第2話
薬局を出た後、戸平は気ままに車を流し偶然見つけたビーチの看板を見つけ整地されていない道を走り海へ
そこは管理ビーチではないが人は少なくゴミも無くとても綺麗な白い砂浜とエメラルドグリーンの海だったので思わず声にだしてしまった
「うわーーー!すげーーー!めちゃくちゃ綺麗だ!」
誰も居なかったので車を少し乱雑に停め走って海岸まで行き砂浜へ
「凄いなー!真っ白な砂浜で海が蒼い!全然向こうと遜色ないよ!」
そういい波打ち際まで足を進めると行き過ぎたのか波で足首まで水がきた
「うひゃーーーつめてぇーー!でも気持ちいいなぁ」
戸平は子供のようにはしゃいだ
そして写真を取り出し
「いつかみんなで来たいな…でも隠居爺さんみたいな事に付き合わせたら悪いよな」
そうボヤキ写真をしまい遠くの水平線を見つめ思いにふける
ー来たがった島、綺麗だよ、本当に…ー
戸平が目を瞑るとその目のはたにはうっすら涙が溜まっていた
ーお前はまだ来んなって言いそうだけどそろそろだよ。殴られそうだけど変える気はない、というより今更自分の生き方なん……ー
「ゲホッゲホッ!!」
深い咳し手を当てると手に赤い鮮血、その血は戸平を現実に戻すには充分な物、口を拭い痛みを堪え波打ち際から上がり海を見つめ両手を合わせた
ーそっちに行ったら沢山怒っていいからー
車に戻り足やサンダルについた砂を払いエンジンをかけると暑かった車内にエアコンの冷気が充満する
病のせいか体に痛みが走り常備していた薬を助手席のボディバックから乱雑に取り出して口に放り込み地産のお茶で流し込み痛みをひかせる為目を瞑りしばらくすると夢の世界へ
ー………1回行ってみたいんだよ!ー
ー行きたきゃお前と………で2人で行ってこいよー
ーバカだなぁ〜……も行かなきゃ意味ないんだよー
ーなんだそれー
ーあの海の綺麗さを見たらきっと好きになるって!それに独特のラーメンとか食いもんも多いんだよ、チャンプルーっていったかな…色々炒める料理もあるんだぜー
ー俺が食い物に興味ねぇの知ってるだろ?もう少しまともにプレゼンしたら?それにお前だって行ったことないだろ?行ったことが無いやつがなんか言ってもな〜ー
ーうるさいな!行くって決めたら行くんだよ!ー
真樹人は車に打ち付ける大量の雨音にハッと目を覚ますとあたりはスコールだった
「ったく…いい気持ちだったのに…起こすなよ…スコールか…どうせなら全部流してくれよ。……待ち合わせもあるからホテルに戻って車を置くか…」
真樹人はエンジンをかけて車を発進させ那覇方面へ、平日のせいか道路は空いていたが先程のスコールのせいか道路は濡れていた
チラホラ「Y」ナンバーの車を見かけるとここが約50年前まではアメリカの領地として統治され返還されてもなお基地が点在しその基地関係も込みでこの島は成り立っていると自覚する
市内はそこそこ道が混みあっていたがホテルへ難なく到着
地下駐車場に車を停めてフロントで預けていたルームキーをもらい818号室へ
ドアを開け乱雑にボディバッグと帽子をソファ置きに空のペットボトルを捨てて冷蔵庫からキンキンに冷えている地産のお茶のペットボトル開けて口に流しかけていたサングラスをテーブルに置いた
ー美味いなぁ、向こうでも売ってないかなー
表示を見ると
「地産地消品」の文字
「そうだよな…地で産まれた物はその地で消費すべきだよ」
少し肩を落とすがペットボトルを冷蔵庫にしまいシャワー室へ、人と会うので汗を流す
真樹人が服を脱ぐと体は傷が多かった
鏡で見ると何故か笑えた
もちろん嬉しい楽しいという笑いではない
己が酷く滑稽に見えたのだ
表面は傷だらけ…今では内蔵も蝕まれている
真樹人は鼻で笑い
「さながらロスタイムか…」
そう呟きアタマからシャワーを浴びる
冷たい水のシャワーで頭皮と体の汗を流し備え付けのシャンプーで髪洗った後ボディソープを軽く泡立てて体を洗うとき傷跡を自分の手でなぞると今度はうっすらと涙が出た
身体の傷は真樹人の心が削れた証のようなものだからだ
俺は何故生まれた…
人生は因果応報と言うが俺が何をした…
そうするしか無かった…
それが俺の罪であり罰なのか…
ふざけるな…
「神は乗り越えられない試練を与えない」
なんて言う奴は本当の絶望を知らないからそんな事言えるんだ…
あの世も地獄も無い…
死んだら待っているのは「無」だ…
シャワーを止めてバスタオルで全身を拭き真樹人はガウンを羽織りバスルームを出てテーブルにあるノートPCで調べ物をする
夢中になっていたのか我に返ると時間は16時半を回っていた
「こんな時間か…待たせる訳にはいかないな。さて…そろそろ支度するか」
ノートPCを閉じ歯を磨いて顔を洗いスーツケースからお気に入りのMLB柄のポロシャツに袖を通し別のハーフパンツを、そして香水を少し己に振り撒きホイヤーの時計と薄色のサングラスを身につけ鏡の前で服を少し直すとスマホに着信があった
「もしもし…あぁ…うん…今のところはね、あとは………かな………いつも悪いね、ん?………はは!分かった分かった、なんか泡盛でも送るよ………それじゃあ」
スマホを切り真樹人は部屋を後にしたのだった
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