47.エルフ召喚

「何あれ?」


上位チャット:どうしたの?

上位チャット:危ないからよそ見せずに降りて

上位チャット:俺らの視線は物理的にエルフさんに釘付けだからわかんないです

上位チャット:物理的にw

上位チャット:固定カメラだもんなぁ


「見に行く」


 クワガタに別れを告げると、俺はさっさと木を降りて、置いていたノートパソコンとカメラを回収する。


上位チャット:エェエエエルフゥウウウ!

上位チャット:ゆっくりって! ゆっくりって言ったよなぁ!?

上位チャット:人間落ちると危ないのよ!


「エルフだぞ?」


上位チャット:違うそうじゃない

上位チャット:エルフならいいってもんじゃ……どうなんだ?

上位チャット:いや、よくないから!

上位チャット:俺らの心臓が止まるんで、今だけは人間になってください


「わかった」


 急がず木々の間を行くこと一分足らず。開けた芝生の上に、若い男女がいた。


「本日の企画は、しょうかんじゅつです」

「マイナス一点です」

「待って!? 私、噛んでないよ!?」

「マイナス二点です」

「淡々と増やさないで!? あと、基準は何!? 何点下がると、どうなるの!?」


 叫ぶ女性の方は大学生くらいの歳のころ。目元はゴツいゴーグルで覆っていてわからないが、鼻や口の造形は整っていて、美人そうに見える。特徴的なのはメッシュの入った髪。服は何やら、チュニックをひらひらさせている。

 男性の方は女性より少し年下か。真面目そうな雰囲気のメガネの少年だった。女性とは反対に、飾り気のないシャツにジャージを穿いていた。


上位チャット:逆神様!?

上位チャット:逆神様だ!

上位チャット:マジ逆神様やんけ!

上位チャット:てことは、あの少年が鬼畜スタッフか、若っ

上位チャット:あぁー、無表情メガネなの想像通りで脳が溶けるー


「逆神様って聞き覚えある」


上位チャット:キリシたんの同僚だよ

上位チャット:といっても、割と実写で悲鳴上げてるから、あまりVって感じはしない人

上位チャット:2.5Dは自由な箱だ


「で、何をやる気なんだ?」

「今日は最近話題のエルフさんを召喚してみたいと思いまーす」


上位チャット:エルフさんw

上位チャット:ちょっとwww

上位チャット:よそのカメラの前に出ちゃいけませんw


「それでは、まず、ビニールシートを敷いてー」


上位チャット:あれ?

上位チャット:逆神様?

上位チャット:スタッフくん? 止めないの?


「次に、大きく円形にキノコを並べて行きます」

「手伝うぞ」

「あ、助かります」


上位チャット:え、なにこれ?

上位チャット:エルフさんに気付いてない?

上位チャット:いや、思いっきり会話したぞ……


「これ、完成したらどうなるんだ?」

「あ、はい。キノコの円の中であれば、エルフが見えるようになるんだそうです」

「へー」


上位チャット:えっ……? えっ……?

上位チャット:エルフに自信ニキ、ちょっと解説を

上位チャット:菌輪の中であれば、エルフを視認できるようになるという伝説は存在する。この円環は擬似的な菌輪のつもりなのだろう。


「はい、完成でー……どっひゃああああ!?」


上位チャット:すげ、後ろ一回転したw

上位チャット:逆神様の驚き方よw

上位チャット:エルフさんと違う方向で女を感じない美人だよなぁ


「り、リクくん! ほ、本当にエルフの召喚に成功しちゃいましたよっ!?」


上位チャット:召喚?

上位チャット:急にエルフさんに気付いたからか

上位チャット:なるほどなー


「違うぞ」


上位チャット:お

上位チャット:エルフさん?


「今だけは人間だ」


上位チャット:違うそうじゃない

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