95.所有権
「エルフと未プレイの子羊たちに説明するわね。操作に使うのは、前後左右とジャンプと掴みの六種類のキーだけよ」
「シンプル」
上位チャット:本当にキー少ない
上位チャット:操作ミスしなくて助かる(タルを掴もうとして虚空へダイブ)
上位チャット:誰でも簡単なのがウケた理由のひとつだろう(投げ落とそうとした相手ごと谷底にジャンプ)
上位チャット:お前らw
上位チャット:ブレーキとアクセルを踏み間違ってますねぇ
上位チャット:これはゴールド免許与えられないわ
「空中でジャンプキーを押すとダイビング姿勢になって前方に勢いを得るわ」
「ふむ」
「何も持っていない時に掴みキーを押すと目の前のアイテムや人物を掴み、もう一度押すとそれを前方に投げる。空中で掴みキーを押すと崖に掴まる姿勢を取る。崖に掴まってる状態でジャンプキーを押すとよじ登り、掴みキーをもう一度押すと姿勢を解いて落下するわ。試しにやってみなさい」
「ん」
上位チャット:言葉だとちょっとわかりにくい部分
上位チャット:アイテムや人間を掴んで投げたり、崖に掴まってよじ登れるって理解でいい
上位チャット:ガチャガチャやってりゃどうにかなる(崖で二択を間違って落下)
上位チャット:崖の二択はマジで間違うから許してください
「覚えた」
「それじゃ、一戦くらい練習してみましょうか」
「キョー……セイレーンもそれでいいか?」
「うん。いいと思うよ」
上位チャット:練習
上位チャット:え
上位チャット:いいの? エルフさんだよ?
上位チャット:何を覚えるかわかったもんじゃないですよ?
上位チャット:あ、そっか
上位チャット:どした?
「ランク制限なしバトルで四〇人制。いいわね?」
「おう!」
「わたしもいつでも行けます」
上位チャット:この二人には、ゲームでエルフさんの「覚えた」が猛威を振るってないんだよ
上位チャット:ゲームで対戦してないセイレーンはともかく、キリシたんは……あれ?
上位チャット:弓、超目押し、隠しルート発見、敵を井戸に落とす
上位チャット:ずっと変なことしてるけど、確かに「覚えた」はしてない!
「変なことなんてしてないぞ?」
上位チャット:そして、この自覚の無さである
上位チャット:お、マッチング終わった
上位チャット:ちゃんと三人とも入ってるな、よし!
「おお、いっぱいいる!」
スタートラインの前に、デフォルメされた人型のキャラクターが三列になって四〇人並んでいた。
画面の中央やや手前、素っ裸の黄緑一色のプレイキャラの上に、▽のアイコンが浮かぶ。どうやら、これが俺のプレイキャラらしい。
キョーカは焦げ茶色の本体に海賊帽と鳥の羽が付いたキャラクター。キリシたんは青み掛かった修道服を着たキャラクター。どちらも自分のアバターを意識しているのだろう。
上位チャット:大興奮エルフ
上位チャット:こんな大勢は初めてか
上位チャット:エルフさん、めっちゃそわそわしてるw
「よし、突撃だー!」
「行くわよ、子羊たち!」
「え、あ、えっと、行ってきます!」
上位チャット:開始の一言だけでも性格って出るもんですね
上位チャット:何も考えずに突撃するエルフ
上位チャット:
上位チャット:始まったら何か言わなきゃいけないことに始まってから気付くセイレーン
上位チャット:別に言わなくてもいいんだがw
「時計?」
最初の短い坂を登った先に現れたのは、キャラクターの数倍ある長い時計の針がいくつも置かれたエリア。
そんなものでどうなるのか――と思ったら、
「おおっ!?」
上位チャット:たーまやー
上位チャット:エルフさんは回避したか
上位チャット:こんな見え見えの罠でも結構落ちるよね
先頭集団が足を踏み入れると、時計の針が勢いよく回り出す。
そして、二割程度が時計の針を避けきれず、エリアの隅に
「面白いな、これ!」
上位チャット:大喜びエルフ
上位チャット:四人ほど落ちてったけど、もう失格?
上位チャット:このコースはエリア外に落下しても中間地点から復帰になるよ
上位チャット:耐久コースだと開始即失格あるけどね
「シーソー?」
時計の針エリアを抜けると、そこには広い穴とたくさんのシーソーが鎮座していた。
「エルフ。ここはタルを使うのよ!」
キリシたんはタルを持ったまま、シーソーの片側に乗り、
「先行くわね!」
シーソーのもう片側にタルを投げ当て、自らを空高く射出させた。
上位チャット:キリシたんは慣れた動きだな
上位チャット:最短ルートを意識してる動きだったし、コース覚えてるね
上位チャット:エルフさん、ご感想を
「俺もやる俺もやる!」
上位チャット:いかん、子供になっておる
上位チャット:なんだこの生き物、可愛いな
上位チャット:そっちはもうタルないよー
「大丈夫、まだ一個残って――」
「あっ」
「む」
上位チャット:ラス一のタルを前に、見つめ合う兄妹……
上位チャット:取り合うか?
上位チャット:いや、エルフさんが諦めた
「お兄ちゃん、もらっていくね!」
上位チャット:エルフさん、争ってもよかったんじゃない?
上位チャット:取れる可能性あったよね
「妹が欲しがったら、兄に所有権はないんだぞ?」
上位チャット:弓、超目押し、隠しルート発見、敵を井戸に落とす、タルを妹に譲る
上位チャット:混ぜるなw
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます