48.逆神様のクッキー

「は、始めまして、エルフさん。私、実況系Vチューバーのドレミソラと申します。く、クッキーお食べになりますか?」

「なる」


上位チャット:なるw

上位チャット:物怖じしないなぁw

上位チャット:知らない人から食べ物もらっちゃいけませんよ

上位チャット:ホント、それ


「お前らは知ってるだろ?」


上位チャット:まあね

上位チャット:逆神様

上位チャット:昨日も見てたわ、逆神様

上位チャット:ちっともミソラさんと呼ばれない逆神様


「なら、よし」


上位チャット:いいのかなぁ?

上位チャット:俺らへの信頼を感じる

上位チャット:あーもー、嬉しそうに食べちゃってからに


「うまい」

「あ、私が作ったんです。嬉しいな」


上位チャット:逆神様のクッキーいいな

上位チャット:お菓子作り上手だったとは知らなかった

上位チャット:エルフさん、いいなー

上位チャット:俺も食べてみたい

上位チャット:五千円までなら出せる

上位チャット:どんな味?


「塩味」

「え゛っ!?」


上位チャット:事情が変わった

上位チャット:五万円までなら出せる

上位チャット:知らない人から食べ物もらっちゃいけませんよ

上位チャット:ホント、それ

上位チャット:もりもり食ってるけど、いいのかそれでw


「本当に塩味してるぅううう!? なんでぇ!?」

「僕がレシピをすり替えたからですね」

「なんてことするの!?」

「まさか、ミソラが気付かないまま作り上げるとは思わなくて」

「はうっ!?」

「普段から料理していれば気付くことですよ」

「すみませぇん……」


上位チャット:逃げ道を塞いだ上で仕掛けるスタッフは有能

上位チャット:どう考えても叱られる流れだったのにw


「で、二人は何してたんだ?」

「私たちは、ここしばらくネットで話題のエルフさんを召喚する動画を撮影していました。あっ、できればミソラと呼んでください」

「僕はミソラのスタッフなのでお構いなく」

「そうか、頑張ってな」

「えっ!?」

「はい、何日掛かっても達成させます」

「リクくん!?」


上位チャット:草

上位チャット:天然と天然じゃないのが寄ってたかって逆神様のハシゴを外していく

上位チャット:いつまで人間してんだw

上位チャット:「いつまで人間してんだ」って人生で初めて聞いたわ

上位チャット:俺も人生で初めて言ったわ

上位チャット:そろそろエルフに戻ってあげてー


「質問」

「あ、はい。エルフさん、なんでしょう?」

「俺って話題なの?」


上位チャット:そこから!?

上位チャット:そういや、エルフさんってSNSもわかってなかったな

上位チャット:あー、ガチのネット初心者か

上位チャット:それじゃ、話題になっているかなんてわからんな


「話題ですよ。エルフさん、ゲーム上手って」

「へー、ゲーム上手だと話題になるのか」

「はい!」


上位チャット:だいたい合ってるけど、齟齬を感じる

上位チャット:エルフさんは、ゲーム上手の一言では表せない

上位チャット:スペックのゴリ押しと奇妙な発想とエルフさんが合わさる

上位チャット:最終的にエルフすることで楽しい配信になるのだ

上位チャット:また、エルフに新たな意味が増えてる……


「で、俺に何か用事?」

「はい。一緒にロケに行きませんか?」

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