第4話 情報開示
好きな捉え方で大丈夫です」
柚子さんは緊張が解けたのか、さっきに比べてリラックスしている気がした。
まぁそれに関しては僕も一緒。
「それじゃそろそろ本題に移りましょう」
「はい」
そして僕たちは本題に移った、彼女はあの失踪した事件の関係者。
一体どんな情報を持っているのだろう。
「それでは貴方と一家の関係性は?」
「私はあの家の次女です。
「そのお陰で貴方は無事でいたと?」
「はい」
親戚ではなく、まさかの家族構成の一員だったか、彼女は偶然その場にいなかった。
だったら一体どんな情報を持っている?
そもそも本当に偶々いなかったのか? DM頂いた時は何かしら樹鳴に知っている様子だった。
考えれば考えるほど、新たな仮説が出てきて前へと進まない。
「樹鳴が話題になる前から私はその存在を知っていました」
思考が停止する、今なんて言った? 話題になる前から知っていた?
何故? まずそんなことが可能なのか、いや無理だ。
その中で一つの仮説が生まれた、最初に投稿された掲示板――その主ならば知っている。
まさか彼女が? もしそうならば合点がいく。
いやいや流石に愚直な考えだ。
「柚子さんはどうして存在を知っていたんですか?」
平然を装いながら聞く、内心焦っている自分がいた。
「数年前の話になるんですが、クラスメートにオカルト好きの子がいたんです。その子をA子と言いましょう」
「それで?」
「A子は今起きている現象や掲示板の内容を独り言のように語ってました。そして奇妙な絵も描いてたんです」
すると、柚子さんはスマホを取り出し、僕にある写真を見せてくれた。
それは絵だった。彼女の言う通りに奇妙。それ以上に不気味って言葉が出てくる。
無数の木……森林、どれも違う。
「樹海です」
「え、樹海?」
確かにそう言われれば樹海だ、だけど何が可笑しい。
まるで樹海が何個もあるような絵だった。そして樹海の周りには必ず人がいる。
首吊りの絵、埋められた絵、体がバラバラな絵。
たかが絵なのに苦しい、辛い。
ッ!! 次の瞬間、脳内に何かがフラッシュバックした。
ガタンという音共に尻餅をついてしまった。柚子さんは急いで駆け寄ってきてくれた。
「TUさん大丈夫ですか!?」
「はぁはぁ、柚子さんもしかしてこの絵、一枚じゃなくて何枚もあるのでは?」
「え、なんで分かるんですか!? 正にその通りです」
やはりか、柚子さんの肩を借りながら元の席に座る。
物音を立てたから店員さんがきたけど、柚子さんが対応してくれた。
樹海は基本的に馬鹿デカい、それを絵に表そうとしたら到底一枚だけでは無理だ。
しかもそれが何個もあるならば尚更。
「樹海の数と人がマッチしてないんですよ。まるで
「私はA子が何枚も絵を描いているを見たことがありました。けど見つけた時、写真の通りの絵しかありませんでした」
「その絵は現存されておりますか?」
「え、あはい。学校に行けばあると思います」
一呼吸をして冷めたコーヒーを一気に飲む。
「上手く言えないし根拠はないんですけど、A子さんは樹鳴について何か知っている気がします」
「まさかA子が犯人とか?」
「いや多分それはないですね。一学生の力で世間には広げれないでしょう。それにどうやって失踪させるんですか? 一人、二人ならばともかく」
「一家丸ごとはできない」
僕は頷く、具体的な情報を得たわけじゃない。けれど直感的にこの絵は何か関係している。
一枚だけじゃなくても何枚もある、そして無理矢理合成されたかのような絵。
これら全ては真相のための手掛かりに過ぎない。
「A子さんとコンタクトはできるでしょうか?」
「わからないです」
「もしできるならばお話をしたいです。そして絵を取りに行きたいです」
「あの怖いのでよろしければ一緒に行ってくれますか?」
「ええわかりました」
◇
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