17.ゲームセンターエルフ
「再開するぞー」
上位チャット:エェルフゥ!
上位チャット:挨拶もなしに切るのやめろォ!
上位チャット:でも、SNSで開始予告できるようになったのは偉ァい!
「『またな』って言ったぞ?」
上位チャット:学校帰りの友達か!
上位チャット:多少は別れを惜しませてください
上位チャット:そう、それ!
「別れを惜しめる挨拶って何すればいいの?」
上位チャット:……何だろ?
上位チャット:お決まりの挨拶をする……? いや、違うな
上位チャット:終了より何分か前に予告する……? ううーん……
上位チャット:このエルフ、たまに感覚的に行ってたことを言語化するよう求めるよな
上位チャット:まあ、それは置いといて、ここどこ?
「よく聞いた。今日はここで遊ぶぞ」
俺はカメラを、目の前の店の看板へと向ける。
上位チャット:ゲームセンター
上位チャット:ゲーセン?
上位チャット:店内って撮影していいの?
「許可は今取ったから大丈夫だ!」
場所はそば屋があった並び。移動距離は数分だが、配慮して配信を閉じた形だ。
上位チャット:今かよw
上位チャット:許可出した店、よくやったぞ
上位チャット:なんか、テンション高い?
上位チャット:ゲームが絡むとエルフさんのテンションは上がる
「いざ、入店。頼もう!」
上位チャット:道場破りかな?
上位チャット:お、結構でかいところだ
色とりどりに輝き動く各種筐体。音楽や効果音も絶え間なく流れ、俺を魅了する。クレーンゲーム、格闘ゲーム、リズムゲーム、なんだかよくわかんないゲーム、さっぱりわかんないゲーム等々が山ほど稼働していた。
「おおーぉ」
上位チャット:めっちゃ嬉しそうじゃん
上位チャット:なかなか聞かない声聞いた
上位チャット:ゲーセンは初めてなの?
「初めて」
上位チャット:その年で初ゲーセンって珍しいな
上位チャット:お国柄?
上位チャット:やめろ、ど田舎出身かもしれないだろ! 俺のように……
上位チャット:やーい、お前ん家、俺ん家並みのど田舎ー
上位チャット:煽り風自虐w
「ゲームセンターも禁止されてた」
上位チャット:やべ、闇だった
上位チャット:そういや、このエルフさん、教育系の闇あったんだった
「何で遊ぶ?」
上位チャット:レースゲー
上位チャット:クレーンゲームをはしごしよう
上位チャット:競馬
上位チャット:バトルレースチャンプやろうぜ、面白いぞ
上位チャット:リズム
上位チャット:古典パズル系
「バラバラだな」
上位チャット:思ったより割れた
上位チャット:レースゲームがちょっと多いくらい?
上位チャット:いろいろ摘み食いしてみたら?
「じゃあ、一時間くらいいろいろ遊んでみて、最後にレースゲームやる」
上位チャット:では、一番近くにあるクレーンゲームから
上位チャット:お前、クレーン推してたやつだろw
上位チャット:何のことかワカラナイナー
ゲームセンターの入り口にはクレーンゲームが並んでいる。中にはクレーンがないものもあるが、景品らしきものが鎮座しているので、クレーンゲームの亜種なのだろう。
「クレーンゲーム、初めてだけど、どれがいい?」
上位チャット:だったら、箱入りフィギュアなんかは避けるべき
上位チャット:景品の価値が低いやつがいいよ
上位チャット:最初は小さめのお菓子が景品になってるようなのを選ぶのが正解
「なら、これか」
俺が選んだ筐体は、他のクレーンゲームと比べてずいぶんと小型なものだった。比例して、クレーン部分も小さく、頼りなさげだった。
「よし、一〇〇円投入」
上位チャット:いけー
説明に従ってボタンを押すと、軽快な音楽と共に、うぃんうぃんと揺れながらクレーンが横へ進む。
程よいところでクレーンを止めて、カメラはそのまま、俺は筐体の横手に回って、位置を確かめながらクレーンを奥へと動かす。
上位チャット:横からガラス越しに俺を見つめるエルフさん
上位チャット:そんなに真剣に見つめられると照れるわ
上位チャット:すみません、愛してます!
二度の操作で位置を決めたアーム部分がゆっくり降りていく。
「ごっそり掴め」
上位チャット:横から帰ってこないエルフさん可愛い
上位チャット:癒される
お菓子の山に突っ込んだアームが先端を閉じて持ち上げる。が、
「あ、あ、あ! 落ちてく落ちてく!」
アームの間にお菓子が挟まって閉じきらず、その隙間から次々にお菓子が落下していく。
「ああああぁ……」
上位チャット:悲しげ
諦めきれず、しゃがみ込んで受取口で待つと、生き残った英雄がコトンと転がり込んできた。
「取れた」
上位チャット:ドヤ顔
上位チャット:大勝利
「んまい」
上位チャット:かつて、ラムネ菓子一個がこれほどの笑顔を生み出すことがあったであろうか
上位チャット:今回は平和な配信になりそうだな
上位チャット:フ ラ グ
上位チャット:立てるな立てるな
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