第9話
「ナビ通りに行かないから〜」
「ごめんごめん」
真樹人はどうやら道を間違えたらしく芽衣に呆れられた
「さっきから何回目で?」
「面目ない」
コーヒーを口に含み真樹人はミラーを確認して右車線へ
「あ、あそこ、石川から高速に上がってください」
「はーい」
右折レーンに入り入口から高速へ
祝日という事もあってか道はそれなりに混んでいたが止まることなく流れていた
「この分なら1時間もかからないですよ」
「そっか」
「あ、運転キツかったら言っ…」
「ありがとう、疲れたらパーキングに入って休ませてもらう、だからのんびり1日を楽しもうよ」
真樹人の一言に芽衣は少し安堵したのかホッとしたようだ
「真樹人さんてそういうところ優しいですよね」
「何が?」
「俺がやるとかじゃなくてちゃんとこっちの意見も聞いてくれる所とか…そういうの大切ですよ」
「そういうもんかなー?」
真樹人はミラーを確認して追い越し車線へ
アクセルを踏んだのか車のスピードが上がる
「あ、ごめん、運転荒かったら言って。気にはしてるんだが…いつも運転する時は1人だからさ」
「大丈夫です、あ!これ食べてください」
芽衣が何やら小袋から何かを出した
「ん?なに?」
「梅こんぶです、熱中症予防には最適なんですよ」
「へー、予防には最近売ってるスポドリのORSとかOS-1とかじゃないの?」
「あ!それ勘違いしてる人多いんですよ!ORS系のスポーツドリンクやOS-1なんて予防で飲んだら塩分過多なんだよ」
「さすがプロだね」
「この時期になるとよく聞かれるんです。熱中症予防にはキチンと睡眠をとり朝ごはんを食べる、パンより米で、お味噌汁の具はワカメと豆腐がベスト。昼ごはんもバランスよく食べて合間に水やお茶を飲む、夕飯もバランスよくしなるべく炭水化物を少なめして早く寝る。これが1番です」
得意げに芽衣が話すと
「飲みすぎなんてのは以ての外だね」
真樹人がちゃちゃを入れると少し顔を赤くした芽衣が
「やめてくださいよーもー!」
「冗談、冗談」
車内は他愛もない話で盛り上がっていた
運転席の真樹人が横目で車窓を見るとエメラルドの海と山が広がっていた
「綺麗だな、ここは、沖縄って感じだよ」
「そうかなぁ」
「地元の人間には当たり前過ぎてなかなか伝わらないんじゃないかな」
そんな話をしながら40分程高速を走り許田で高速を降り信号で止まる
「そろそろ教えてくれてもよくない?どこに行くの?」
「信号真上の看板見て、真っ直ぐ行く方向」
表示には
「海洋博公園」の文字
「なに?公園行くの?」
信号が青になり車を進めながら真樹人は尋ねた
「行ったらわかるよ!あ!このまま行くと左に派手な看板のバーガー屋とコンビニがあるから寄って行こ」
「OK」
少しクルマを走らせていると左に芽衣が言っていたであろう看板とコンビニがあった
「ここだろ?クルマ停めるね」
真樹人が駐車枠にクルマを停めエンジンを切る、シートベルトを外して2人は車から降りてコンビニへ
「前売り券買お」
「公園なのに金かかるのか?」
「え?マジで知らないの?」
「だから何?」
「海洋博公園には水族館があるの、今日は祝日だからチケット売り場並ぶし前売り券の方が少しオトクだしね」
ドヤ顔で芽衣が説明
「へぇーなら俺が払うよ、それ」
「いいよ!昨日もご馳走…」
「いいからいいから、俺といる時は財布出さなくていいよ」
「…でも悪いよ」
真樹人の申し出に芽衣は困惑したが真樹人がたたみけた
「じゃあこうしよう、芽衣はガイドそれに対して俺が報酬を払う。それでどうかな?正直俺全然分からないからガイドが居ないと困るんだよ」
「…私そんなにみすぼらしく見えるの?」
「は?」
「私、お金に困ってないしそこまでされるいわれも無い。昨日の事で変に同情…」
「そう思わせてしまったなら謝る、不快な思いをさせてごめん、俺が払うって言ったのは本当に何も理由なんてないんだ。君と居て楽しいから少しカッコつけたいってのはあるのは認める、俺も男だしね」
場が悪そうに真樹人は顔を少し背け鼻を指ですする
「…私もムキになってごめんなさい」
「俺も気が回らなくてごめん」
2人の謝るタイミングが重なり互いが見合うと2人は笑った
「このタイミング被るかなー」
「こっちのセリフだよ」
「なら…真樹人さんに甘えようかな」
「いいよ、そうしてくれた方が俺もカッコつけられるし、レジ行こうか」
2人は微妙な距離でレジに向かい前売り券を2枚と地産のお茶を2本買い店を出る
すると芽衣が
「あ!コーヒーのゴミ捨てたらあっちも寄ろ!」
芽衣が指をさしたのは「A&D AMERICA」とデカデカと大きな看板にデザインされていたバーガー屋だった
「そんなに食えるの?さっきポーたま?食べたじゃないか」
「アタシはアンダーのマッシュポテトが食べたいんですー、真樹人さん食べたことないよね?美味しいよ、ほら!行こ!」
芽衣が真樹人の手を握り無理なり店内へ連れ込んだ
店内は真樹人が想像していたバーガー屋とは違う雰囲気でアメリカのバーガーショップをそのまま日本で作ったイメージだった
芽衣がテーブルを取り荷物を置くと
「真樹人さん、ここで座って待ってて」
「メニューくらい見せてよ、初めてなんだから」
「真樹人さんが好きそうなの買ってきますから、任せて!」
そう言い終わると注文カウンターへ
真樹人は少し痛みを感じたので芽衣がいないこの時にマナー違反とか分かっていたが買った地産のお茶の蓋を開け薬をボディバックから取り出し飲み込む
痛みを逸らす為に周りに目をやると
楽しそうな10代と思われる男女
観光で来ている若夫婦
子供がグズっている家族連れ
予想より頼んだ物の量が多かったことに困惑して苦笑いしている老夫婦
様々な人間模様に少し羨む自分がいることに気がついた真樹人だった
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