第8話 結ばれた絆
お夕飯を食べた記憶はあるんだけど、気がついたら朝でした。
そして着替えさせられているのは、きっと使用人だろうなぁ、申し訳ない。
ぽや〜としてたら、ノックが聞こえる。
「はーい」
「おはよ、入っても大丈夫?」
「うん、どうぞー」
そっと入ってきたラルクは所在なさげにしていて、どうしたの?と聞くと
「アリスの部屋に入るの初めてだからさ」
「そう言えばそうだね!
ごめん、特に女の子らしくもなければ割と雑然としてると思う・・・」
「いや、本は多いのがアリスらしいし、過ごしやすくしてあるね」
「ふふ、ありがとう〜。朝ごはんでしょ?行こう!」
ラルクと朝食に向かった。
さあ、今日も忙しい一日が始まるけど頑張るぞー!!
◽︎◾︎◽︎
残り4日でマジで転移を繰り返しつつ全教会を巡った!やりきった!!!
毎日私がヘロヘロで帰ってくるのを見かねてか、3日目からメイドたちが帰宅した私の全身をマッサージしてくれるようになって、本当に至福の一時だった。
で、帰宅したんだけど、なんで女性使用人全員集合してるのかな??みんななんだか使命感に燃えているというか、気合入ってませんかね?
悪い予感しかしないんだけどぉ・・・。
「ただいま?」
「おかえりなさいまし、アリス様。首尾は問題ございませんか?」
「う、うん」
「ようございました。それではアリス様はこちらへ、ラルク様失礼します」
「えっ、ええ?!」
訳の分からないまま私は浴室に連行されて、昨日までの手入れとは段違いの事細かなお手入れをされた。
いや、あの、エステって疲れるものだったんだね・・・
ご飯は1口サイズのをメイドが口に放り込んでくれる、飲み物もストローで。至れり尽くせりなんだけど、優雅じゃなくて、なんと言うかベルトコンベアに乗せられている気分。
全てが終わって気付いたらもうお布団に入れられていた。
温かいアイマスクを載せられて、「お休みなさいませ」と言われた記憶はあるが、意識が戻ったら朝だった。
「うーん、よく寝た!みんな流石だなぁ〜後でお礼しない、と・・・」
バーンと扉が開き、またしても使用人全員スタンバイ。
「みんな、おはよう?」
「おはようございます、アリス様。
早速ですか準備に入らせていただきます」
「はい〜?」
「ささ、こちらです」
問答無用ですか?!朝からまたお風呂に突っ込まれ、全身マッサージ、簡単にベースメイク。
髪型とメイクの仕上げは衣装を来てからと、そのまま馬車に乗せられ気付けば式を上げる教会の控え室にいた。
控え室の中央には真っ白なウエディングドレスにベール!!
「うわぁ〜 素敵!!いつの間にドレスなんて用意したの?」
「ラルク様より、初日に伺いましたので全てアリス様のサイズで合わせていただきました」
「凄い、デザインも私好みのシンプルでトレーンが長いタイプ!
ベールもマリアベールにしてくれたんだねぇ、どうしよう嬉しくて涙が出る」
少し泣いてしまった私をメイドたちは優しくケアをしてくれ、ドレスを着せてくれた。
が、優しいのはここまでだった。
姿勢は正しく!ドレスが美しく見えるように!
口は大きく空けない!視線は少し下を向けて楚々と、歩く歩幅はもっと狭く、優雅に見えるように!
き、厳しい・・・注文多くないっすか?!
しかも、ドレスって窮屈で、重い・・・。
軽食が相変わらず1口サイズでぽいぽい放り込まれるんだけど、私は鳥のヒナかな?美味しいし、いいんどけどさ―――。
うちの使用人たちって優しいけど、杜撰だわ。え、主人に似たですって?やかましわい!
ど庶民で冒険者やってるのにお嬢様言葉とか恥ずかしくてできないよ!会社勤めしてたから、敬語と丁寧語ならできるけど!
そんなこんなしている内に時間は刻々と近付いて来て、らしくもなく緊張して来る。
こちらの世界に来て?飛ばされて?まだ1週間くらいのはずなのに、あまりに濃くて、重くて。
気が付いたら結婚する事になっていて、その事自体に後悔は無いんだけど、本当に良いんだろうかと漠然と不安にはなる。
ラルクの相手が本当に私でいいのだろうか?言ってはなんだけど、私は別にすごく上手かった訳ではない自覚があるし、ラルク自身にも言ったけどたまに大ドジやらかすし、男運ないし、自信がない・・・。
「アリス様」
「えっ?!どうしたの?」
「僭越ながら、我が主であるラルクさまはこの1週間とても楽しそうにしていらっしゃいます。
元々淡白な主人ではありますが、アリス様とご一緒に行動されている時は本当に楽しそうで、改めて感謝申し上げます」
「そんな、私の方こそいつも助けてもらっているよ!みんなにも、ラルクにも」
「それはようございました。どうぞ、今日は愛されている花嫁として、ラルク様と楽しい一日をお過ごしください」
「アリス様、おめでとうございます!」
「おめでとうございます!そして、私どもと生きて下さり、ありがとうございます」
そういって一斉に頭を下げるメイドたちに、驚き感動した。私はラルクと2人ぼっちだと思っていたけど、私の身内は、家族はこの人たちが居てくれるんだと思わず涙が溢れる。
「もう、折角みんなが綺麗にしてくれたのに、崩れちゃうよ」と泣き笑いで言うと、みんな「すぐ直しますよ」とか「花嫁の涙はまた美しいので大丈夫ですよ」と口々に慰めてくれる。
この人たちは、やっぱりもうNPCではなく、大事な友人であり家族だ。
教会のホール前の扉で待っていてくれたラルクもタキシードのような衣装を着ていて、様になっていて格好良かった。
「アリス!わぁ・・・・・・綺麗だ、似合っている。ごめん、オレ語彙力無くなる」
「ラルクが選んでくれたって、ありがとう、こんなに素敵なドレス。全然気付かなかった・・・」
「うん、オレの我儘だよ。時間がなくても、できるだけアリスの思い出になるような式にしたかった」
「めっちゃ感動してるよ、本当にありがと」
「うん、オレも嬉しい」
にこやかに待っていてくれた案内人の方が、式の進行が始まると教えてくれて、扉が開いた。
私たちの使用人たちと神官だけに見守られるお式は厳かで、ラルクと二人、ゆっくりと進む。正面には最初に祝福を授けてくださった神官様と、各協会の旗が並べられている。
「苦難の道を辿り、共に全ての祝福を授かった二人に
これ以降二人は夫婦となり、永遠の絆が結ばれ、引き裂かれることはない。
新たな夫婦に祝福を!」
「「「お二人の旅立ちに祝福を!」」」
私の知るウェディングとは違うけど、ラルクとの間に何かが繋がったのを感じる。これがこの世界の結婚、そしていつでもラルクが居てくれるという安心感が嬉しくて、また涙が溢れてくる。
そんな私の涙をそっと拭ってくれるラルクを見上げると、いつもの優しい眼差しに「素敵だね」と言うと「うん、幸せだね」と答えてくれる。
みんなに祝福されて、帰宅してからもご馳走を用意してくれていて1日大はしゃぎだった。以外にもセバスは泣き上戸で、素晴らしい結婚式だったと何度も泣いていた。
こうして私はラルクと夫婦になり、そして翌々日には東方へと向かう。
なにがあるか分からないけど、なにがあっても、ラルクと2人なら乗り越えられると信じて、私たちは前に進む。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます