51.レッツゴー♪

「最寄り駅より徒歩十五分、山奥のオアシスへようこそ! 今なら送迎バスも運行中! 天然温泉レジャーホテル《湯けむり光線》は家族や友人と楽しめるアクティビティがいっぱい! 詳しくは配信説明欄のアドレスへ、レッツゴー♪」


上位チャット:え

上位チャット:え

上位チャット:は?

上位チャット:誰?

上位チャット:え?

上位チャット:何?

上位チャット:え、誰?


「反応悪いな」

「僕はいい笑顔だと思ったのですが、ミソラにも読ませるべきでしたか」

「私、そういう理由じゃないと思うなぁ……」


上位チャット:あ、いつものエルフさんだ

上位チャット:びっくりし過ぎてチャンネル間違ったかと思った

上位チャット:俺はエルフさんが壊れたのかと

上位チャット:双子の妹でも出てきたのかと

上位チャット:ひとりください

上位チャット:他の感想が一個もなく、困惑でチャット欄が埋まったのは凄いと思いました

上位チャット:何なの、今の微妙に古い宣伝文句は?


「配信の許可もらったら、ついでに頼まれた」

「《熱狂応援ミソラチャンネル》ではミソラが読み上げますので、そちらもお楽しみに」

「あ、私もやるんだ」

「衣装はすでに用意してあります」

「待って、衣装って何!?」

「お楽しみに」

「リクくん、衣装って何なのっ!?」


上位チャット:草

上位チャット:見ざるを得ないわw

上位チャット:くっ……これが多数の企業案件をこなすVの実力か……!

上位チャット:Vの実力というかなんというか

上位チャット:で、ここが今回の紹介先か

上位チャット:どういうところ?


「ホテル」


上位チャット:宣伝文句より情報が減ったぞw

上位チャット:門ぺちぺち叩くの可愛い


 場所はホテルの玄関先。外観から映してほしいとも頼まれたからこの位置だ。

 ホテルというよりは旅館という風情であり、豪華なわけではないが門扉から敷石まで丁寧に掃除されており、客を暖かく迎えようとする気持ちが感じられた。


「ここからは僕が説明します。ホテル《湯けむり光線》の温泉は肌によい硫黄泉。入浴時間は朝六時から夜十一時までとなっています。今回のエルフさん配信のメインではありませんが、《熱狂応援ミソラチャンネル》ではエルフさんにも感想を聞きたいと思います」


上位チャット:うーん、上手にミソラチャンネルに誘導するスタッフの鑑

上位チャット:くそっ……こんなに露骨なのに見ちゃう俺がいる

上位チャット:温泉上がりで上気したお肌よりも、エルフさんが何を言い出すかの方が気になる

上位チャット:それな


「山の幸をふんだんに盛り込んだボリュームいっぱいのお夕食は夜六時から十時まで。喫茶店は夜十二時閉店です。こちらの特製クリームプリンは、それを目当てに地元の方も買いに来られるそうです」

「クリームプリン……私も食べてみたいですね」

「アクティビティのご褒美として用意していますので、ミソラも頑張れば食べられますよ」

「よーし、頑張るぞっ!」


上位チャット:スタッフは本当にスタッフとして安心感あるな

上位チャット:カンペもなしにスラスラ聞き取りやすく解説してくれるし

上位チャット:Sっ気さえなければ、嫁に迎えるのに……

上位チャット:嫁?

上位チャット:嫁


「手荷物はすでに従業員さんにお任せしましたので、僕たちは早速アクティビティ体験に向かいましょうか。何か質問はありますか?」

「枕投げは何時まで?」


上位チャット:エルフさんw

上位チャット:こいつ……目が本気だ!

上位チャット:草生える

上位チャット:エルフさんに時々男の子が発露するの本当に何なのw

上位チャット:女子も枕投げしますぅー

上位チャット:修学旅行で窓ガラス割っちゃいますぅー

上位チャット:やだ、エルフさん視聴者女子怖い……


「ミソラとエルフさんがアクティビティを体験している間に確認しておきます。では、出発します」

「おう!」

「はいっ!」


上位チャット:確認されても困るだろうなぁ

上位チャット:「すみませーん、枕投げって何時までですか?」

上位チャット:「ラスト枕は夜十時半とさせていただいております」

上位チャット:ラストオーダーじゃないんだからw


「最初にミソラとエルフさんに体験してもらうアクティビティは、先にも説明したスケスケ肉じゅばん玉転がしです」


上位チャット:スタッフw

上位チャット:怒られるぞw

上位チャット:お前、それ覚えてて言ってるだろw

上位チャット:スーパーなんとか……本当に名前なんだっけ?

上位チャット:俺の脳みそに残ってるのはスケスケ肉じゅばん玉転がしだけです


「試合は十分ハーフの二十分です。少し短いですが、他にもアクティビティが控えているのでこの長さとしました」

「リクくん、三対三のゲームなんだよね? どうチームを作るの?」

「今回はミソラ・エルフさんの配信者チームで、ホテルが有する《アクティビティ四天王》に挑む二対三の変則ルールとなります」


上位チャット:アクティビティ四天王

上位チャット:少し古いバラエティ番組のにおいが漂ってきましたよ

上位チャット:あぶれた四天王の立場のなさよ


「そして、配信者チームが勝利した場合は、先程の喫茶店特製クリームプリンを出します」

「わぁっ! やったぁ!」

「敗北した場合は、ミソラに僕特製クリームプリンじゃないものを出します」

「じゃないものって何!?」

「食べられるものです」

「越えるべきハードルの高さが低いよ!?」

「食べ物の仕込みはこれが最後なので、ぜひ堪能してもらいたいですね」

「ううぅ、負けられない……」

「よーし、勝つぞー!」


上位チャット:エルフさんは楽しそうだなぁ

上位チャット:平和な配信が戻ってきた

上位チャット:さすがのエルフさんも運動競技まで壊しはしないだろう

上位チャット:なんで、フラグ立てちゃうんですか?

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