第10話

当日になったので、冒険者ギルドへ行く。


マッチョが多い中をビクビクしながら受付へ行くと、ギルドマスターが待っていた。

隣の受付には「クラス内では上から3番目くらいの可愛い娘」って感じの人が受付してるのに!

何故俺はマッチョ! 理不尽だー。


「待ってたぞ。まずは紹介しておく」


ギルドマスターがそう言うと、俺の後ろに冒険者AとBが現れた。


「赤髪のヤツがエイ、茶髪がビーゼルだ」


冗談で考えただけなのに、本当にABとは驚きだ。

覚えやすくて良いけど。


「こいつらがお前の護衛をする。指示には従ってくれ」

「判りました。よろしくです」

「おう、よろしくな」

「護衛対象ですよ、ちゃんとしなさい。私はビーゼルです。よろしくお願いします」


Aが気さく、Bが規則正しい、って感じか。


おっといけない。

ここでちょっとお願いをしとかなきゃ。


「ちょっと良いですか?」

「どした?」

「実は自分は絵を描いてばかりいたので、レベルが極端に低いんですよ。

 なので、もし獣とかと遭遇したら、とどめを刺す役割をさせてもらえませんか?

 勿論、その分は俺の報酬から引いてもらって、お二方に分配しようと思いますが」

「それくらいならいいぜ、な、ビーゼル?」

「そうですね、危険が無い状況なら構わないでしょう」


やった!

ステータス読んだ時から密かに思ってたんだよね。

レベル上げって、とどめを刺した人が有利なのでは?と。

動植物を殺す事で経験値が入るなら、最後に攻撃した人になると想像したんだよな。

二人が納得したって事は、推論が合ってたって事だろう。


あっ、ちなみに、レベルについて考えるのは即止めた。

だって考えたって意味無いじゃん? 受け入れる方が大事。

この世界の人が地球に来たとして「筋トレしたら体力が増える」と言われても理解出来ないだろ?

それと一緒だと考える事にした。


レベルが上がれば強くなれる。それで良いじゃないか。

俺みたいな引きこもりからすれば、筋トレよりも数倍楽に強くなれる方法だ。

レベルシステムサイコー。楽、バンザイ!


「じゃあそういうように契約内容を変更するぞ?

 それじゃあ、10枚描いて150トルだったが100トルに変更しておく」

「あれ? ギルドマスター? それだと獣に会わなくても報酬が減ってません?」

「レベルアップ狙いだろ? 採取も含んでる計算だ」

「つまり植物も狩れと」

「そういう事だ。ほれ、このカバンを持っていけ。中に画材が入っている」


カバンを受け取る。

次元収納とかアイテムボックスとか四次元ポケットではなかった。普通のカバン。

あぁ、具現化で生み出すと便利だな。覚えておこう。


「それで何から描けば良いですか?」

「手当たり次第だ。何らかの役に立つ物全て。名前とかはそいつらに聞け」


なるほど、何でもか。

……あれっ? そうなるとあまり街から離れないんじゃないか?

近場の物から描いていく事になるだろうし。

そうなると、獣とか出ないんじゃない?

レベルアップは遠そうだ……。



冒険者ギルドを出て、エイさんビーゼルさんと共に門へ向かう。

気になった事があるので、質問してみる事に。


「あの、昼飯はどうします? 買っていきます?」

「ははは。近いんだから戻って食えば良いだろ」


やっぱりね! 超近場なのね! わかってた!



門の所にはボブは居なかった。夜番なのかな?


門を出て10m。右側の草むらをビーゼルさんが指差す。


「それがタンポルです。根が飲み物の原料になります」


近っ! 早っ! 目の前! 護衛要らないレベル!


愚痴ってもしょうがないので、カバンから画材を出す。

ちゃんと紙があるやん。でもお高いんでしょう?

な、な、な、なんと! 今ならそれが半額! 半額ですよ奥様!


アホな事考えてないで、描くとしよう。


ちなみにカバンの中には移植ゴテとハサミも入っていた。

はいはい、理解出来ましたよ。

レベルアップの為じゃなくて、根っこも掘り起こして描けって事ですよね!

だって長芋とかだったら、根の方が重要ですもんね!


って考えたらゾッとした。

長芋を発見したら、移植ゴテで掘るの? それは地獄じゃない?

この世界には長芋なんか無い事を祈ろう……。




タンポルって、タンポポっぽいのね。

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