第7話 とこしえなる契約
翌日早速私たちは海都にある
お互い実績も信用も高いので、間違いなく依頼が行くだろうと言われ、確定したらコールを貰うことになった。
東方へは船で片道10日ほどかかるようなので、少なくとも1ヶ月は留守になりそうだ。
転移スクロールは使えなかったので、恐らくここまでがゲームと同じでこの先は未知な可能性が出てきた。
ラルクとも相談して保険は万全にしようと話し、出発は先方の担当者の到着を待っているから、早くても10日はあるらしいので準備を始めることにした。
「貯金は大半をチェストに残して、手持ちに5000万ゴールド。あと換金出来そうなものや、何処でもある程度需要が見込めるアクセサリー系と布類。
薬の素材も持っておけば切れても大丈夫だし、食材もバッチリ。こんなもんかな?」
「そうだね、スクロール系も余裕があるし、大抵の事は対処できそうだね」
後はギルドハウスに残っている使用人たちと、ラルクの家に残っている使用人に、最悪全て放棄して私の自宅に避難するように伝えたし。
私の家は一見分からないけど、全力で防御に全振りして結界などを強化した。
大事なのはセバスたちの命なのだから、それ以外は放棄してもいい、生きていればまた手に入る物ばかりだから。
そう、良く良く言い聞かせたが、恐らく限界ギリギリまで粘るだろうことは分かっている。本当に有難いけど困ったさんですよ。
「よし、こんなもんかな!」
「お疲れ様〜」
私が色々まとめている間もラルクはどこか心ここに在らずだったので、つついと近寄ってほっぺをみにょーんと伸ばしてやる。
「ふぇ、ひょ、ひたひよ?(え、い、いたいよ)」
「痛くしてるんだもん」
ぶーっとむくれる私にラルクは苦笑して、手を放させつつよしよしと頭を撫でてくる。
「ごめんね?」
「やだ。ちゃんと話してくれないと、私は察知能力低いから分からないよ・・・」
珍しく、ラルクが即答してくれない。
本当にどうしたんだろうか?
ラルクの方を見ると、困った顔をしていて、なにが彼をそんなに悩ませているのが分からなくて不安になる。
「大丈夫、アリスを悲しませるものではないよ?
ただ、困らせてしまうかもしれないんだけど、落ち着いて聞いてくれる?」
「うん、ラルクの話しだもの、聞くよ」
「うん、じゃあ結論から言うね・・・。
東方に行く前に結婚しよう?」
・・・けっこん?ケッコン・・・血痕?ラルク怪我したっけ?するのかな??
いや、あの、冗談です。ウエディング的なアレですよね?
「ええええと、理由があるんだよね?」
「うん、2つあるよ。
1つは他国でなにかあった場合他人だとどうにもならないケースが起きた時に手が打てない。でも夫婦なら、それを理由に多少の無理が効く」
「確かに、パーティメンバーも突き詰めれば他人だもんね」
「そう。2つ目は、ちゃんと教会で祝福された結婚は夫婦の間に特別な絆が結ばれる」
「特別な絆?」
「うん、いつでもダンジョンにいてもコールを出来るのと、転移スクロールで相手の場所に転移可能になるの」
「めちゃくちゃ凄いじゃん!」
「ただし、行脚しないといけないんだ。この大陸中の教会を巡って、祝福を受ける必要がある」
「うへぇ、それ騎獣と転移は?」
「使ってOK。オレたちが本気出したら5日で完遂できる」
「それなら、やるっきゃないね!」
「えっ?!」
驚いているラルクが珍しくでニヤリと笑ってしまう。
いつも逆だもんね!
「私、ラルクのことはずっと好きだよ?
