第8話

真樹人の車に2人が乗り込み芽衣がナビを設定し発進、ものの10分程度で指定した駐車場に着いた

「しかしまぁ…慣れてない人間にこんな細道使わせるかね」

真樹人は呆れ口調で言うと

「真樹人さんならいけると思ったんだ、予想通りでしょ?ほら!いこ!」

芽衣が笑顔で答えシートベルトを外し車の外へ

真樹人の車から降り駐車場をでて少し歩くとそこは国際通りだった

「ここに出るのか」

「そうそう、あそこは車停めるにはオススメなんだ」

国際通りにはビジネスホテルやら民泊宿も多くスーツケースを引きずる人も多々いた、それを避けるように歩き信号を渡るとそこは商店街入口でそのまま進むと土産物店や薬屋等が立ち並んでいたが空いている店はチラホラだった

「どこまで行くんだい?」

「いいからいいからもうすぐそこ」

そのまま進むと右手に黄色い看板に黒文字で

「福助の卵焼き」

と書かれた店があった

券売機があり芽衣を買っていた

「俺に選ぶ権利はないの?」

「まぁまぁ、とりあえず王道食べてみてよ」

真樹人が支払いをしようとしたが

「朝ごはんはアタシが払うよ」

そういい番号の書かれた食券を真樹人に渡した

すぐに出来上がったのか真樹人と芽衣の番号が液晶に表示され受け取りにカウンターへ

渡されたのは厚い卵焼きとスパム、ご飯を海苔で巻いた物が出てきた

それを持ち店前のベンチへ

「これなに?」

「ポータマだよ!いただきまーす」

芽衣がかぶりつく

「おいしいー!真樹人さんもほら」

真樹人も口に頬張ると

「お、これ美味いな」

「でしょ?」

少し甘めの卵焼きに塩っ気のスパムとよく合うので真樹人もむしゃむしゃ食べていた

「そんなにお腹空いてました?」

「いや、これが美味くてさ、温かいうちに食べようかとね」

芽衣もお腹が空いていたのか2人ともあっという間にたいらげた

「ここはね、沖縄にしかお店出てないんだ」

「へぇー!東京にもあるかと思ったよ」

2人はベンチから立ち上がりポー玉の包み紙をゴミ箱に入れて駐車場に戻る

「お腹も満たしたし、さ!今日は張り切っていこ!」

「今日はどこに行くんだい?」

「うーんとね…北の方に行こうかなと考えてる」

「だからどこだよ」

「行ったらわかるよ、沖縄に来たら行っとかないと」

商店街を抜け信号を渡るとスターライトカフェがあったので

「コーヒーでも飲まない?」

「あ、うん!」

2人がスターライトカフェへ

雨季を抜けた行楽シーズンなので人は多く並んでいた

他愛もない話を2人でしていると真樹人の順番になり緑のエプロンをした若い男性店員がさわやかに迎えた

「俺はアイスのソイラテショットダブルで、芽衣は?」

「私は…アイスのキャラメルラテにチョコソース追加で」

注文が終わりレシートを受け取り受渡し口へ

お互い注文品を受け取り店外へ、芽衣は外へ出るなり甘そうな飲み物を頬張る

「んーうまーい!」

「もうそこまでくるとコーヒーじゃなくないか?」

真樹人が茶化す感じで言うと

「いいんです、この甘いのが活力なんですよ」

ニコニコしながら芽衣が答えた

すると芽衣のスマホに着信がきたのか

「真樹人さん、ごめんなさい」

一言謝り電話にでると難しい顔して受け答えをしていたので真樹人が芽衣に少し離れていると指でジェスチャーをすると芽衣は身振り手振りで謝罪をしていた。

真樹人は観光客をかき分けビルとビルの隙間の日陰に入りソイラテを飲むと真樹人のスマホにも着信が入る

表示は見知った名前だった


「おはよう、何かひっかかった?………うん……うん……そっか………そのデータ送ってくれない?……」


電話を切るとすぐさまデータが送られてきた

送られたデータを開くと


1997/10/2

