2話 財布
人は皆詐欺師だと思っているし、置き忘れの財布は瞬く間に消えると思っている。
本来信じるべき関係であろうが財布は隠す。
恐らくそれが恋に落ちようかとする相手でも同じであろう。
何かしてあげるときには信用代として金銭もしくはメリットを要求する。ツケあがられたら不利になると、子供の頃に策定した決まりに則って要るゆえに。
幼き頃は財布を置ける余裕はあったし、貧しきに分け与えよというキリストの教えも信じれる気持ちはあった。
しかしつけあがられてからは財布のがま口に南京錠が付き、どことも知らぬ金庫に放り入れられた。
財布はもう開かないし、私自身も中身を知ることはできない。
いざ知ろうにも、金庫の暗証番号と南京錠の鍵は恐れすぎて捨ててしまった。
いつか人前に財布を置ける人間に戻れるのだろうか。
しかしそれは、腕を失った人間から腕が新しく生えてくること同じなのかもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます