106.出るエルフは打たれる

「凄い負けた」


上位チャット:凄いw

上位チャット:袋叩きだったなぁ

上位チャット:全員の心がひとつになってた


「なにゆえ」


上位チャット:やりすぎたからです

上位チャット:初戦で二〇人以上薙ぎ払ったからです

上位チャット:ポロポロ落としたでしょ

上位チャット:子供かな?


「嫌われた?」


上位チャット:言い方よ

上位チャット:お耳垂れるの好き好き

上位チャット:お耳警察だ! 神妙に抵抗しろ!

上位チャット:ひいぃ~許してくださぁい(ジャイアントスイングしながら空を飛ぶ)

上位チャット:草

上位チャット:まあ、ヘイトを高めたのもあるけど、それ以上にエルフさんが疑似ランカーと化してたから

上位チャット:強プレイヤーは早めに潰すという原則に皆が従った結果だね


「エルフが頭の上を走るだけならそこまで脅威に思わないけど、後ろからやってきて数十人落としてのけたならそれは脅威に思うわよ」

「キリシたん」

「覚えておきなさい。多人数でひとりの勝者を決めるゲームでは、時に目立たないことも重要なの」


上位チャット:経営シミュでもカーレースでも、先頭は集中砲火を浴びる

上位チャット:出る杭は叩かれる

上位チャット:だから、勝ちの目を確保しつつ、抜け出すタイミングをうかがわないといけない


「複雑」


上位チャット:エルフさん、こういうところゲーム初心者っぽさあるよね

上位チャット:そうか、エルフさんのゲーム思考はまだ単純なのか

上位チャット:コンピュータに滅法めっぽう強いけど人間には弱いエルフ

上位チャット:普通、逆では?(ファンタジー脳)

上位チャット:それな

上位チャット:で、それをいうキリシたんがギリギリで勝ち進んだってことは……

上位チャット:子羊は期待してもいいですか?


「期待しなさい。隙を突いて、一瞬であたしが圧勝することを!」


上位チャット:うぉおおお! 勝利宣言!

上位チャット:キリシたん! キリシたん!

上位チャット:キリシたん! キリシたん!

上位チャット:うーむ、早くから大盛り上がりだな

上位チャット:キョーカちゃんも、また決勝に残ってるんだけど

上位チャット:船乗りたちに何か一言ください


「人とのやり取りって難しいです……」


上位チャット:コミュ障っぽいこと言ってるぞ、このV

上位チャット:(一年以上配信してたのに機械音声疑惑があった)V

上位チャット:エルフさんも大概だけど、キョーカちゃんも異色だよなぁ


「キョーカ」

「お兄ちゃん?」

「人をかぼちゃと思えばいいぞ」

「別に緊張してるわけじゃないから!」


上位チャット:エルフさんw

上位チャット:ゲーム初心者だからじゃなくて、エルフさんだからよく理解できてなかった説、急浮上

上位チャット:自信ありげにお耳立てるの好き好き

上位チャット:お耳警察だ! おとなしく騒げ!

上位チャット:ょゅぅゃゎーーーーーー(ゲーミングしながら隅っこで高速匍匐前進する)

上位チャット:草

上位チャット:お前ら、決勝始まるぞw

上位チャット:どっちもがんばれー


        ◇◆◇


「台所」


上位チャット:ですね

上位チャット:料理の締めは洗い物ですから


 二人の決勝戦の舞台となったのは、巨大な台所。

 レースの序盤はキョーカと他プレイヤーが争う展開となった。


「ううぅ……」


上位チャット:キョーカちゃん、後ろを気にし過ぎでは?

上位チャット:んー、やりにくそうですね

上位チャット:決勝でも後方に控えるキリシたんは不気味


「ここよっ!」

「嘘っ!?」


上位チャット:そこ、止まらずに行けるの!?

上位チャット:妨害を……しようがない

上位チャット:このエリア抜けないと皿が邪魔で無理だ


 流れが変わったのは、キャラクターの五倍近くある皿が次々に積み重ねられていくエリア。

 復帰位置がやや遠いため慎重になっていたキョーカたちを、キリシたんがごぼう抜きにした。


「このリフトは周期長いから、乗り遅れたら終わるわよ」

「あああああ、待って待ってぇ!」


上位チャット:キリシたん、無事出港

上位チャット:これはどうにもならんわ

上位チャット:本当に一ヵ所だけで勝負決められるのか


「ゴールイン!」


 そして、キリシたんはそのまま一切の妨害を受けることなく逃げ切った。

 圧勝というにふさわしい、大差での勝利だった。


「ふふん! これがあたしの実力よ!」

「お見事」

「ううぅ……予告されていたのに、何もできなかったよう……」


上位チャット:うぉおおお! 勝ったぞぉおおお!

上位チャット:さあ、エルフさんに逆王手だ!

上位チャット:エルフさんが踏み台(物理)にした、人間の力を見せてやろう!

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