130.目隠しプレイ

「目隠しプレイってどうやるんだ?」


上位チャット:すみません、えっちな意味ですか? えっちな意味ですね?

上位チャット:俺も知りたいです!

上位チャット:エルフさんと目隠しプレイしたいです!

上位チャット:では、まず、手錠を用意します

上位チャット:緊縛まで!?

上位チャット:ガタッ!

上位チャット:そして、お前らの手に掛けます

上位チャット:やべ、逮捕だった

上位チャット:お許しくだせえ


「なんというか、自由なチャットしとるのう」

「楽しそうだろ」

「いや、そこで胸張る意味はわからんのじゃが」


上位チャット:俺らが楽しそうだとエルフさんも楽しい

上位チャット:エルフさんが楽しそうだと俺らも楽しい

上位チャット:これはいい無限ループ

上位チャット:循環型社会ってやつだな!

上位チャット:ちょっと違う

上位チャット:真面目な話、どうやってやるの?


「ふむ。エルフの住民も興味があるのなら、一丁解説しながら披露ひろうしようかの」


 そう言うと、酒飲み幼女はアイマスクを着けてコントローラーを握った。


上位チャット:エルフさんw

上位チャット:アイマスクの前で手をひらひらさせるの草


「本当に見えてないんだな」

「ズルはしとらんぞ」


上位チャット:髪の毛ブラインドし始めたw

上位チャット:手品に対抗して、念入りに念入りにカードシャッフルする人を思い出す

上位チャット:その手段が手品より手品なんだよなぁ

上位チャット:絵面が凄いんで、そろそろ信じてあげてください


「ん」

「目隠し縛りの基本は無数のセットアップにあるのじゃ」


 酒飲み幼女がステージを選ぶ。軽快な音楽が始まるのと同時にキャラクターが右に走り出した。

 そのまま三体の浮いている敵が上下する穴まで全力疾走を続け――


「ここじゃ」

「おー」


 飛び跳ねたキャラクターは敵の隙間を縫うように穴を越えた。


上位チャット:危ない

上位チャット:今スカイの頭かすったよね?


「危険そうに見えて、これは安全なのじゃ」

「そうなのか?」

「敵の初期位置とその動きは固定じゃからな。最大ジャンプも軌道は同じ。あとは流れているBGMでタイミングを合わせて踏み切るだけじゃ。一〇〇回やっても失敗せんぞ」


上位チャット:はー、それでうまくいくのか

上位チャット:ルート探しを見てた渡辺家民だけど、ステージ開始直後の罠は本当にどのステージも回避率高いよ

上位チャット:渡辺家?

上位チャット:なんか知らないけど、酒飲み幼女の視聴者はそう呼ばれてる


渡辺綱わたなべのつなだろ」

「お、チャットかの? ようわかるのう」


上位チャット:渡辺綱わたなべのつな

上位チャット:誰それ?

上位チャット:教えてエルフさん!


酒呑童子しゅてんどうじという鬼を倒した平安時代の武将だぞ」

「ワシはその酒呑童子しゅてんどうじの末裔、酒呑幼子しゅてんようじじゃからな。ならば、ワシを監視する視聴者は渡辺綱わたなべのつなの末裔じゃろう」


上位チャット:へー

上位チャット:酒飲み幼女だから酒呑幼子しゅてんようじだと思ってた

上位チャット:順番が逆!

上位チャット:生えてる角もたまには見てあげてください


「お」

「壁にぶつかった音を確認したら、壁から飛び出す敵の周期を待つのじゃ。隣接しておれば、引っ込んだ敵はもう出て来ん」


 敵が壁に引っ込んで、さらに二秒ほど経ってから酒飲み幼女は壁を乗り越える。

 乗り越えた壁から降りると、再度その壁に張り付いてから前に走り出す。


「今の動きは何?」

「セットアップじゃよ。次の連続トラップを抜ける際に同じ速度まで加速しているよう、走り出しの地点を統一しとる」


上位チャット:目隠し縛りってクリアできるものなのか

上位チャット:ただのネタかと思いきや

上位チャット:実は酒飲み幼女に限らず、そこそこやってる人がいるメジャーな縛りです

上位チャット:はえー、世の中頭おかしいな


「ここでジェットを得て、残りは空の旅じゃ」


 ステージの中ほどで酒飲み幼女が新しいアイテムを装備すると、空には妨害らしい妨害もなくあっさりとクリアしてしまった。


上位チャット:鮮やか

上位チャット:お見事

上位チャット:で、こういう解説プレイを見ると……


「覚えた」


上位チャット:ほら来た!

上位チャット:知ってた


「そうかそうか。では、ワシは収録を続けるからまたなのじゃ。さよならじゃ」

「やらせて」

「嫌じゃあ! ワシがルート開拓するのに何時間掛けたと思っとるんじゃ! 絶対、ワンプレイでクリアする気じゃろ!」

「コントローラーどこだ?」

「アイマスク取らんか!」


上位チャット:エルフさんw

上位チャット:チャット以上に自由なエルフさんであった

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る