第10話
自分には縁のない生き方
普通に人と出会い笑い合い悲しみ合いそして傷つく
誰かと思いを共有し相手と共に老いて
穏やかな時間を過ごす
各々大小に考え生きている
「幸せ」に向かうために
考えない人間は無能
と割り切っていたがそんな事はない
皆、大切な人は自分の為に考え、理解し生きている
ーただ羨んでいただけだったのかもなオレはー
痛みが引いてきたときに
「お待たせ!」
芽衣がバーガー、飲み物2つ、マッシュポテトがのったトレーをテーブルに置き真樹人の向かいに座る
「さぁて、今度はどんな初めてかな、楽しみだよ」
「はいこれ!」
芽衣がバーガーにしては大きく包まれた物を真樹人に、受け取った真樹人は包み紙を開けると白ゴマが散りばめられた大きめのバンズに肉が2枚にチーズとベーコンが挟まれていた
「デカイな!食べられるかな」
「いけるでしょ?」
芽衣はカップに入ったマッシュポテトをスプーンで食べる
「うん、美味いね」
真樹人もバーガーを頬張る
バンズの焼き加減は普通だが肉がキチンと直火で焼いた風味があり中のサワークリーム風味のソースがチーズとベーコンのしつこさを消してくれているので量はともかく見た目よりサクッと食べられた
「これは確かに美味い、東京じゃ食えないよ」
「でしょ?ここ空港にもあるから食べればいいのに、はい、これ」
芽衣がカップに入った飲み物を勧めてきた
「どうせコーラだろ?」
「いいからいいから」
芽衣がなにやら含みのある笑いをしているのを見て見ないようにしストローに口をつけて飲む
「?!うわ!なんだこれ!湿布の匂いだ!」
「アッハッハッ、やっぱり同じリアクション!」
「なんっーもん飲ませんだよ、なんだこれ?!」
「これはルートビアって言う飲み物、沖縄以外の人が飲むとみんな同じ事言うんだ、でも騙されたと思ってバーガー食べた後に飲んでみてよ」
申し出を断わる訳にもいかないが真樹人の好奇心がそれを勝ってしまいバーガーを食べて湿布ドリンクを恐る恐る口にした
「……あ、美味いかも…」
「でしょ?油っぽいのと良く合うんだよ」
「芽衣も人が悪いな」
「?」
「初めから教えてくれてもいいだろう?それにみんなリアクションするってさ、同じ事してきたの?」
芽衣は半笑いで目を細め
「あれ?真樹人さん妬いてる?もしかして」
「別に」
「妬いてんじゃーん、そりゃアタシだって木の俣から産まれた訳じゃないからそれなりにね」
「妬いてねぇよ、なんか引っ掛けられた感がさぁ…あー気分悪い、具合が悪くなりそうだわ」
真樹人が芽衣から目を逸らし不貞腐れながら食事をする
「ごめんて、そんなにむくれないでよ。ホラ?アーンして」
「やめろよ、そういうの」
「ほら!照れない照れない」
芽衣がマッシュポテトをスプーンですくい真樹人に勧め渋々真樹人も食べる
「美味しい?」
「…うん、美味い」
「でしょ?ほらもっと、あーん」
するとデーブルの横で荷物を持った若い女が転んだので真樹人と芽衣が手を貸す
「大丈夫?」
「怪我ない?立てます?」
「あ、すみません…」
真樹人が手を差し出すと女がその手を掴む
なにやら真樹人の手に紙切れを握らせると女は礼を言い立ち去った
真樹人がその紙切れを芽衣に見えないように広げると
「店の裏手、すぐに来い」
とだけ書かれていた
「ごめん、仕事の電話だ。すぐに済むから待ってて」
そういい芽衣の返答を待たず真樹人は席を立ち足速に店を後にした
「裏手ったって分かるか、こちとら初めて来たんだし」
店の外側の外壁を伝って歩くとなにやら見覚えのある男が立っていた
「よ!兄さん、久しぶりっすね」
「…やっぱり…君もあの紙を渡してきた彼女も連中の一派なのか?」
