第16話

「ここだけの話で、相談があります」

「ん? 何だ?」

「貴方は信用出来ると思いました。誰にも話さないと」

「言うなと言われた事は言わねーよ」

「それにビーゼルさん被害者の会の一員ですしね」

「言わねーから! だからそれも言うな!」


良かった。判り会えた。


「実は自分はちょっと良い所の生まれで。

 家から出ずに絵ばかり描いてたんですよ」

「あぁ、そんな感じはしてた」

「ぶっちゃけ幽閉されてたような物でして。能力見れば判りますよね?」

「確かにあんな能力、見た事も聞いた事もねぇ。良い所の親なら隠すかもな」

「なので、レベルも子供並みに低いし、世の中の事にも疎いんです」

「つまり色々教えてくれってか?」

「そういう事です」


察しがいいね。


言った事は全部が嘘じゃないので、バレにくいと思う。

この世界からすれば良い所出身だし。

引きこもりで絵ばかり描いてたのも本当。大人になってからだけど。

多く仕事がある時など、幽閉状態のような感じにもなってた。

レベルが低いのもこの世界に疎いのも本当。子供並じゃなくて赤ん坊レベルだけど。


「獣を殺すのも躊躇ってたし、貴族かよ!とは思ったがな」

「貴族では無いですよ」

「ま、生まれなんぞ、詮索しねぇ。

 ……俺の判る範囲でなら教えてやるよ。別料金でな」


さすが冒険者。

料金は取るようだ。

でも無料よりは信用が出来る。

依頼料が発生すれば、守秘義務も発生する。やはりこの人は信用出来る。


「お願いします」




こうして俺は、この世界の知識を手に入れた。


例えば単位。

1m=1メール 1g=1グレム k=ケロ c=テンチ m=ミロ l=リッテル 100円=1ドル=1トル。

数字は10進数。

硬貨は1・10・100・500・1000・5000・10000・50000トルの8種類。

十=ジュ 百=ヒャ 千=セク 万=マク 十万=オオイ 百万=メチャ 千万=クチャ。

時間も24時間で、1時間=1カン 1分=1ポン 1秒=1ボー。

神様の手抜きかと思うくらい似ているが分かりやすくて助かる。


例えばレベル。

大人の平均レベルは100で、一流と言われる冒険者の平均レベルは500。

入手出来る経験値は一定で、ウサギなら10とか決まっているが可視化ではないので不明。

レベルが上がるほど、次のレベルになる為の必要な経験値量は多くなる。

レベル1だと必要経験値は10、レベル10だと100といった感じ。

レベルが上がると獲得経験値はゼロに戻るので、残り1の時に100入手しても余りの99は消えるらしい。

レベルが上がると、前回上がった時から今までで一番使った“体力・魔力・耐性・運”のどれかが上がる。

※能力が増える場合もある(ずっと弓を使ってたら弓が増える)。

 なので家事をしてるオバちゃんには、もれなく家事の能力が付いている。


例えば能力。

付いた所で特化する訳ではない。何故なら付いた頃にはそれを酷使してたはずだから。

ただし(A)とか付いていた場合はその限りではない。それらはスキルと呼ばれている。

S~Gまであり、Sはギフトと呼ばれて神から与えられた物と言われている。

能力(ステータス)は他人には見えない。しかし由緒ある教会と王家には見る事の出来る水晶がある。

※その水晶を使うと、水晶の近くに置かれた紙にあぶり出しのように浮き出てくる。


俺の絵はSなので、ギフトと呼ばれるようだ。

水晶のある所には行かないようにしなくては。


これらは、街に帰る道中で教えてくれた事のほんの一部だ。

続きはまた明日教えてくれるらしい。

明日以降はビーゼルさんも加わるとの事。

呼び出した物で脅せば一発だ、と言われた。俺もそう思う。


ちなみに知識の報酬は1トル。

元から貰う気は無かったようだ。

持つべきは同じ辛さを味わった友か。


こうして勉強会と依頼が同時に出来るようになった。




街に戻ると、門の所でボブが待っていた。

ヤベェ。すっかり忘れてた。

金を返すってのもだけど、著作権マークの事とか洗脳?の事とか、大丈夫なのだろうか?


「ビーゼルさんが走って戻ってきたから、何かあったのかと思ったぞ」

「ワリぃ。あいつはちょっと用事が出来たんで、先に戻ったんだ」

「そうか。ん? どうした、キョウヤ」

「あ、いや、なんでもない。そ、そうだ、借りてたお金、返すよ。助かった、ありがとう」

「今じゃ無くても良いのによ~。わかったわかった受け取るよ」


返す時に手を見たが、やはり著作権マークは消えていた。

だが、まだ親密な感じがする。どうなってるのだろうか?

う~ん、これは調べる必要があるなぁ。お試しは残り1回だけど。

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