109.ある意味おいしい

「ミザレーレのモーツァルトって実例があるぞ」


上位チャット:ミザレーレ?

上位チャット:あーうん、知ってる知ってる、おいしいよねあれ

上位チャット:絶対知らないやつだ!

上位チャット:エルフさん、それって何なの?


「九声からなる二重合唱のだいたい十三分間の曲だな。システィーナ礼拝堂で年に三度だけ歌われる門外不出の曲で、これを一七七〇年四月十一日に当時一四才のモーツァルトが一度聴いただけでほぼ完璧に書き起こしたらしい」


上位チャット:二重合唱で十三分ってえらい量になりそう

上位チャット:はえー、よく知ってるね

上位チャット:えっへん

上位チャット:お前は違うw


「六十年後にメンデルスゾーンも同じことをやったそうだ」


上位チャット:人外じみてるけど、再現性あるのか……

上位チャット:どっちも歴史に名を残す巨匠だが

上位チャット:で、これは何の話?


「耳コピ上手な人の話」


上位チャット:耳コピ上手てw

上位チャット:その通りだけど凄い安っぽくなったw

上位チャット:キョーカちゃんが聞き分けた話か

上位チャット:ああ、不可能じゃないって実例なわけね

上位チャット:なぜ、歴史に名を残す巨匠でようやくできた超難易度曲を例にしたw

上位チャット:で、そのキョーカちゃんがたった今勝ち残ったわけですが


「勝ったぁー!」

「くっ……! やるわね、セイレーン!」

「はいっ! ありがとうございます、キリシたんさん!」

「ふん! 次は負けないわよ! 見てらっしゃい!」


 俺が抜けた直後の三試合目は、ひとつの大きなタル風船を相手のゴールに叩き込む回数を競う、サッカー風のゲームだった。

 五人チームでの対抗戦となったこの試合は、要所をキョーカチームが締める展開となった。


上位チャット:キョーカちゃんチームは何度もロングパスが通ったし、ゴール前の競り合いにも強かったよね

上位チャット:三分ごろのやつが一番凄かった

上位チャット:反対に、キリシたんチームはことごとく防がれるし、ゴールポストにも嫌われた印象

上位チャット:運の差かぁ

上位チャット:子羊は残念がります


「運だけじゃないわよ。セイレーンがうまく立ち回ったの」


上位チャット:キリシたん

上位チャット:偶然じゃないの?

上位チャット:何か狙って動いて結果を出したってこと?


「あたしにも方法はわからないけど、セイレーンがいい場面でアシストした回数が多すぎるのよ」


上位チャット:言われてみれば、セイレーンが紛れてたような

上位チャット:確かに、ほとんどキョーカちゃんだった気がする

上位チャット:俺が見た限り、得点に絡んだものに限定すれば全部いたわ

上位チャット:多いな

上位チャット:どうやったの?


「頑張りました!」

「具体的には、どうやったのよ?」

「……頑張りました?」

「なんで、疑問形なのよ!?」


上位チャット:草

上位チャット:フォッフォッフォ、門外不出の技なのじゃろり

上位チャット:ろりは要らない

上位チャット:のじゃにろりは必要だろ!

上位チャット:脳縛りプレイしてるから返してきなさい


「ええっと……こう、味方の音が薄い場所で待って、敵の音が濃い場所を避けたと言いますか……」

「あんたはエルフか!」

「そこまで言いますかっ!?」


上位チャット:大草原

上位チャット:感覚任せw

上位チャット:そして、エルフさんはそれ以上にやばいという共通認識w


「なにゆえ」


上位チャット:自明

上位チャット:疑問を挟む余地はないです

上位チャット:「なにゆえ」じゃないんだよなぁ


「なにゆえ」


上位チャット:この問答、前にもしましたねw

上位チャット:逆神様はどうなりましたか?

上位チャット:あーうん、知ってる知ってる、おいしいよねあれ

上位チャット:絶対知らないやつだ!

上位チャット:結果はある意味おいしかったけどさw

上位チャット:今回も数十人ぽろぽろ落としたしたでしょ!


「さて、ゲームはセイレーンが優勝したみたいだし……そろそろ行くわよ!」

「おう!」

「行きましょう! 最後の第四回戦!」


上位チャット:うぉおおおお!

上位チャット:おぉおおおお!

上位チャット:エルフさん! エルフさん!

上位チャット:キリシたん! キリシたん!

上位チャット:セイレーン! セイレーン!

上位チャット:エルフさん! エルフさん!

上位チャット:キリシたん! キリシたん!

上位チャット:セイレーン! セイレーン!

上位チャット:キョーカちゃんがキリシたんに人見知りしなくなったのこっそり嬉しい

上位チャット:あーうん、知ってる知ってる、わかるわかる、同意同意、大好き

上位チャット:おいしいって言え!

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