住吉町海岸付近で地域の男性が散歩中に遺体らしき物があると通報、警察が駆けつけ確認すると顔の損傷が酷く手足が欠損、腹部の一部がない遺体を確認

司法解剖へ


解剖所見

身長178cm前後、体重約74kg前後

死因 溺死

肺の中に大量の海水

欠損部分多し、鋸歯状の歯が遺体に付着

恐らく転落後にサメに襲撃されたもよう

顔の判断不可

微かな歯の治療痕からあたるも該当者無し

所持品も財布と現金のみで人物を表す物は何も見当たらない……


後日、男性が1人で船に乗り込む目撃情報

目撃情報を元に海域を捜索、一艘の無人プレジャーボート発見

所有者名 砂川 晃 (事件当時海外旅行中)

後日 所有者 砂川 晃から話を聞きに行くも渡航先のベトナムのタンソンニャット空港での目撃を最後に行方不明



ーなんだこのデタラメな検案書はザルすぎるだろう…ー


「ごめんなさい!患者さんから電話が来ちゃって…」


じっとスマホの画面を見ていると芽衣の声で我に帰る

「ん?患者さんから?そんな事あるの?」

ため息混じりに芽衣が答える

「うん、心療内科にかかってる人でね…「昨日もらった薬が足りない」ってね、処方分渡してるし付き添いの人にも確認してもらったんだけどね…解決したから大丈夫!いこ!」

そういい芽衣は真樹人の手を引き駐車場へ向かった



ーーーーーーーーーーーーーーーーー


那覇市某所


恰幅のいい男が咥えタバコをしながら長身の男が帰ってきたのを出迎えた

机にはいくつかのナイフや拳銃、SMGが並んでいる


「おう、お疲れ。ここの隠れ家いいだろ?いつもと違ってベッドがある、ここは米軍がいるから調達も楽だったわ、好きなの持ってけ」

長身の男がそれに応える

「ありがとうよ、それで?お前の方は何かわかったか?」

「俺はあれだよ、隠れ家やら何やらを…」

「どうせどっかで遊んでたんだろ?口紅が付いてるぞ…ったく…そんなこったろうと俺の方で失踪したウエハラを調べた、そしたら26年前に突然と消えてた人間がいる…これ見ろ」

長身で足を引きずる男がスマホを見せる

「お前すげぇな相変わらず、よく見つけたな。…なになに…顔がぐちゃぐちゃで手足が一部無い遺体?あっはっは!なんだこのいい加減な検案書は?どうせ圧かけて死んだ事を有耶無耶にさせたんだろ?」

「で?相変わらずお前は聞き専か」

尋ねられた男はタバコに火をつけながら

「俺、聞く人、お前喋る人」

「…いつもこれだ…ほらよ」

長身の男は呆れ顔でスマホのデータをノートPCに転送し画面を見せた、映っていたのは端正な顔立ちで嫌味のない笑顔の男、画像の下には詳細があった

「じれってぇな、これがなんだよ」

「上原 誠二、出身はここ沖縄。失踪事の年齢は37歳、失踪2年前、こいつは県議会議員の新人候補として基地建設反対を掲げ当選、当選前は基地反対派運動の中心人物で経歴は元軍人。元々沖縄は西と東の共同管理という特別な所だから入隊するなら東の幕府軍か西政府軍どちらも選べる、こっち出身の上原は特別推薦枠で幕府国防大に入学、在学中は常にトップ、そして卒業後に国防陸軍に幹部候補として入隊、そして情報収集部隊へ、ある任務の後に除隊、その前後だろう連中のスカウトは」

「任務?なんだそれ?」

「極秘任務で国防軍内部の秘匿扱いだ」

恰幅のいい男が咥えタバコを吐き捨て

「情報収集部隊の凧だったかもな…こいつは。それが嫌になって辞めた…。県議会議員にまだなったんだ、いなかったことにするには無理があるから痕跡を消せなかったか」

「俺は十中八九この誰かわからん死体が上原 誠二だと睨んでる。でもここで終わったら俺達が出張った理由がないからな、この上原 誠二を調べるため当時を知る反対派の奴らを探ったんだ、そしたら上原と仲が良かった女がいた、…名前は「上原 蓮」、身寄りとかはいない女だったらしい」

