送らなかった手紙

20通目

今日も日課になりつつある手紙を書こう。びんせんとペンを持ち出して書き始めた。リセットされても気持ちが変わらない。一種の逃避行になっていたようだった。今日は会話の事を書こうかな。

「初めまして。もしかして和仁さんですかね。」

「そうですよ。」

翡翠は不思議そうにこちらを見ていた。ノートには何か書いてあるのだろうか。

「そういえばつい先週ですかね。水族館行ったんでしたっけ。どんな感じでしたか。少し聞きたかったもので。」

退屈していたので連れ出していった。でも覚えて内容だった。

「ペンギンていう泳げる鳥を見てましたよ。とっても気に入ったらしく30分ぐらいずっと張り付いていましたね。」

「それは大変でしたね。すいませんね。」

「楽しかったですよ。」

他の動物には目もくれずずっと張り付いていた。この前もそうだったような気がして内心安心した。

「そういえばノートにあなたの名前があるんですけど友達だったりしたんでしょうか。」

「そうですね。昔っからの友達ですよ。それじゃあ私はもう行きますね。」

「またいらしてくださいね。」

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