春嵐
夢の中はいつも曇っていた。
せっかく夢なのだから夏のように美しい晴れた空を見せてくればいいものを、夢を見るなと言わんばかりにいかにも低気圧らしいどんよりとした重い空気を漂わせていた。
現実もまた同じように感じた。
列を乱さずずらりと並ぶ美しい桜並木も、曇の中では映えることがない。
そしてその乱れなく咲いている桜の中でも、私はまっさきに花弁を散らし、早々に葉桜となってゆく、そんな桜であろう。
他が春嵐に合わせて立派にも美しい花吹雪を披露する中、私は鬱陶しいと言わんばかりに散り切った枝や葉をガサガサと無意味に鳴らすことしかできない。
人の喩えは業だ。
桜はすぐに散ってしまうから短命の象徴などと言われるが、べつに花弁が散ったところで枯れるわけではない。
ただ散ってしまったら、他の木と同じように振る舞わなければならず、それをずっと強いられるのだ。
出る杭を打つ。しかし桜は柔らかい。
折れやすく割れやすいその桜を、はて儚いと言うべきか。
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皿の上の脳みそ つきみなも @nekodaruma0218
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