「なるほどね…ん?奴さん結婚してたのか?」

「いや、上原 誠二には結婚歴がない、恐らく「結婚してる」扱いにした方が何か都合が良かったのかもな」

長身の男がスマホの写真を切りかえ見せた

「いい歳した男女が兄妹ってなぁ…こんな島だと変に噂が立つより結婚してるって方が自然か。古い写真だな…こりゃ美人だ、ここから探るのか?歳の頃は…上原 誠二より若そうだな、30手前って感じか、だと今は…50過ぎ顔も老けて変わってるとしても…生きてるとは思えねぇけどなぁ」

「この女も足取りがない、まるで手品だ…その後それと思わしき死体も上がってない。上原 誠二が失踪扱いになり補選で基地反対派の急先鋒、上原の秘書だった男の「仲根 健太」が当選、そいつが2期県議をやって知事選に出馬して圧勝、5期連続だ、先日の県知事戦も勝ち6期目だ。もう確定だろ、例の「アレ」の信憑性は。上原 誠二が消えた後に事態はどんどん歯止めがなくなった。どこかの段階で上原 誠二が邪魔になった…「アレ」を送ったのは上原 蓮だろう」

「らしくなってきたな〜でもよ?実際写真はあったんだ、幽霊じゃねぇって事は確かだな。出鼻折って悪ぃけどよ?上原 蓮って偽名だろ?」

「お前もそう思うか?」

「当時、上原 誠二は上原 蓮を人目につかせないように隠し、後々彼女を何かに利用する為に自分がいた基地反対派に紛れ込ませた。基地反対派には警察だってそう簡単に踏み込めないうえに警察が来たら他の反対派メンバーが妨害するだろ、人を隠すには持ってこいだ、頭のいいやり方だわ。それを探れるか?」

「任せろ。あとこれ見ろ」

「あ!コイツ!こっちに来てたのか…それにこの女は…?」

「このタイミングでコイツが沖縄に来てる、付き人無しで1人で、偶然と思うか?」

「んなわけ、わーったけどよ?コイツらがどこにいるかわかんねーんじゃ話にならねぇ」

「もう尾行させてる、連絡してみろ。あの男の鼻は鋭い、一緒に写ってる女は上原 蓮に繋がる何かが必ずある、頼んだぞ」

「りょーかい、しかしどうやって…俺たちの先を行くとは恐れ入ったわ、アイツも分家にするか」

「バカ言ってる暇あったらさっさと行け、分家」

「バカでも言わねぇとやってらんねぇよ、お前は何すんだ?」

「偽名の線を含め上原 連を探ってみる、実在はしたんだ、殺人、行方不明でダメだったからな。今度は事故、自殺、病死と広げてみる。それと気をつけろよ?」

「何がよ?」

「俺たち以外にも上原 誠二を探してる連中がいる」

長身の男は机から小型ナイフとハッシュパピーと弾倉を3本手に取りながら答えた

「だろうな、元々知事宛に届いたもんをこっちが勝手に調べてるだけだ、ポリか内調か?奴らじゃねぇだろ?」

「あぁあれは傭兵だ、九州内乱の溢れた連中だろ、用心に越したことはない」

「なんだよ、心配してくれるのか?」

「まぁな、お前がいなくなったら酒飲む相手がいなくなるからな。…尾行しな…」

「パスパス!尾行しながら人調べとか無理無理、じゃあな」

「ったく…そんなに俺を使うならお前が宗家をやれよ」

「ばぁーーか!適材適所だわ、いつも言ってるだろ?お前の方が顔が効くんだしよ!」

そう言い終わると恰幅のいい男も用意した武器の中から拳銃を選び腰に装備して部屋を後にした








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