生放送！ ＴＳエルフ姫ちゃんねる

１０４．エルフ外交

「同盟結ぼう」

「……お兄ちゃん、どうしてそれが通ると思ったの？」

「む」

上位チャット：エルフさんｗ

上位チャット：盤外戦術には盤外戦術で対抗する賢いエルフ

上位チャット：これは賢い

上位チャット：お前らの知力判定失敗してない？

「キリシたん、同盟結ぼう」

「そういえば、聞こえるんだったわね……。あたしとしたことが迂闊だったわ」

「むむ」

上位チャット：エルフさーんｗ

上位チャット：堂々と二枚舌外交をするクレバーエルフ

上位チャット：これはクレバー

上位チャット：お前らの知力判定ファンブルしてない？

「外交的敗北」

上位チャット：草

上位チャット：勝ち目なかったからｗ

上位チャット：ま、こういうのも多人数プレイならでは

上位チャット：たまに、野良でプラチナタグのランカーが袋叩きにあって沈むことあるよね

上位チャット：そら、露骨に「僕は強いデース」って看板掲げてたらねぇ

上位チャット：それでも結構勝つからランカーは強い

「キョーカ」

「何、お兄ちゃん？」

「タルあげるぞ？」

「条件付けてもダメだよっ！」

上位チャット：粘るエルフ

上位チャット：フン、無駄な交渉だな！

上位チャット：なんだと、貴様！

上位チャット：だって、キョーカちゃんが「欲しい」って言ったら、エルフさんは無条件であげちゃうし

上位チャット：確かに

「もうあげないぞ」

「くれないの？」

「……一回しかあげないぞ」

上位チャット：甘いｗ

上位チャット：ゆるいなぁｗ

「はいはい。エルフもセイレーンも、そういうのはナシよ」

「ダメなのか？」

「勝利は譲ってもらうものじゃなくて、どんな手段を使ってでも奪い取るものなのよ」

上位チャット：ゲーム道を邁進（まいしん）するキリシたん

上位チャット：生き方の違いというか、美学の違いを感じる

上位チャット：こういう不器用な熱さはなんか好き

上位チャット：気付いた君は子羊になろうね

上位チャット：や、やめ、うわぁーーーーーー（チャンネル登録）

上位チャット：子羊判定成功してる

「そうだな。俺も勝ちは譲られるより奪い取りたい」

「あんたならそう言うと思ったわ。さあ、そろそろ二回戦始めましょうか！」

「おう！」

「お、おー！」

上位チャット：どんな手段を使ってでも勝つキリシたんＶＳどんな手段を使ってでも勝つエルフ

上位チャット：一見同じようだけど、エルフさんの手段は何かが違うｗ

上位チャット：エルフさんは斜め上の手段も使うから

上位チャット：それな

「今回も初戦はレースか」

　練習試合、一回戦と続いて、今回も四〇人がスタートラインの前に三列になって並んでいた。

上位チャット：初戦は必ずレースだよ

上位チャット：レースは復活ありだからね

上位チャット：どんなプレイヤーも初戦は最後まで遊べるってのが大事らしい

上位チャット：へー、初心者救済的な意味もあったんだ

上位チャット：始まるぞ始まるぞ

「セイレーン！　行くわよ！」

「あ、はいっ！」

　最初に飛び出したのはキリシたん。続いてキョーカが後を追う。

　運よく最前列を引いた二人は、少々強引に、動くリフトの周期に滑り込んだ。

上位チャット：おお、完全に二人だけ抜け出した

上位チャット：エルフさんたち残り全員がリフト待ちか

上位チャット：キリシたんがうまいのはそこまで意外じゃないけど、キョーカちゃんが付いていけるのは凄く意外

上位チャット：どんく……どんく……鈍臭いイメージだよね

上位チャット：何か言い換えを思いついてあげてｗ

上位チャット：でも、前に飛び出してどうする気だろう？

上位チャット：エルフさん、最後尾にいるけど、わざとなんでしょ？

「人混みは危ない」

　リフト待ちで混雑すると、周囲の誰かのミスに巻き込まれるかもしれない。

　だから、俺は無理せず最後尾からレースを窺うことにしたのだ。

　問題はないだろう。なぜなら、タルがある。

上位チャット：このステージ、タル置き場あるし、どうにでもなるか

上位チャット：タルさえあれば、最後尾でも余裕ね

上位チャット：いつでも逆転できる

「そうね。エルフならそうすると思ったのよ」

　先頭のキリシたんが向かうのはタル置き場。

　タルが必要なギミックはないように見えるのだが――

「セイレーン！　タル全部捨てるわよ！」

「えっ!?　あ、なるほどです！　わかりました！」

上位チャット：その手があったか！

上位チャット：追い抜かれても気にせず、ぽんぽんタル捨ててる！

上位チャット：え、エルフさん、急いでー！　タルなくなっちゃうよー！

「無理」

　俺がたどり着く前に、このステージ唯一のタル置き場から、すべてのタルが谷底へと消えていったのだった。