111.海賊襲来

「よし」

「わたしたちにはよかったけど……」

「エルフが言うと違和感あるわね」


上位チャット:生き残りバトル決定、おめでとう?

上位チャット:キョーカちゃん・キリシたん「エルフが不利な戦場がいい」←わかる

上位チャット:エルフさん「エルフが不利な戦場がいい」←わかる

上位チャット:わかるのかよw

上位チャット:エルフさんだしなぁ


「船」

「うっ……ここなんだ」

「しかたないわね。あたしは切り替えていくわ」


 立派な帆を張る大きな大きな船。その甲板に、俺たち二〇人は出現した。


上位チャット:お船に目を丸くするエルフさんと露骨に嫌そうにするキョーカちゃん&キリシたん

上位チャット:いやー、実際のところ、思惑からすると大外れだし

上位チャット:そんなやりにくいステージなのか……

上位チャット:それにしても、この巨大さで帆船というのが時代を感じる

上位チャット:モチーフは船旅じゃないかと言われてる

上位チャット:なら、最初のステージは港か

上位チャット:たくさん荷物を積み込んで、うきうき出港して、


「鉄球が降ってる」


上位チャット:海賊に襲われた、と

上位チャット:それな


 いかにもな黒いドクロマークの旗を掲げた四隻の船が俺たちの乗る船を取り囲み、開始前から砲撃を繰り返していた。


「お、始まった」


上位チャット:うひー、あっちこっちに降ってるじゃん

上位チャット:逃げろ逃げろ

上位チャット:ははは! 逃げろ! 逃げまどえ!

上位チャット:あ、エルフさんに近付いてたやつが砲撃で吹っ飛ばされた

上位チャット:これ、エルフさんをどうこうする以前に、逃げるだけで手一杯では?


「タルがあれば、いける」


上位チャット:また海を越えること考えてますよ

上位チャット:これは悪いエルフ

上位チャット:トイレに紙を補充し忘れるくらいの悪さ

上位チャット:このステージ、タルないんですよ

上位チャット:エルフさん! 注意して!


「む?」


 砲撃をしていなかった一隻の海賊船が船首をこちらに向けると、そのまま速度を上げて――


上位チャット:掴まって!

上位チャット:どーん!


「おー」


 衝角突撃だ。

 水面下で海賊船に激しくぶつかられて、船が大きくかしぐ。

 一〇度や二〇度なんて生易しい角度ではない。甲板すべてが六〇度を超える急斜面となり、事前に掴まれなかった者はそのまま滑り落ちていった。


上位チャット:あーれー(コロコロコロコロ)

上位チャット:どぼーん

上位チャット:エルフさんは間に合ったか

上位チャット:キョーカちゃんも残ってるよ

上位チャット:キリシたんも無事だと船乗りは報告します

上位チャット:船乗りなら、報告してないで海賊を倒すんだ!

上位チャット:乗ってない船なので無理だと報告します


「砲撃」


 船が水平を取り戻すと、すぐまた砲撃が始まる。


上位チャット:お助けぇ!

上位チャット:逃げろ逃げろ

上位チャット:ははは! 逃げろ! 逃げるがいい!


「衝角」


 突撃の雰囲気を感じると、皆一斉に掴まれるものがある場所へと走り回る。

 残っていたスペースに滑り込んで、何とか衝撃の前に掴まれたプレイヤーが俺の目に映った。

 一方で、掴まるスペースが目の前で埋まったプレイヤーは慌てて他の場所を探しに向かうも間に合わず、あえなく船外へ落ちていった。


上位チャット:忙しいな、これ!

上位チャット:うかうかしてるとすぐ落ちる、難ステージです

上位チャット:判断力が問われるゲームだからね

上位チャット:エルフさんは初めてなのに、簡単に適応したね


「イス取りゲームは得意だぞ」


上位チャット:イス取りゲーム

上位チャット:あー

上位チャット:何かに似てると思ったら

上位チャット:やってることは同じか

上位チャット:ということは……もしかして、席も減る?

上位チャット:ピンポーン!


「お」


 船が水平を取り戻すと、あちこちの手すりや柱が折れたり曲がったりした。

 なるほど、これで席を減らしたというわけか。


上位チャット:間隔短くなるから急いで

上位チャット:船首側にまだ空きがあるよ!


「む」

「あ、お兄ちゃん」


上位チャット:鉢合はちあわせた

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