134.エルフさん、えいってする

「ワシが走るのはステージスキップあり全城RTAじゃ。エニィパーセントではないのじゃ」

「エニィパーセント?」

「平たくいえば、『エンディング条件を満たせば達成率を問わない』条件じゃな。《スカイハイ》は制限なしじゃと、最速タイムは二分を切っておる」


上位チャット:二分!?

上位チャット:どうやんの、それ?

上位チャット:任意コード実行からのエンディング呼び出しという方法になります


「任意コード実行って何?」

「プレイヤーが選んだプログラム上の命令をゲームに行わせることじゃな。ここでは『エンディングの開始』を実行させることを指すのじゃ」


上位チャット:そんなことできるの?

上位チャット:普通はできないけど、スイッチバグで作ったバグブロックを所定の座標に配置すると可能になる

上位チャット:バグブロックの座標が実行するコードの番号に対応する……でござるよね?


「合っておる。細かい理屈はワシも知らんがの」

「じゃあ、スイッチバグとやらは使わないのか?」

「……使うのじゃ」


上位チャット:なんで、そんな顔に?

上位チャット:渡辺家民?

上位チャット:あー、その、任意コード以外の目的でスイッチバグを使うステージがあるんだけど、幼女はそこ苦手なの


「別に苦手じゃないのじゃ」


上位チャット:不機嫌になる幼女可愛い

上位チャット:幼女は癒し

上位チャット:穢れなき幼女の膨らんだほっぺたは万病に効く

上位チャット:でも、二十歳過ぎ

上位チャット:ぐっ……がぁあっ……!

上位チャット:軽々しく事実を突きつけてはいけない


「ええい、エルフだけじゃなくてお主らもやかましいわ! 細かいことはゲームをしながら解説するからゲーム開始じゃ!」

「行くぞー」


上位チャット:ドンドンパフパフ

上位チャット:行ってみよー


「まずは多用する動きの解説からじゃな。この先、よう見とるんじゃぞ」

「ん」

「ほっ!」


 開始早々、浮かんでいる三つのブロックめがけて酒飲み幼女はジャンプをして――


「外した」


上位チャット:また外した

上位チャット:全部外した


「ふっふっふ、これで成功なんじゃよ。エルフよ、どういうことかわかるかの?」

「酒飲み幼女は強がり?」

「違う」

「意地っ張り?」

「違ぁう! そういうことじゃないのじゃ!」

「逃げちゃいけないぞ?」

「なんで、ワシが聞き分けない子になっとるんじゃ!?」


上位チャット:草

上位チャット:幼女をさとすエルフさん

上位チャット:これはバグってますねー


「よいか? ブロックに当たる瞬間をよく見ておくのじゃ?」

「右下角に当たるとキャラクターが前に押し出されるところをか?」

「見えとるんかぁい!」


上位チャット:叫びつつもちゃんと決めてるあたりは流石の幼女

上位チャット:これ、どのくらい速くなるの?

上位チャット:約〇.〇一六秒

上位チャット:誤差では?

上位チャット:失敗してもタイムロスがない技だから、挑戦するだけお得なのだ


「本当にわずかな差じゃからやらない走者もおるのう」

「そうなのか?」

「こういう繰り返しプレイしてると、結構、目に来るんじゃよ」

「ふむ」


上位チャット:眼精疲労がつらい幼女

上位チャット:ぐがぁっ……ぐぁあああ……っ!

上位チャット:そろそろ事実を受け止めて

上位チャット:キリシたんは中の人なんていないって立場なのにな

上位チャット:2.5D内でもそろってないよね


「その辺はスタンスの違いじゃな。ワシはそこまで気張りたくないのじゃ」

「酒飲み幼女」

「ん? なんじゃ、エルフ?」

「目が疲れるのか?」

「そうじゃな。今日はまだ走れるがの」

「うまくいったら、後で牛丼おごってくれ」

「うん?」

「えい」


上位チャット:ん?

上位チャット:なんかした?

上位チャット:エルフさんが酒飲み幼女の頭に手を乗せて、「えい」って言った

上位チャット:???


「どうだ?」

「……待て、待て待て」


上位チャット:幼女?

上位チャット:どうしたの?


「……目の疲れが、きれいに、なくなった、んじゃが」

「そうか」


上位チャット:え

上位チャット:は

上位チャット:は?

上位チャット:え?

上位チャット:ちょ

上位チャット:うそ

上位チャット:まててて

上位チャット:待って

上位チャット:まさか、これは

上位チャット:気功だーーーーーーーーーー

上位チャット:ちょっと納得できそうなこと言うのやめてもろて

上位チャット:草


「どういうことじゃ、これぇ!?」

「次のステージ始まるぞ」

「う、あ……渡辺家の者ども! ちゃんとエルフから聞き出すんじゃぞ!」


上位チャット:とりあえず、ダメ元で聞いてみよう

上位チャット:エルフさん、何したの?


「えいってした」


上位チャット:魔法?


「えいってしただけ」


上位チャット:ダメだ、わからん!

上位チャット:エルフに自信ニキを呼べ!

上位チャット:いないんだよ!

上位チャット:コルマックのサガにおいて、エルフに雄牛の血肉を捧げ、ごちそうを振る舞うことが傷を癒やす最善の方法であると語るシーンが存在する。

上位チャット:エルフに自信ニキ!

上位チャット:仕事しろ!

上位チャット:いたらいたでw


「へー」


上位チャット:相変わらず反応が他人事なエルフさんであった

上位チャット:ていうか、捧げる牛とごちそうは牛丼でいいのか?

上位チャット:しかも、後払い

上位チャット:きっとスタンスの違い

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る