「いんや、俺らは小間使い、まだ試用期間って所。あの人や局長からしたら俺はまだまだだからさ」
「そこは自覚してるんだ、尾行をするならもう少し離れてやった方がいいぞ?もしかして君みたいな小間使いと言うか手足になる連中が沢山点在してるのかな?それがあの一派の強み?」
「やっぱりバレてたか…昔から苦手なんだよなぁ。あ、俺は局長のコマじゃなくてあの人のパシリに近いかも、それに個々で雇ってる俺みたいな連中は…おっと…無駄話してるとどつかれる…んじゃまたね!」
そそくさとその場を離れるた瞬間、真樹人の後ろから声がした
「こうやって顔を合わせるのは初めてだな…しかし本当に似てるな、お前は。なんて呼びゃいい?お前は名前が多いからな」
「戸平 真樹人だ、今はね」
真樹人が振り向きながら答えるとそこにはTシャツでカーゴパンツ姿で恰幅のいい男が立っていた
「そっちこそ名前くらい名乗れよ」
「うるせぇな質問するのはこっち、お前は答えるだけ」
カチャ
それだけ言うと恰幅のいい男が真樹人に銃を構える
「撃ちたきゃ撃てよ、命乞いなんてすると思ったか?」
「ダメだぞ?命を粗末にしたら、俺が撃たねぇとでも思ってる?」
「好きしろよ、ただ一つだけ」
「なんだ?」
「お前がここで俺を撃つような男ならお前は賢くない、情報を聞き出す前に殺すなんてのはド三流だ、大善寺ってのは三下の集まりか?意外と大したことねぇのな」
「安い挑発だな、調べたのか?俺達の事」
「まぁね、痕跡を残さないから結構大変だったよ、調べるのは」
飄々と真樹人が答える
「俺らを追うなと忠告したけどやっぱり無理か、お前は…」
トリガーに掛けた指に力が籠めると男はニヤケながら銃のハンマーを戻す
「なーんてな、お前がペラペラ喋るバカかどうか俺が試しただけ!何ムキになってんだ?アハハ!」
そう言うと銃を腰にしまいタバコに火をつけ
「お前も吸うか?」
真樹人にタバコを勧めた
「名前くらい教えろ、やりずらい」
男がさしだしたタバコを口にやり火をつけた
「好きに呼べよ」
「タバコありがとう、デブス」
「やっぱ殺していいか?」
「じゃあ名前教えろ」
「前田だ、俺は」
2人が同時にケムリを吐きその煙は空に消えた
「何が聞きたい?俺はただの観光客だよ」
「馬鹿言うな、単刀直入に聞くぞ?何を知ってる?」
「何も…もし何か知っていたとしてもお前らみたいな秘密主義者達に協力するいわれなんてない」
2人がまた睨み合う、その空間には殺気が漂っていた
「人を待たせてんだ、早くしろ…よ!」
真樹人が高杉と名乗った男の顔面に右拳を飛ばすと男はそれを避けて咥えていたタバコを真樹人の顔に飛ばす
それを瞬時に真樹人が躱すと前田と名乗った男は少し驚いた
「お前、反応いいな」
「お褒めの言葉ありがとうよ、で?まだ続ける?」
「俺がしてぇのは喧嘩じゃねぇ、話だ。こんな事言いたくねぇが俺らは手詰まり、お前もおそらくそうだろ?お互い手の内を明かそうぜ、な?」
暫しまたお互いを牽制し合うように睨む
「君らの目的は伝えずに強要…何を焦ってる?さっきも言ったが俺がお前らに協力する気は義理はない、それに彼女を待たせてる。これ以上俺の時間を奪うな、どうせ俺達を下手くそな尾行を続けるんだろ?なら彼女がいない時なら話ぐらいは聞いてやる…ただし」
「?」
「彼女を巻き込むんだり囮にしたらお前らを殺す、お前の相棒もさっきの奴もいいな?」
そう言い真樹人はその場を後にした
「…誰かの為に何かをしようとする…そういう所もそっくりだよ、お人好し共め」
ポケットから携帯灰皿を取り出し吸殻を捨てて前田もその場を去った
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