第6話 学校に侵入!!

 私やっぱ帰った方がいいですよね?」


 柚子さんは申し訳なさそうな表情を浮かべ、部屋を後にしようとした。

 え、と思い、咄嗟に彼女の腕を掴む。

 柚子さんは止まる、しばらく僕たちの間に沈黙が生まれ、やがて柚子さんは隣へと座った。

 気まずい、別に何かをしでかしたとか、トラブルを起こした訳じゃない。

 だけど、何故か物凄く気まずい。

 多分、お互いに何も喋らないから気まずいのだろう。

 チラッと窓の方を見ると、まだ雨は降り続けている。こんな天候で帰す訳には行かない。

 黒霧、せめて許可を得てくれよ! ま気絶していた僕も悪かった……けど?


「柚子さん! ここに来る時えっと、不審者のような女に出会いませんでしたか!?」

「え、いや会ってはないですけど、家の扉が空いてましたよ?」


 夢ではなかった、首を触ると軽く血が付いた。生きているから動脈は切られてない。

 襲われたのは事実。


「えそれ!? 血じゃないですか! 今すぐ手当します」

 

 別にしなくていいと言うより先に部屋から出ていき、濡れたタオルと絆創膏を持って近づいてくる。

 軽く拭き、その後絆創膏を貼った。


「ごめんなさい、簡易的なこんなものしかなくて、もし気になるならば病院に行って下さいね」

「いえありがとうございます」


 あの不審者に襲われたことは柚子さんに言うべきではない。後で黒霧に軽く説明しとこう。

 

「柚子さんそれで要件は何だったですか?」

「A子とどうにかコンタクトを取ろうとしたんですが」

「それが叶わなかったってことですか?」

「それだけならばまだよかったです。学校を辞めてしまい、連絡を誰も取れない状態」

「つまり今回の事件に関与している可能性があると?」

「分からないですがもしかしたら……」


 確かに唐突過ぎる、もう結構前から学校を辞めていたり、連絡を取れないだったら少しは分かる。

 だが、今回は僕らが彼女に接触を試みた瞬間に学校を辞め、連絡が一切取れてない状態。

 失踪したようにしか思えない。

 失踪と云えば関連されるのが樹鳴。偶然かそれとも策略?

 どっちにしろ手掛かりの一つは消え失せてしまった。残りはあの絵しかない。

 噂――絵から手を引け、完全なる警告だった。

 

「それじゃあ、あの絵を取りに行くしかないですね」

「そうですね、なんかタイミングよく晴れましたね」


 確かに雨の音は止み、窓の方を見ると雨は完全に止んでいた。

 時刻は十時を回っていた。いつの間にかこんなに立っていたのか。

 

 ◇


「ここの学校にあります」

「私立鞍馬学園」


 雨は止んだし、時間が時間だったから僕らはA子さんの絵が置いてある学校に来た。

 鞍馬学園はここの地域では結構有名な私立校。

 偏差値も高くて有名、柚子さんもA子さんも頭がいいんだな。


「じゃあ私に着いてきて下さい」


 柚子さんは案内をしてくれる、そしてある部屋に止まった。

 美術室。確かにここならば絵はありそうだが?


「A子さんは個人的に絵を描いてた訳じゃないんですか?」

「個人的でしたよ。けれどあまりにもその絵が不気味過ぎて、先生が隔離するように美術室で描かせました」

「じゃあここに絵があるんですね」

「はい開けますよ」


 美術室の扉を開き中へ入る。真ん中にまるで隔離するように机が置かれており、仕切りが引かれている。

 中へ入り、仕切りを退かし、机を見るとスケッチブックが置いて合った。

 スケッチブックを開くとそこには色々な絵が描いてある。普通のような絵。

 だが、ページを捲れば捲るほど不気味になっていき、樹海が描かれた絵を見つけた。

 パラパラと捲っても樹海や死体、そして謎の立方体。


「ありましたか!」

「はいありました。できればこれを持っていきたいんですけどね」

「じゃあ私先生に頼んで見ますね」

「お願いします」


 僕はここまで順調に進んでいると思っていた。A子さんとはコンタクトを取れなくても、物事がすんなり進んでいると感じた。

 スマホが鳴り、画面を見ると黒霧だった。

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