100.ドッヂタール

「ドッヂタール?」


上位チャット:正式名はドッヂバレルだけどね

上位チャット:タルをぶつけ合うチーム戦

上位チャット:まあ、名前でだいたいわかるやつ


「同じチームだから、わたしが説明するね」

「キョ……セイレーン、頼む」


 準決勝。キョーカとキリシたんを含む俺たち十人が降り立ったのは、天空の競技場だった。


「お兄ちゃん。これは、相手チーム全員を場外に落とすのを目標に自陣コートからタルを投げ合うゲームなの」

「ふむ」

「普通はタルに当たってもそんなに飛ばされないけれど、このゲーム中は凄ーく飛ばされちゃうの」


上位チャット:両手広げてぱたぱたするセイレーン可愛い

上位チャット:度合いは伝わらないけど伝えようとする気持ちは伝わる

上位チャット:ほぼ確実に場外にぶっ飛ばされるわけです


「飛んできたタルを掴むのは?」

「できるよ。でも、《落ちりて》のキャラクターが物を掴めるのは、キャラクター前方の狭い範囲だけ」


上位チャット:具体的にはどの辺までなの?

上位チャット:キャラクターの胴体部分の前方、手が届く範囲まで

上位チャット:狭くない?

上位チャット:実際、ほとんど捕れない

上位チャット:ドッヂタールは後で加わったから、想定して作ってなかったのかもね


「あと、ドッヂボールやドッヂディスクと違って、地面をバウンドしたタルも当たれば飛ばされちゃうからね」

「ん」


上位チャット:お、始まった

上位チャット:地面からタルが生えるのか

上位チャット:タルが場外に出たり時間経過で追加が生えるよ

上位チャット:で、タルを取ったのは


「エルフ! 最初からあたしがタルを持つなんて不運ね!」


上位チャット:キリシたーん!

上位チャット:エルフさん、残念だったな! キリシたんがタルを持ったぞ!

上位チャット:はーっはっは! 我ら子羊の大勝利である!

上位チャット:そうなの?

上位チャット:いや、子羊もキリシたんの『落ちりて』配信は初めてなので知らないです

上位チャット:おいw


「まずはエルフ――じゃなくて、油断してるセイレーンよっ!」

「ええっ!?」


上位チャット:うまい!

上位チャット:切り替えた!


 投じるモーション中、投げ放つ最後の一瞬だけでキョーカを狙ってのけたキリシたん。

 だが、そのタルはキョーカの正面に飛んでいく。


「これなら捕れ――ああーっ!?」


上位チャット:捕り損じた!

上位チャット:セイレーーーーーーーーン!

上位チャット:撃沈ぶくぶく


「ふふふ。セイレーン、捕れそうだって思ったでしょ?」

「はい。……もしかして、わたし誘われましたか?」

「そういうことよ。あれはギリギリ捕れない高さ」

「キリシたんさん、切り替えながらそこまで狙ったんですか……。完敗です」


上位チャット:ターゲット切り替えで、狙いが甘くなって真正面に行ったのかと思いきや

上位チャット:そういう誘いかぁ

上位チャット:なまじ腕に自信があると捕りに行っちゃう

上位チャット:で、そういうことすると……


「覚えた」


 キョーカに当たって転がっていたタルで、俺はキリシたんチームのひとりを吹っ飛ばした。


「はぁああああああああああ!?」


上位チャット:やっぱりw

上位チャット:うわぁ、一発でコピーした……

上位チャット:そら叫ぶわ


「よし、次も当てるぞー」

「なんで、そんな簡単にできるのよっ!?」


上位チャット:それ、皆思うんです

上位チャット:そして、はかなく散るんです


「エルフだから?」

「どうして、疑問形なのよっ!?」


上位チャット:「エルフが凄い」「エルフさんが変」どっちだ!

上位チャット:うーん、半々!

上位チャット:エルフさんは「凄い」じゃなくて「変」なのが草


【あとがき】

100話目なので☆をください。現場からは以上です。

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