52.青くどこまでも広がる雄大な空
「ワーッハハハ! 我らこそは悪の《アクティビティ四天王》なり! 今日は《湯けむり光線》を支配しに来たのだ! さあ、おとなしく我らが傘下となるがよい!」
「頑張れー」
「ワーッハハハ! ありがとう、ちびっ子よ! 声援が心地よいぞ!」
上位チャット:エルフさんはちびっ子ではないんです
上位チャット:ただ無邪気なだけなんです
上位チャット:多分、教育の闇由来の無邪気さなんですけどね
「だが、声援をくれたちびっ子といえど、我らを阻むのであれば容赦はしない! この《スーパーファイティングボールアタッカー》で勝負だ!」
「おう!」
場所はホテルのそばに作られたアクティビティエリアに入ってすぐ。網やポール等を撤去したテニスコートが舞台だ。
巨大な透明ビニール風船は、どうやらこの競技用に作られたものらしく、頭の上から被って、内側に付いた取手を握るだけで準備完了。適度に隙間もあって息苦しさはなかった。
ノートパソコンとカメラはミソラのスタッフに預けて、俺はマイクだけ付けて行く。
「さあ、ちびっ子よ! 準備はいいかね!」
「俺はいいぞ」
「ちょ、ちょっと引っ掛かったので待ってください……」
対戦相手の《アクティビティ四天王》は、揃いの
「よーし、私も被れましたっ!」
「背中丸見えだぞ」
「ひえーっ!? なんでぇ!?」
上位チャット:スタッフー、カメラお空向いてるよー!
上位チャット:何やってんのスタッフ、逆神様を見届けないと!
上位チャット:草
上位チャット:くそっ! 悪のアクティビティ四天王は見放題だっていうのに!
「我らは悪の紳士なので、あっち向いてることができるのだ!」
「ミソラ、俺に背中向けろ。直してやる」
「ああぁ、助かります……」
「動くな。ぱんつ脱げるぞ」
「ひーん」
「……できるのだ!」
上位チャット:ちょっと揺らいだw
上位チャット:草
「ミソラ」
「はい。何ですか、エルフさん?」
「変なブラジャーだな。シャツかこれ?」
「ああ、スポーツブラですよ。何かと運動する撮影も多いので愛用しています」
「へー」
「エルフさんはどうされてるんですか?」
「俺はこんな感じだが、ダメか?」
「うーん……エルフさんもお胸大きいですし、もし運動で痛みを感じるようなら、中断して、その上からタオルを巻いてみましょう」
「わかった」
上位チャット:スタッフゥウウウウ! カメラ向けろォオオオオ!
上位チャット:青くどこまでも広がる雄大な空なんかどうでもいい! エルフさんを映せぇええええ!
上位チャット:ブラエルフ! ブラエルフが見たいのよ!
上位チャット:紳士じゃない悪がここに集まった
上位チャット:一網打尽にすべきでは?
「え、エルフさん、これ思ったより動きにくいですね」
「ん」
軽く動いてみたが、足元に余裕があまりない。
足の曲げ伸ばしはできるが、普段通りに走るのは難しいだろう。
「ワーッハハハ! その通り! 慣れねば地上で満足に走れない! この《スーパーファイティングボールアタッカー》は男女差年齢差を大きく埋めてくれるアクティビティ! 小柄な方が動きやすいスポーツなのだ!」
「なるほど」
上位チャット:あー、女性や子供向けのハンデか
上位チャット:ボールに触る機会は確実に多くなりそう
上位チャット:結構いいバランスなんじゃない?
「待たせたな」
「ワーッハハハ! 我は紳士的だったのにピンクに脇腹ぐりぐりされたぞ! もとい! どちらのボールで始めるか、コイントスを行う!」
「表」
「では、我らは裏だな!」
上位チャット:表だ
上位チャット:エルフさんボール
「開始の合図は?」
「配信者チームのいずれかがボールに触れた時点で開始だ」
「わかった。それじゃ、ミソラ、こっちに全力で走ってきてくれ」
「え? は、はい!」
「頭ぶつけるなよ」
「え? え? えええええええええ!?」
「なっ!? 誰かボールを止めろ!」
上位チャット:ちょw
上位チャット:吹っ飛ばしたw
上位チャット:ドロップキック……いや、踏み台にしたのか
上位チャット:わー、一点入っちゃったぁ
上位チャット:え、何? 何やったの?
上位チャット:エルフさんが、走ってくる逆神様を踏み台にして、走るより高速でボールに体当たりした
上位チャット:その一発で終わり。誰もボールを止められずにゴール。一点先制
「勝った」
「あの、エルフさん、これは二十分のゲームですよね?」
「そうだった」
上位チャット:間違った
上位チャット:いつもとちょっと違う
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます