第4話 応援ソング!?

「「応援ソングぅ?」」


愛里の提案に、私と絵愛の声が重なった。さすが姉妹…というか三つ子だけど。息ピッタリだね。


じゃないよ!そんなことを言ってる場合じゃなーい!


「ねえ、愛里。なんで応援ソングなのさ?」


絵愛が愛里に向かって言う。そう、私もそれが言いたかったの!


別に、応援ソングが嫌なわけじゃない。普通に好きだけど、なんで応援ソング?愛里のことだし、何となくで決めたとは思わない。何か理由があるはず。


私たちの反応にびっくりしたのか、愛里が、目を瞬かせながら答える。


「愛里たち、まだ高校入ったばっかでしょ?そりゃ今日が入学式なんだから当たり前だけど。で、アイドルを始めようとしている。そんなときにいきなりアイドルっぽい恋愛ソングとか歌うよりも、応援したくなるような歌がいいかなって思ったの。それで、応援ソング、なんなら初めて何かに挑戦する人に向けた応援ソングだったら、皆、自分の背中を押してもらえるように感じるんじゃないかなって」


アイドル初心者が歌う、応援したくなるような応援ソング……


「なにそれ、めっちゃいい!最高じゃん、天才!」


最高すぎるよ、愛里!やっぱり本を沢山読んでる文学少女はひと味違うね!


私が褒めまくったからか、少し照れながら愛里は「そんなに言う程じゃないけどね……」なんて呟いている。


「いや、でも、いい意見だと思うよ。共感も得られそうだし、アイドル初めてやる人がいきなりアイドルっぽい歌を歌ってもえ?ノリにくい……ってなるだけだし」


と絵愛も賛成している。だったら、


「よーし、決まりだね!じゃあ次は誰が何を作るかの担当を決めよう!」


って言っても、私何も出来ないけどさ……


「愛里、歌詞なら作れるよ、多分。あと、メロディくらいなら作れるかな?」


と愛里。すると絵愛も、


「じゃあ、あたしダンスと曲の仕上げするわ」


と言ってくれた。絵愛は小さい頃からダンスを習っていて、すごく上手い。ついでに言うと、絵愛と愛里は二人ともピアノを習っているから、作曲は二人に任せられるかな?愛里は本が好きだからたくさん言葉も知ってるし、適任だね!


「じゃあ私衣装作るー!作ったことないけど」


と私が言うと、どうぞどうぞと言いたげな顔で二人がこっちを見ていた。あー……

絵愛は料理の方が好きだし、愛里に至っては裁縫も料理もしない。姉に任せておけばいいと思ってるのかな。末っ子らしさが出てるなぁ……


「じゃあ、早速作ろっか」


と意気込んで言った私の肩をぽん、と叩いたのは、絵愛。


なんで?

というのが顔に出ていたのか、絵愛はやれやれと言いたげな顔で言った。


「その前に……体力作りもしなきゃ。あたしはともかく、お姉ちゃんと愛里は運動してないよね……ていうか愛里!ちょっとは動けヒキニート!」


ちょ、絵愛、ヒキニートは言い過ぎでは……確かに愛里は三つ子の中でも群を抜いて動かないけどさ。常に布団の中にいて、布団と結婚するー!とか言ってるけどさ。


案の定、頬を膨らませた愛里に反論された。


「あのね、えま姉!愛里はヒキニートじゃないよ!そもそもニートの定義は学校にも行ってない、仕事もしてない人で、さらに職業訓練とかも受けてない人のことなの!学生の愛里はニートじゃない!」


いや、そこー?ツッコまなくていい、これ…


でも、このまま話してたら埒が明かないから、しかたなく私は手を叩き、二人を黙らせた。


「はいはい、ちょっと静かに。絵愛の言う通り、歌いながら踊れるくらいの体力をつけないと、どれだけ曲が仕上がっていても意味ないよね。てわけで、はい、絵愛!練習メニュー考えてね!」


いいことを言ったふうにまとめながら、最終的には絵愛に押し付けるという我ながら酷いやり方……だけど、私分からないもん!


絵愛は何か言いたげな顔をしたけど、諦めたように溜息をつき、一転変わってニヤリとして言った。


「あたしに練習メニューを作らせるんなら……覚悟は出来てるよね?」


……ん?なんか悪寒が……

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