第8話 宣戦布告
「やー、久しぶりに来た気がするー!おばあちゃん、やっほー!」
タカヤ服店の店内に、お姉ちゃんの元気な声が響き渡った。
そう、あたしたちは今、高谷のおばあちゃんのところ……正式な名前で言うとタカヤ服店に来ている。理由は簡単、お姉ちゃんの衣装デザインを進めるため。
「まなちゃん、えっちゃん、あいちゃん、よう来たねぇ……」
レジ前に座ってのんびりと話すおばあちゃん。確かに久しぶりに来た気がする。
「えへへー、また来ちゃったよ、おばあちゃん!元気してたー?」
「わたしゃいつでも元気だよ」
「そう?ならよかった!ねーねー聞いて、この間入学式があったんだよ!」
「まあ、まなちゃんももう高校生か…大きくなったねぇ」
……ちょい。
「お姉ちゃん!お姉ちゃんのために来たのに、お姉ちゃんがおばあちゃんと喋り続けてどうすんのさ!」
さすがにツッコミたくなったよね。そもそも衣装関連はお姉ちゃんの担当なのに、お姉ちゃん、このままだったら門限までおばあちゃんとのんびり話してそう。
あたしの言葉にあ、そうだった!と言うような顔をして、「ゴメン、おばあちゃん!また後で話そー!」と言い、服を物色し始めたお姉ちゃん。ちなみに、愛里はというと、もう既に何着かアイドル衣装に使えそうな服を見繕っている。あ、あのワンピース、可愛い……
「いっぱい見ていきー」
おばあちゃんののんびりとした声が店内に広がった。
うーん。あたしも見た方がいいかな?正直よくわかんないけど……
あ、あたしは手芸店行ってみようかな。ヘアアクセサリーくらいなら作れそうだし、この店は服専門だからアクセサリー系はないし。
「お姉ちゃん、愛里。あたし、あっちの近藤手芸店行ってくるね」
あたしがそう告げると、お姉ちゃんと愛里が揃って「はーい」と言った。
という訳であたしは近藤手芸店の前に来たんだけど……あの子がいる。
そ°う、あたしに……というか、あたしたち田上三姉妹に宣戦布告してきた、ゆりかちゃんだ!誰かと話している。いや、敵対心とかはないけどさ……
すると、ゆりかちゃんがふっと顔を店の外へ向けた。げっ、バレる!?
そう思いながら店の中を見ると、ゆりかちゃんが笑顔で手を振っていた。あー、気付かれたー……
ん、でも、なんでゆりかちゃんがいるんだろう?ゆりかちゃんも衣装とかの準備のために来たのかな?
なんて考えてたら……
「えまちゃん!」
「わっ!ゆりかちゃん!」
いつの間にかゆりかちゃんが目の前に来ていた。めちゃくちゃビックリしたし……
「ねね、えまちゃんは何をしにきたの?」
驚いた声をすっと流し、質問してきたゆりかちゃん。この子、わりとズバッとくるなぁ…
そんなことを考えつつ、あたしは言った。
「いやー、ヘアアクセサリーとか作れるものないかなって……」
そんなあたしの答えを聞き、ゆりかちゃんは「もしかして、ハイドラ用?」と尋ねてきた。あたしがうん、と頷くと、ゆりかちゃんは言った。
「そうなんだ、やっぱり!あのね、私もハイドラの準備のために来てたんだよ!あ、紹介するね、あのレジの前に座ってる、髪の長い女の子が近藤玲那。私が組もうと思ってるチームの一員なの」
そう言われて店の中を覗き込むと……うむむ……れなちゃんは可愛い子だった。
「そうなんだ…ちなみに何人グループなの?」
あたしが聞くと、ゆりかちゃんはニッコリ笑って、「8人よ」と言った。
「私たち、中学の時から仲良しで、高校に入ったら絶対ハイドラに出ようねって言ってたの。私たちみんな同じ高校に入れたから、これはもうやるしかないよねって言ってるんだ。だから、えまちゃんには負けないよ」
そう言ったゆりかちゃんは、あたしにはとっても眩しく見えた。
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