チャット:うわ
上位チャット:ここでこれか
上位チャット:本当に持ってるなぁ……
「お前らに聞きたい」
上位チャット:なになに?
上位チャット:なんでも答えるよ
上位チャット:スリーサイズは上から一二〇・一二〇・一二〇だよ
上位チャット:ドラム缶かな?
「ゲームの攻略法、教えてくれ」
上位チャット:え?
【エルフさん視聴者視点】
人狼、エルフ(リク)→死亡
キリシたん →死亡
占、炎太郎 →◯ミソラ、死亡
ミソラ
狂人、リク →◯ミソラ
人狼、キョーカ →死亡
霊、社長 →●キョーカ、死亡
幼女
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