第17話
「まさか日本の影の組織が俺たちを頼るとはな、えぇ?マツダさん」
くわえタバコにアロハシャツの男がニヤニヤしながら長身の男に話しかける
「無駄話をする気はない、お前を信用していいのか?」
「そんなもんてめぇが判断しろ、信用できないならこの話はナシだ、ウチ無しでコレを安全に沖縄から出せるなら勝手にしろ」
「…お前ら米国はこれを火種にする気か?」
「大陸はもうすぐ破綻する、火種も何もウチが仕掛ける必要はないさ。元々もコピー品だらけの国だ、偽モンが流通しててもあの通りピンピンしてる、さっさと積み込め」
人一人分程の包まれたモノをマツダが抱えアロハシャツの男が運転する車に積み込む
「よろしく頼む」
「任せろ、ただ勘違いするな、この件はノータッチ、俺は積荷を「知らない」いいな?それとヤツの頼みだからアンタに協力しているだけ、忘れるなよ、じゃあな!」
「最後にもうひとつ聞かせて欲しい」
「なんだよ?」
「他国の諜報機関のお前が協力するメリットはほぼないように見える、なのに何故手を貸した?奴はそれほどの人間なのか?」
長身の男の問いに運転席の男はタバコに火をつけ煙を吐きながら答えた
「お前…アイツと話した時何も見てないのか?泣かせるじゃねぇか、見ず知らずの女の為に身体張るってよ」
「茶化さないでくれ、真面目に聞いてる」
「マジもマジ、大マジだよ。それに…あのやつれよう…もう長くない、そんな奴の頼みを断るなんざ俺にはできないね。もうひとつ付け加えるならあの娘が何も知らないで済むならそれが1番いい…裏側は俺やお前、アイツも込みで掃除をしてああいう娘が平和に過ごせるようにしてやりたい…なんてな、あ!写ってる映像は俺の所を流すなよ、じゃあな!」
そう言い終わると男は窓を閉めて車を出した
同時にマツダと名乗る男のスマホに着信が入る
「俺だ、積荷を載せた、ウチのに気が付かれる前にすまないがワンランク計画を上げる」
スマホを切ると男はビルの間に消えていった
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同時刻
那覇国際空港到着ロビー出口
この夏日に数人がジャケットスタイルで歩き中心にはアロハシャツに短パン、麦わら帽子で鼈甲ステッキをつきながら歩く老人がいた
「久しぶりに来たけど暑いねぇ…」
「御仁、上に車をご用意しております、そこまでは…」
「ちゃんとスライドドアの広い車だろうねぇ」
「仰せの通り、最上級グレード、防弾仕様のアルファードでございます」
オールバックの髪型でポリスタイプのサングラスをかけた男が答える
「おぉ、君は…新人の…えぇぇと…」
「大友です、顔を覚えて頂きありがとうございます」
「私の護衛だ、生命を守ってくれる人を覚える事は常識だよ、しかし汗が止まら…」
老人が額を拭おうとすると斜め横から髪を高い位置で縛り細めの黒縁メガネをかけた女がそっとハンドタオルを差し出した
「御仁様、これを…」
「君も気が利くねぇ…あれ?名前は…いかんなぁ歳で物覚えが悪くなるのは」
「花村です、御仁様を私がお守り致します」
「はっはっは!こりゃ頼もしいなぁ〜しかも君のような美人、いつでも傍にいて欲しいねぇ〜」
花村と名乗った女の臀を撫で回しながら御仁と呼ばれた男はご機嫌な顔つきで駐車場エレベーターに乗る
「そういえば…例の…どうなった?」
黒ジャケットの集団の1人がスマホを老人に見せる
「…こちらを…」
「…ん?んんんん??ほほほ!こりゃ着いてそうそう縁起が良いねぇ〜後はあの厄介な小娘と…」
チーン
エレベーターが4階に着くと同時に御仁と呼ばれた老人はステッキで近くの車のサイドミラーを叩く
「あの!忌々しい!若ッ造!若造め!東都警備と警察を私から引き剥がしおって!」
「御仁、まずはお車に…お身体を休めましょう」
大友と名乗った男が右手を上げると白いアルファードがこちらに向かってきて御仁近くに止まるとスライドドアが開いた
車に乗り込んだ老人は怒りが止まらず車内でもステッキを振り回している
「クソ!クソ!私の邪魔をしやがって。まぁいい…あの若造もこれまでだ。ワシの餌に食いつきおって、おい!今どこにいるんだ!」
黒ジャケットの1人がまた別の写真を提示
「この男の居場所は把握してます」
「……お前らの目は節穴か!!こりゃ別人だ!」
「は?」
「こいつじゃない!似てるが全くの別人じゃないか!そんなこともわからんのか!」
「御仁…しかしマツダケイスケを探せと我々に命じ…」
「バカ!…ん?こいつはよく見たら…アッハッハッハッハッ!運がこっちに味方してるなぁ〜丁度いい、全部仲根とコイツらに被ってもらおうか。しかし似てるなぁ…この2人は…」
運転席の大友がミラー越しに尋ねる
「御仁様、読谷の御屋敷に迎えばよろしいでしょうか?」
「あぁ、小娘が見つかるのも時間の問題、果報は寝て待てだ。そうそう、おそらく…仲根の画像を送ってきた人間が小僧と小娘の場所を見つけるハズだ、その報告がきたらそのまま小僧は処理、小娘は私の前に連れてくるように言いなさい、いいね」
御仁の横に座る花村が飲み物を渡しながら尋ねる
「何故そんなに…?何か確証でもおありなのですか?」
御仁は飲み物を受け取ると花村の手を撫で回し胸にまで手を回しニヤニヤしながら
「長年人を見てると分かるもんさ…こういう大局を見極められないと人の上に立てんぞぅ〜」
一行を載せた車は空港駐車場を後にしモノレール下の道路を那覇市内へ向かったのだった
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