第7話 衣装作りは大変?

「はい、えま姉」


そう言いながら、愛里が自分のケータイを絵愛に差し出す。「ん?」と絵愛が言うと、


「曲だよ。メロディをアカペラで歌ってみたの。録音データ送るからケータイ開いて」


と愛里が言った。

すごい、もうそこまで作っちゃったんだ。さすがだなぁ。


……私はというと。

机に向かい、スケッチブック(これはちなみに愛里の。アニメっぽい絵がいくつか描かれている)の上にシャーペンを置いていた。


んー……進まないなぁ。

世の高校生アイドルたちはどうやって衣装を考えてたんだろ……それに衣装代とかもかかるし、どうやってやりくりしてたのか……


考えれば考えるほど謎が深まってきたよ……


「うーん……わかんない……」


私が机の前でうんうん唸っていると、絵愛が「お姉ちゃん、良かったらこれ、見てみる?」とケータイを差し出してきた。


「ん……これなに?」


私が聞くと、絵愛は


「なんかねー、昔ハイドラの決勝戦まで進んだ人のサイト。色々載ってるから参考になるかも」


と言った。

へー……なんかいいね、そうやって引き継がれていく感がめちゃくちゃいい。それこそ伝統ある(まあ始まったの10年前くらいだけど)ハイドラっぽくていいじゃん!


そう思いながら、絵愛のケータイでそのサイトを見てみると。結構いっぱい項目があったから、私はとりあえず衣装の項目を見てみた。


衣装の項目にもいっぱい記事があって。

衣装のデザインの仕方、可愛いフリルの付け方、規約違反になる衣装の例、靴の使い回し方、基本的な縫い方、県別お安く買える衣装生地&古着。しかも、それだけじゃなくてまだまだある。


凄いなぁ……特に、県別の項目なんて調べるの大変だっただろうな……

てか、あれ?


「既製品って使っていいんだっけ?」


私が呟くと、呆れ返った顔をした愛里が言った。


「アレンジしたら、ね。さすがに一から衣装を作るのは大変だし、やり方がわからない人とか縫い物が苦手な人は大変でしょ?だから、飾りをつけるとかでアレンジを加えたら既製品を使っておっけー。ていうか、最近の高校生アイドルは基本既製品のアレンジだと思うよ」


へー。よく知ってるなぁ。

でも、既製品を使っていいならだいぶ楽になるね!それだったら……なんなら、今から古着屋さんとか行ってもいいかも。


「ちょっとさー、絵愛、愛里。私、今から高谷のおばあちゃんのところ行くんだけど、二人も行く?」


高谷のおばあちゃんは商店街でお店を構え、安い服や古着を売ってる人だ。ちなみに、私たち3人の家は漬物屋で、高谷のおばあちゃんと同じ商店街に店がある。というか、店の2階・3階部分が家なんだけどね。


そのお陰か、私たち3人は商店街のおじいちゃんおばあちゃん、おじさんおばさんにとても可愛がってもらっていた。おまけしてもらったり、お菓子もらったりするくらいにはね。


で、そこだったらいい感じかなと。昔はおばあちゃんっぽい服ばっかりだったけど、おばあちゃんの孫の結子さんが帰ってきてからは若者からも人気を集めている。何せ安いもんね。


とりあえずそこ行って、それから衣装は考えよっと。衣装のデザインだけ先に終わらせてて、結局イメージに合うような服がなくてデザインし直し、なんてことになったらそっちの方が面倒くさいもんね。


そう思いながら、私たち3人はそれぞれ出かける準備を始めるのでした。

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