125.人避けの抜け穴
「で、詳しい話は社長がしてくれるのか?」
「いや、もうじき担当者が来る」
と、ちょうどこのタイミングで応接室のドアがノックされた。
「社長、お客様をご案内しました」
「ありがとう、瀬貝くん」
「お邪魔しまーす」
瀬貝と呼ばれたスーツの女性がもうひとり女性を伴って入室する。
上位チャット:秘書さん来た!
上位チャット:ピチッとしたスーツの美人っていいよね……
上位チャット:めちゃいい……
上位チャット:すみません、三角メガネ掛けて語尾にザマスを付けてくださいお願いしますこいつらが何でもしますから!
上位チャット:証拠にこいつを火あぶりにしてみせます!
上位チャット:グエー
上位チャット:悪は滅びた
「どうも、配信者さん。《鉄製ダンボール》の加賀原美姫子です。本日はよろしくお願いします」
「ん。よろしく」
二十代前半だろうか、着慣れた感じのないジャケットを羽織った女性はニコニコと人当たりの良さそうな笑顔を浮かべて、俺と握手をした。
上位チャット:鉄製ダンボール?
上位チャット:社名か?
上位チャット:同人サークルっぽい名前だけど
上位チャット:俺は知ってるよ。ボードゲーム作ってるところだ
「おぉ、本当にリアルタイムで配信してるんですね」
「配信していいんだよな?」
「二言はないです。いぇーい」
上位チャット:ピースするの草
上位チャット:テレビカメラを前にした一般人かな?
「一般人ですよ。何万人も視聴してる配信があるなんて、今まで知らなかったくらいですもん」
上位チャット:マジか
上位チャット:それでよくエルフさんに案件申し込もうと思ったな
「あー、自分は配信者さんのこと全然知らないです」
「そうなのか?」
「上司に指示されましてー。『加賀原、エルフさんの配信見たことあるか? ない? よし、お前が交渉担当だ』って。意味わかんないですよねー。あはは」
上位チャット:なにそれ
上位チャット:どういうこと?
上位チャット:エルフに自信ニキ社長?
「以前、菌輪の中でならばエルフを発見できることを語ったが、伝承におけるエルフは見つけにくい存在として描かれている。イングランドのピクシー等と混同が進んだ結果と思われるが、これは、エルフには意図して発見しようとする者を制限する力があるともいえるのではないだろうか」
上位チャット:つまり、エルフさんを知ってる人がコンタクトを取ろうとすると失敗する?
上位チャット:そんなことってある?
上位チャット:でも、エルフ獲得競争が加熱してるのに、これが初コンタクトだし
上位チャット:偶然では?
上位チャット:それよりも、社長が本当にエルフに自信ニキしてることに驚きを隠せない
上位チャット:草
「これか。残しとこう」
上位チャット:エルフさん?
上位チャット:残 し と こ う
上位チャット:かつて、こんな雑に扱われる魔法があっただろうか
「飛ばないから魔法じゃないぞ」
上位チャット:飛び道具以外魔法と認めないエルフ
上位チャット:~ここまでに確認されたエルフ魔法~
上位チャット:1.踊らせる
上位チャット:2.失明させる
上位チャット:3.人避け
上位チャット:失明は確認されてないです
「はー……」
「どうした?」
「あー、いえ、思ってたより配信者さんが本格的にエルフの役作りしてるんだなぁって。……あれ? これ、問題発言ですか?」
「大丈夫だぞ」
上位チャット:エルフさんはエルフする気がないからセーフ
上位チャット:日本人が『エルフ』と聞いて思い浮かべるエルフ像ではないよね
上位チャット:肉食うし
上位チャット:おっぱいおっきいし
上位チャット:髪動くし
「髪?」
「動く」
「わっ!? え、これ、どうやってんですか!? 凄い凄い凄い!」
「ウケた」
上位チャット:エルフさんが楽しそうで何よりです
上位チャット:※ヒーローショーではこれでバトルしてました
上位チャット:手品と思いきや実用品という
上位チャット:多分、正しい用途ではない
上位チャット:あと、耳も凄く動くんですよ! ぜひ見せてもらうべきですよ!
「動くんですか?」
「おう」
「あっあっあっ、凄い凄い! 飛べそう飛べそう!」
「むふー」
上位チャット:お耳パタパタ警察だ! ゲストを扇動してお耳パタパタの乱用を目論んだ罪で逮捕する!
上位チャット:すみません、もっとお耳パタパタ見たかったんです許してくださいお願いしますこいつらが何でもしますから!
上位チャット:その証拠にこいつを丸焼きにしてみせます!
上位チャット:グエー
上位チャット:また滅びた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます