178.粘るエルフさん

「ふむ。大名おおなキリシ、エルフさん、両名とも確かに近かった」

「エルフ、行くわよ」

「おう」


 三度目の探索フェーズ。俺は迎えに来たエルフに自信ニキとキリシたんと共に探索を開始した。


上位チャット:うーわ、合流まで一分も経ってない

上位チャット:マジで開始地点近所なんだな

上位チャット:これじゃ、自由行動できそうにないぞ

上位チャット:だが、うまく目を掻い潜れば

上位チャット:持ち込んだトランプができる!

上位チャット:修学旅行かな?


「では、大名おおなキリシは前方の部屋に」

「わかったわ」

「エルフさんは後方の部屋に」

「ん」

「私は二人の間の部屋に入る。二分後にまた会おう」


 エルフに自信ニキの合図で、俺たち三人は隣接した三つの部屋を探索し始めた。


上位チャット:エルフに自信ニキが決めた探索ルールはうまいな

上位チャット:同じ部屋に入らず、同時に探索して、同時に引き上げる

上位チャット:「近付きすぎずに相互監視しながら探索する」を具体的な言葉に直してるわ

上位チャット:隙が全然ない

上位チャット:まずいな。本当にエルフさん何もできないぞ……

上位チャット:くっ! 気付かれないよう抜け出して、四人グループ側ではぐれてる村人陣営を殺して、戻ってくるだけでいいのに!

上位チャット:無理ゲーでは?

上位チャット:エルフさん、これ大丈夫なの?


「問題ない」


上位チャット:とてもそうは見えないんですが

上位チャット:実は抜け出す手段を思いついてるとか?

上位チャット:おお、それなら!


「抜け出せないぞ。エルフに自信ニキの警戒心は強い。今も抜け出せないよう気を張ってる」


上位チャット:ダメじゃん

上位チャット:【悲報】エルフ捕獲【高値で売れる】

上位チャット:売るな


「でも――そこが隙になる」


上位チャット:社長の警戒心が利用できるって言ってたやつ?

上位チャット:ちっとも隙になってるように感じないけど

上位チャット:エルフさん、ヒントくださーい


「警戒心が強まれば強まるほど、エルフに自信ニキは自分がやった攻略法に意識が向かなくなる」


上位チャット:エルフに自信ニキがやった攻略法……?

上位チャット:何やったっけ?

上位チャット:練習試合でエルフさんを騙したことかな?

上位チャット:人狼の攻撃は段差があったら避けられるって嘘

上位チャット:ああ、あったあった

上位チャット:あれは本気で騙されたわ

上位チャット:ありそうな仕様だった

上位チャット:ゲーム内説明書見れば確認できるけど、普通しないもんね

上位チャット:とにかくそれが必要と

上位チャット:それで、エルフさんはどうやって警戒心を強めるの?


「粘る」


上位チャット:粘る?

上位チャット:粘る?

上位チャット:粘る時

上位チャット:粘れば

上位チャット:粘る

上位チャット:粘るがゲシュタルト崩壊してきた

上位チャット:時間を稼ぐってことかな?

上位チャット:繰り返し脱出しようとするってことかも


「二分経過した。両名とも引き上げたまえ、次の部屋に向かおう」

「あと五分だけ」

「いや、長いわよ!」


上位チャット:粘り方よ

上位チャット:寝不足かな?

上位チャット:トランプが盛り上がりすぎて

上位チャット:修学旅行だった


 俺は十秒ほど待って部屋を出る。表では、すでにエルフに自信ニキとキリシたんが待っていた。


「よろしい。このまま隊列を乱さず次の部屋まで前進するように」

「わかったわ」

「ん」


上位チャット:なんか、体育祭の行進を思い出した

上位チャット:規律正しく歩くという意味では同じだから

上位チャット:ううむ……ここで粘ることなんてできそうにないが……


「任せろ」


上位チャット:お

上位チャット:エルフさんに名案が?


「ちょうちょ」

「エルフさん、待ちたまえ。このゲームにちょうちょはいない」

「トイレ」

「エルフさん、待ちたまえ。このゲームでトイレは必要ない」


上位チャット:エルフさんw

上位チャット:確かに粘ってるけどw


「この調子で粘るぞ」


上位チャット:本当にいいのかそれで


        ◇◆◇


「ワシら四人グループでは動きはなかったのじゃ」

「三人グループでも目立った動きはなかった。……エルフさんが少々気になりはしたが」


上位チャット:少々で済むのかw

上位チャット:めちゃめちゃ怪しかったんですが


「よって、今回も投票は棄権するよう全員に求める」


 結局、全員が無効票を投じたのだった。


【エルフさん視聴者視点】

人狼、エルフ

キリシたん

占、炎太郎   →◯ミソラ

ミソラ

狂人、リク   →◯ミソラ

人狼、キョーカ →死亡

霊、社長    →●キョーカ

幼女

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る