恋愛的な好きかはまだ分からないけど、きっと恋愛的にも好きになれると思うし、なりかけてると思う。
だからね、ラルクと結婚するのは嫌じゃないよ。必要に迫られてするのも私たちらしいしね!」
「・・・・・・はあ〜~~~」
「えええ?!」
「オレはこんな流れは申し訳ないって悩んでたのに・・・」
ため息と共に耳も尻尾も力が抜けてくたんとなるラルクが可愛くて思わず笑ってしまう。
もちろん、その後でしっかりお仕置を受けました。くすぐりの刑は酷いと思うの。
笑いすぎて変な声出たし、おのれラルク!!
画して私はラルクと結婚することになりました!
うん、意外とすんなり受け入れてる自分に我ながら笑う。でも、まあ、良く知ってるラルクだしなぁ、きっと大丈夫!
◽︎◾︎◽︎
翌日は朝から最寄りの教会へ行き手続きを開始する。どうやら祝福を受けた婚姻は「
王族や国や種族を率いる立場の人たちは割とこの婚姻方法を選ぶらしく、つまりは文字通り離縁や離婚は絶対できない契約のため守っている間の利点もあるが、破った場合には神罰が下るそうだ。
ちょっとガチすぎでわ・・・怖いよ!!!まあ、態々神の名の下で契約するんだから、そもそも契約破棄なんてできる訳がないと言えばその通りなんだけど、重いなぁ・・・。
チラリとラルクの方を見ると、真剣に説明を聞きつつ、何かを考えているようだ。一通り神官からの説明が終わり、実際に契約を行うかちゃんと二人で話して決めてから答えを出して欲しいと言われたので、少し教会の外にでた。
「なんか、思った以上に大事なんだねぇ・・・」
「うん、日本の価値観で考えると、そこまでガチガチに縛るんだ?って感じだけど
要は契約相手、つまり奥さんを大事にして今後の人生生きなさいってだけだって思うとメリットの方が大きいよね。
もちろん気軽に離婚はできないけど、そもそも結婚も離婚も軽々しくするもんじゃないしね」
「あ、そっか。そりゃそうだね」
「うん、そう考えると、アリスと引き離されることはないって言うのはオレ取ってメリットしかないんだよね」
「ふぇっ?!ラ、ラルク?! もー!」
「だから、アリスが嫌じゃなければこのままオレを選んで?
絶対アリスを独りになんてしない、なにがあってもアリスの元に行くよ。オレは意外と器用なんだし、大抵のことは出来るの知ってるでしょ?」
「よーーーーおくっ!知ってるよ。
いつも私をそっとフォローしてくれるのはラルクだもん。
・・・そうだね、ラルクの奥さんはきっと幸せだと思うな。私でいいの?」
「アリスがいい、アリス以外はいらない」
「うん、私もラルクがいい。これからも、ずっとずっと一緒にいてね?」
「もちろん、喜んで」
初めて、ラルクにキスされた。触れるような、優しいキスが嬉しくて照れくさくて、照れてるラルクも嬉しそうで、この世界に来て初めて心から幸せでいっぱいだった。
ラルクと一緒に教会に戻り、さっきの神官に自分たちは今度東方への支援に向かうので、何があるか分からないので祝福をお願いしたいと申し出ると、柔らかな優しい笑顔を祝福とこの先訪れる教会について教えてくれた。それと同時に時間制限もあるので、5日で全ての教会への祈りを終わらせてくるので、6日目に儀式をお願いしたいと先に予約をさせてもらった。
神官様にお礼を言って、早速この教会から1番近い教会へと移動する。
歩いたら流石に1日かかるだろうけど、最寄りへの転移と騎獣で1時間ほどで着いた。特に信者の列などもなかったので、巡礼を行っており祝福をお願いしたいと近くの神官に話すと、すぐに聖卓の前に連れて行かれその教会の最高位の神官により祝福が行われた。
丁重にお礼をいって早速次へと向かい、今日中にあと2ヶ所は行けそうだ!
順調なんだけど、なんとも味気ないなぁ~と思ったのは内緒。時間がないのは重々分かっているから私はラルクと共に移動を急いだ。
そして、予定通り今日の分の巡礼を終えて、帰宅する頃にはすっかり日が落ちていた。
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