54.前半戦終了

 ピピピピピッ! ピピピピピッ!


「前半終了です。エルフさん、《アクティビティ四天王》の皆さん、お疲れ様です」

「リクくん、私は!?」


 電子音がした方を見遣れば、ミソラのスタッフがタイマーを掲げていた。


上位チャット:草

上位チャット:さり気なく差し込まれる姉虐

上位チャット:なんで、逆神様はこうも絶叫が似合うのか


「ただいまから五分の休憩を挟んで、コートチェンジをして後半戦を行います。アディショナルタイムはありません。引き分けの際もそのまま決着となります。よろしいですか?」

「わかった」

「ワーッハハハ! 異存はない!」


上位チャット:前半お疲れ

上位チャット:厳しい結果になっちゃったね

上位チャット:一対一かぁ

上位チャット:人数差が思った以上にきつい


 整列禁止になった後、四天王チームボールで再開された試合は大混戦となった。

 まず、俺とミソラは再開直後にレッドにロングパスを出させないようボールの目前で構え、逆にレッドはロングパスを出すために間合いを取ろうとした。

 しかし、スケスケ肉じゅばん玉転がしはサッカー以上にボールキープしたまま方向転換するのが難しい。レッドは俺とミソラに前線をどんどん押し上げられ、慌てて追い掛けてきた他の四天王と短距離のパス回しを始めた。だが、四天王チームにもボールキープ以上のことはできなかった。

 結果、双方が決め手を欠く状態でハーフタイムを迎えたのだった。


「開始直後のロングパスを防がないと勝てない」


上位チャット:結局はそれだね

上位チャット:というか、ひとり少ないのに互角なのがおかしいw

上位チャット:「慣れた」と言ったと思ったら、すぐびゅんびゅん走り出すエルフさん

上位チャット:【悲報】最初に逆神様を踏み台にした意味消失【にゃんでぇ!?】


「ふう。エルフさんはタオル要らないですか?」

「ん」


 ミソラはタオルで汗を拭っていた。

 今日もすでに、気温は三〇度を超えている。少し動いただけで汗が噴き出しそうな暑さ、というやつだろう。本来なら。


上位チャット:なんで、エルフさん汗かいてないんですかねぇ?

上位チャット:エルフさん、大丈夫? 生きてる?

上位チャット:ゾンビエルフ疑惑


「生きてるぞ」


 どうも、この体は運動も得意らしい。この程度では息が乱れる気配すらない。便利だ。


「でも、エルフさん、あのロングパスに何か手立てはないでしょうか?」

「んー」


 俺は金網に触れる。

 元は二面のテニスコートを囲うように存在していたフェンスで、コンクリート土台の硬いものではなく、ボールや人が衝突すると柔らかくその勢いを逃してくれるものだった。


「ある」


上位チャット:お

上位チャット:マジか!

上位チャット:どうするの?


「まず、上着を掛けるためのハンガーを集める」

「取ってきます!」


上位チャット:ふむ?

上位チャット:なんだなんだ?


「集めたハンガーをコートの金網のあちこちに引っ掛ける」

「掛けてきます!」


上位チャット:んんん?

上位チャット:すると、どうなるの?


「金網を狙うと、ボールがハンガーに当たって反射角が変わるから、あいつらはパスが出せなくなる」


上位チャット:エルフさんw

上位チャット:おい、エルフw

上位チャット:エルフぅ!

上位チャット:コートの仕様を変えんなw


「ダメ?」


上位チャット:いやー、コートの状態もルールのうちですから

上位チャット:またエルフろうとしたようだが、残念だったな!

上位チャット:【悲報】エルフれず【にゃんでぇ!?】

上位チャット:エルフと逆神様が絡むと聞いて

上位チャット:違う


「ワーッハハハ! フェンスもコートのうちなので、触れるものは闘技者とボールだけに限定してもらいたい!」


上位チャット:はい、撤収ー

上位チャット:逆神様、ハンガー回収してー


「なんだ、いいのか」


上位チャット:おっ?

上位チャット:何が?

上位チャット:まさか……


「それなら簡単だ。――やろうぜ、後半戦」


上位チャット:あ、ゲームが壊れる流れだ

上位チャット:さようなら、スケスケ肉じゅばん玉転がし。ぼくたちは君のことを忘れない

上位チャット:すでに正式名、忘れてるじゃねーかw

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る