第14話 一難去って・・・
改めて巨大な海月と対峙する。見えている反映だけで数メートルはあり、顔がないので正確には分からないけれど刺すような
「イカじゃないのね」
そう、それ!!ぼそりと呟いた回復士さんの一言に猛烈に頷きたい!視線外すの危ないからできないけど!
ここはダイオウイカとか、クラーケンなのがお約束でしょ?!とは思うが、この海月はクラーケンよりも質が悪い。
触手はイカより多い上に、毒を持つ大針がある、強いて言えばなんで海から出てるのに乾燥しないんだ、くらい。
とは言え、所詮は水性生物、火と雷には弱いだろう。
「相手はデカいけど、落ち着いて行こう。
近接は牽制中心で、チャンス見逃さないように。
アリスと回復士さんはバリアと解毒、状態に注意。
狩人は嫌がらせを盛大に、奴の気を逸らして、魔術士がメインアタッカーだ」
「ラルク、
「了解、
ラグナは保留、最終手段!」
「おっけー!準備完了、いつでも展開いける!」
「戦闘開始!」
ラルクの号令と共にバリア展開、全員が攻撃に移り、私は続けて敵の防御低下を、ラルクがダメージアップを入れる。
更に全体にバフを乗せて、全員で全力攻撃をしながら様子を見つつ、敵の攻撃に対処しながら討伐を行う。
大丈夫、いつもの通りにやればいい。
海月はキイイイイイィィィとしか表現出来ない耳障りな声を上げて、私たちに殺意を向けてくる。
「やばい」、言葉になる前に身体が動き、みんなの中心に走り込みドーム状の結界を張る。
それでも足りないので、バリアを重ねがけしたその時、海月から毒針が雨のように降り注ぐ。
お箸のサイズの毒針の半分以上は結界に防がれたけど、残りは結界を貫通して私たちに降り注いだ。バリアで多少威力を緩められたけど、その内1本が腕を貫く。足に降った物はブーツが防いでくれたけど、痛い。
「つぅ・・・」
思わず痛みに呻いてします。でも、ここで止めたら全滅だと自分を鼓舞してヒールバフとバリアを再度張る。
毒は回復士さんが解毒し、ラルクが全員のダメージを回復すると痛みも消えた。
何度目か分からないけど、ここは本当に現実なんだと思い知る。ちょっとの被ダメくらいとか言えない、痛い、辛い。涙出る。
私の役目はバッファー、1人じゃ大したことは出来ないけど、みんなの助けにはなれる!
あの海月は許さない、絶対討伐する!!
「アリス!」
「大丈夫!あいつ疲労してきてる、針の雨はきっと消耗激しいんだと思う。でも次はあの針の雨は通させないから、その後がチャンスだよ!
あいつが我慢しきれなくて針を降らせたら全力で叩いて!」
付かず離れずの距離での攻防を続け、とうとう音を上げた海月は、私たちが待っていた針を降らせようと・・・した!!
「三重詠唱
「いい加減にくだばりやがれ!」
「死ね」
全員の技が一気に海月へと襲い掛かる。邪魔な触手は全て切り払われ、風を纏った一撃必殺の矢が中央を貫き、黒炎と光線が全身を焼き、最後はとどめと頭上から槍が貫くようにが突き刺さる。
轟音と共に霧が吹き飛び、ようやく視界が戻ると槍を突き刺した状態で海月の上で仁王立ちする槍術士がニヤリと笑っていた。
海月を倒したせいか、辺りの霧はすっかり晴れていた。
ようやく表れた青空にホッとしつつ、周囲を確認すると幽霊船と衝突した私たちの船の被害はほぼないようだった。幽霊船の腐食が進み過ぎて、脆かったのが幸いしたのだろう。
ただし、問題はまだ帆先が幽霊船に埋まっている事と、その幽霊船はちいさな小島に固定されていることだ。
この小島は浅瀬に囲まれているようで、周りにはいくつもの難破船があった。確かに船員たちもこの辺りには海の難所があると話していた記憶はある。
そして、今いる幽霊船からそのまま上陸できる先には洞窟が口を開けており、空にはハルピュイア、海にはセイレーンがこちらを見ていた。船に戻ろうにも彼女たちは逃がさないと視線で言っている。
セイレーンは会話ができる、話が通じる者も稀にはいるのだけど・・・ 見る限りはそんな雰囲気は微塵もない。
「逃がす気はないようね」
「そうだね、仕方ない・・・ みんな、行くよ」
他の船を巻き込む訳にも行かない、彼らだけでも逃げられるように距離を置いてもらっていたのは幸いだった。
それに、これはモンスター絡みの調査だから、それこそ私たち冒険者の出番でもある。最近はこの海域で遭難する事はなくなり、お互いに不可侵の不文律があったはずが、何故今回襲ってきたのかも調べる必要がある。
さっきの戦いで私は武力半減しているけれど、私の本職はみんなを助けることだから私自身の武力は減ってもまだ魔力はあるし継続戦闘可能だ。まだ、最後の切り札も残っている・・・ 私は、まだ戦える!
気持ちで負けない、と気を取り直してみんなと共に小島へと降りて行く。
ラルクを先頭に小島に降り立ち、洞窟へと続いている一本道をゆっくり警戒はしつつ進む。セイレーンたちもハルピュイアたちも私たちをじっと見ている。
いつ襲い掛かられるか分からない不安の中、ちょうど道の半分くらいに辿りついた時声をかけられた。
『止マレ。我ガ領域ヲ侵シ、我ガ民ニ害ヲ及ボシ者タチヨ』
声がどこから聞こえてくるのか判別できない、そこかしこから反響していて声自体も生き物の声のようには聞こえない。なのに圧倒的な
無意識に円陣を組み警戒するが、そんな私たちなどお構いなしに謎の声が続けて言った言葉に、私たちは誰も思い当たるものがなく唖然とした。
『ソシテ、盟約ヲ破リ・・・ 我ガ民ヲ操ラントシタ咎人ドモヨ、覚悟セヨ。
我、自ラオ前タチヲ滅シテヤロウゾ。
サア、我ノ元マデ来ルガイイ・・・ 歓迎シテヤロウ』
声が聞こえなくなると同時に、私たちを睨むように監視するように見ていたセイレーンやハルピュイアはみんな消えてしまった。
「セイレーンやハルピュイアを・・・ 操る?」
「そんなこと、可能なのでしょうか?」
信じらない内容だった。少なくとも私は聞いた事がなく、ラルクを見るとラルクも首を横に振っている。
「分からないけど、行かない訳にはいかないだろうね」
「誤解なら、誤解も解かないとね」
この調査の山場はまだまだこれからのようで、ちょっと心折れそうとか思うけど。私とラルクには待っている人もいるし、ここで諦める訳にはいかない。
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