第6話

運転手に声をかけてアサノホテル正面玄関口近くにタクシーを停める

「明日よろしくお願いね」

「承知しております、8時半にお迎えにあがればよろしいですね?」

運転手が真樹人の顔も見ずに確認したので真樹人は

「そういうのは人の目を見てするもんだよ、名前、無線番号、乗務員ナンバーも覚えたからね。もし反故にしたら…」

真樹人はタクシーカードをペラペラさせながら言うと運転手は背筋を伸ばし

「し、失礼致しました!キチンとお迎えにあがります」

「わかってくれて嬉しいよ、代金は俺が払うから彼女を載せて降ろしたら待っててくれないかな?遠回りした事を大目にみるからさ」

運転手は顔面蒼白になり真樹人の顔を見られない

「気が付かないと思った?まぁいいよ。観光客カモるのも大概にしておきなね」

そういいカードで支払いドアを開けさせて外へ

ホテルはすぐそこなのに真樹人は何故か反対の方向へ歩いていった

人通りが少なくなる方へ歩き何かを感じたか横の細道へ

するとタイミングを遅らせ2人の男が細道に曲がってきた


「あ!どこに!」

「まかれ…」

2人の男が辺りを見回していると闇の中から掌底が飛んできて男の一人を吹っ飛ばす、そしてもう1人の右手を掴み関節技を決めて壁に押し付けたのは真樹人だった


「誰に頼まれた?下手な尾行しやがって…誰?君らは?」

「イダダダダダ!離せ!離して…」

「誤解だよ!俺たちはアンタを守るように言われたんだ」

鼻血が出ている鼻を抑えながら吹っ飛ばされた男が真樹人に近寄った

「守る?なんだお前らは」

「中村組のモンです!アンタがちょくちょくこっちに来てる事をオヤジが知ったので…オヤジからガードしろと言われて!頼むから離してくれ!」

真樹人は間を置き力を弛めた

「必要ないって伝えておいてよ、自分の身ぐらい自分で守れるから」

「でも…なんで…名前……」


バチン!

腕を離した男の顔面に強烈な平手打ちし男の腰にしまってある38口径のリボルバーを真樹人が瞬時に奪い男に向ける


「よく動く口だな、俺の事…そんなに知りたい?」

銃を奪われた男は鼻を抑えながら

「ちょっと!やめてくれよ!悪かった!悪かったよ!」

関節を決められた男も

「ま…!戸平さん!勘弁してください!本当に!」

と二人して真樹人に懇願すると


カチャ…

真樹人はハンマーを起こし男の眉間を狙う

「ちょ!ちょ!待っ!ごめんなさいごめんなさいすみません」

「本当にすみませんでした!勘弁してやってください!」


暫しの間


カチャ

真樹人はハンマーを元に戻し銃を男に返し笑いながら


「冗談だよ、冗談」


二人の男は腰が抜けたのかその場で崩れ落ちた

「勘弁してくださいよ…本当に…」

「いくつか聞かせろ、なぜ俺に何かが起こるかもと組長さんは思った?それともこれから必要になる状況になるかもしれないってことか?」

男2人を見下ろしていた真樹人だが腰を下ろし目線を合わせると2人はお互いを見合い1人が口を開いた

「実はこことこ妙な連中が街をうろつきはじめたんです」

「妙な連中?」

「はい、人を探してるってウチのシマの飲み屋で聞きました」

「誰を探してるの?」

「たしか… 「ウエハラ セイジ」とか…」

「ふーん…君らはそいつ知ってるの?」

「いや、俺たちは…なぁ…」

「…なんか聞いた事ある名前なんですが…全然覚えてないんす」

「君たちは探さないの?」

「オヤジから何も言われてませんので…戸平さんは知ってるんですか?」

「さぁ…どうだ…ゲホッ!ゲホっ!」

「大丈夫っすか?!」

咳き込んだ真樹人は口を抑えながら

「いいか?その件と俺は無関係だ、今後俺に人を寄越すなと組長さんに伝えておけ、じゃあな。今度その面を俺に見せたらどうなるか想像しとくといい、わかった

それだけ言うと口を抑えながらホテルへ帰っていった


体に痛みが走る


…俺は倒れる訳にいかない…


そう自分に言い聞かせホテル入口をくぐり必死で平静を装いフロントで鍵を受け取りエレベーターで818号室へ


ーこういう時はやたらとエレベーターが遅く感じるなー


エレベーターのドアが開き818号室へ

ドアの下に紙が挟まっていたので拾い部屋の中へ入りボディバックから薬を取り出し冷蔵庫のお茶で流し込みそのままソファに倒れ込む


ーイメージだ…薬が消化され効能が行き渡るイメージ…それだけでだいぶ変わるー


痛みが引くと落ち着きを取り戻し真樹人は先程拾った紙を広げるとそこには


「シニタク ナケレバ ヤマシロ メイ ニ カカワルナ 」


新聞文字を切り取った脅迫文だった


目を通した後に真樹人は脅迫文を丸めてゴミ箱へ

「テンプレ脅迫文か、ド素人丸出しだ。さて…藪の中から出てくるのは…」

そうボヤき真樹人はノートPCを開くと凄まじいスピードでキーボードを打つ


「侵入…保安警備室っと…今日の録画は…」

真樹人はホテルのシステムに侵入し録画データを漁る

「コイツ…か?…死角を移動してる…まぁいい…か」

スマホをいじり発信

「もしもし?僕の所に脅迫文が来たよ。………全然…平気さ、あ!君だろ?こっちに来てる事……困るよ…ったく………ん?あぁ調べた。死角を上手く使ってる……うん……そうそう、「ウエハラ セイジ」を嗅ぎつけた連中が出てきたよ………あーストップ、説教はごめんだよ。……で?君の見立ては?………うん…………んじゃ」

スマホを切りソファーに移動して天井を見上げ考える


ーこの脅迫は… …?俺を消す気なら…こんな面倒なことはしない、彼女は知ってるのか?……駆け引きができるタイプじゃない…なら彼女を手にかける為?…ならもっと早く力技でどうにでも…と…なると…あの脅迫文は…ー


考えがまとまらないので顔を軽く2回叩きシャワー室へそして鏡を見て言い聞かす


想像以上に根が深い


でもこの根に繋がるヤツを


俺が引きずり出す


このロスタイムが続いてるのは全てを終わらせる為だ


知らない所で物事を勝手に決め人に痛みを与える


未来にそんな事は必要ない


そう自分に誓い水のシャワーに身を委ねた















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