第11話

カバンの中には20枚ほど紙が入ってた。

でも門から20mくらいの間で、全て使い切ったわ。

まだ昼にもなってない。


あっ、ちなみに、筆記用具は羽根ペンとインク。

インクをつけて描くのはやった事があったので、すぐに慣れた。


ギルドに戻ると、早速終わった事を報告する。

するとすぐにギルドマスターがやってきた。


「早いな。どれ、見せてみろ」


書いた物を渡すと、1枚づつ確認している。


「問題無いな。と言うか、予想以上だ。よし、昼からも頼むぞ」

「えっ? まだやるんですか?」

「明日でも良いが、儲けたくないのか?」


既に200トルは稼いだので、別に焦って稼ごうとは思ってないけど。


そう考えてると、後ろから声が聞こえてきた。


「当然儲けるよな」

「そうですね。稼げる時に稼ぐのが常套手段です」


AとB! 何を余計な事を!

……あっ、そうか! 契約内容!

描くほど俺は稼げるが、それは二人も同じだ!

しかも10枚ごとに50トルを稼げる契約になってしまっている!


俺の返事も待たずに、ギルドマスターはカバンに紙を補充した。

AとBは俺の片手づつを掴み、逃さない布陣。


「じゃあ頑張って来いや」

「「うぃ~っす」」

「あ、あれ? 俺の意見は?!」


俺の声は誰にも聞こえないようだ。

ズルズルと引きづられて行った。




結局午後も20枚描き、今日は400トル稼ぐ事が出来た。

慣れないペンで手が痛いです。


「いや~、楽な護衛だったぜ!」

「確かにそうですね。明日もお願いしますね」

「は、はい……」


そりゃ楽でしょうよ。

獣もモンスターも出なかったし、植物を掘り起こすのも手伝ってくれなかったし。

車や人の通らない道路でガードマンしてるようなものだ。

ビーゼルさんは描く植物を教えてくれたけど、それだけ。


帰りにエイさんに商館を教えてくれた。

そこは画材を売ってる可能性があるらしいので。



「いらっしゃいませ。何をお探しでしょうか?」

「こいつは絵描きなんだけどよ。何か絵を描く道具が無いかってさ」

「ございますよ」

「良かったじゃん。じゃあ俺は帰るからな。また明日」


エイさんとここで別れた。

でも助かったわ。貧乏人の俺には敷居が高くて入れなかった店の一つだったから。


「こちらでございます」


店の中にあるソファに案内され、座ってると盆に乗せて持ってきてくれた。


太さの違う筆が3点と、羽根ペンと、瓶に入った黒インクと、瓶入りの油、謎の細長い木が1対。

絵の具は無かった。


「この油は何ですか?」

「色を作るのに必要な物でございます。顔料にこの油を混ぜて、塗料を作ります」


あ~、聞いた事ある。

確か油絵を描くのに使う物だったと思う。

油絵なんかやった事が無いから、やり方は知らないけど。


「この細長い木は?」

「これは炭巻きという物で、このように使います」


そう言って店員さんが持ってきたのは炭。

それをナイフで1cm角、長さを10cmくらいに切断した。

そうやって出来た物を木で挟み、付属してた紐でグルグル巻にした。


なるほど!

手製の鉛筆のような物が出来るのか!

ちょっと感動。


紙は売ってなかったけど、筆3本と炭巻き、羽根ペンと黒インク、そして炭を切る為のナイフを購入した。

合計300トル。

今日の稼ぎの3/4が無くなった……。

せ、先行投資だと思おう。

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