53.対決! トライアングルフォーメーション!の巻

「ええい、うろたえるな! 我らは我らの《スーパーファイティングボールアタッカー》をすればいいのだ! でも、ルールは試合後にちょっと考え直そう! 他のちびっ子が真似しても大丈夫か検証するぞ!」

「「ヤーッ!」」


上位チャット:やっぱ、想定外かw

上位チャット:だよなぁw

上位チャット:走ってくる味方を踏み台にして勢い付けるって、言うは容易たやすいけど、お前らできる?

上位チャット:いやー、無理っす

上位チャット:踏み台にしたやつと一緒にころころすると思う

上位チャット:普通に飛び込んだ方がまだマシじゃないかな


「次は我らのボールからだ! 行くぞ! トライアングルフォーメーション!」

「「ヤーッ!」」


 レッドが叫ぶと、残りのブラックとグリーンが、配信者チーム側のフィールドの左右それぞれに、ちょこちょこと走り込む。

 これは人数差を利用して、ロングパスで一気に決める作戦か。

 ならば、俺がするべきことは、


「突撃だー!」


上位チャット:エルフさんの突撃癖は治らんね

上位チャット:治す気もなさそうだけど

上位チャット:でも、ちゃんとパスコース潰してない?

上位チャット:逆神様がグリーンをマークに行ったのをちゃんと見てたのか


「突撃突撃ー!」


 俺はブラックへのパスコースに回り込み、ボールの前に位置するレッドへと猛然とちょこちょこ突っ込む。

 あと数歩でボールにたどり着く――というところで、レッドは素早く切り返し、


「ブラック! Cの三へ行くぞ!」

「ヤーッ!」

「あっ」


上位チャット:おおっ!

上位チャット:コートの金網に反射させてパスした!

上位チャット:ビリヤードみたい

上位チャット:そうか、サッカーじゃないからタッチラインはないのか


 ノーマークのブラックに渡ったボールは、あっさりとゴールラインに到達してしまう。


「ワーッハハハ! 見たか、我ら悪の《アクティビティ四天王》の力を! ちびっ子相手にここまでやるのはどうかなって思ってたけど、今はちゃんと練習しててよかったと思うぞ!」

「「ヤーッ!」」


上位チャット:ただのイロモノかと思いきや

上位チャット:意外とちゃんと強いぞ、こいつら

上位チャット:でも、エルフさんの開幕シュートを止める方法がなければ同じこと


「よし、もう一丁ミソラロケット行くぞ」

「あ、そういう技名になったんですか」


 配信者チームボールでのゲーム再開。俺は走ってきたミソラに足を掛けて、もう一度、渾身の勢いでボールに体当たりを――


「フォーメーション、ブロッキング!」

「「ヤーッ!」」


上位チャット:!

上位チャット:塞いだ!


「――っ!?」


 俺からのシュートコースを、四天王の三人が横並びになって埋める。

 俺が弾き飛ばしたボールは無情にもその壁に止められてしまった。


「ワーッハハハ! 甘いぞ、ちびっ子よ! シュートコースを潰すのは《スーパーファイティングボールアタッカー》の定石だぞ!」

「「ヤーッ!」」


上位チャット:おおぉ!

上位チャット:エルフさんと張り合ってる!

上位チャット:これは、ついにエルフさんに初黒星が!


「定石なのか。じゃあ、ミソラ。ゴール前に整列するぞ」

「えっ?」


上位チャット:あー……

上位チャット:そうか、その手があったか


「ワーッハハハ! ……この試合では整列は禁止ということにして、ルールは試合後にじっくり考え直します」

「ん」


上位チャット:ゲーム作るのって大変なんだな

上位チャット:バグ修正の現場を見ている気分になってきた

上位チャット:なんで、納期後に見つかるんですかぁ! 見つけないでくださいよ!

上位チャット:ぼくはいませんぼくはいませんぼくはいないんです

上位チャット:若干名のトラウマを掘り起こしてしまった

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