11 花信風(10)
「……さむ、」
もう数年、通っていない公園で慣れたベンチに腰掛けて、
高い時計台の電気がつこうとして、切れかけた電球が点滅する。少なくとも前回来たときには正常に点灯していた。
雪がちらちらと視界を
郁人は
何かが足りない。
冬の寒さによる寂しさではないのは分かっていた。
こう、罪悪感のような、誰かに謝りたいような、心の
郁人は髪に積もり始めた雪を首を振って振り払い、立ち上がる。
あてどなく人を待ち、
誰を待ってるかなんてわからないけど、いつも家に帰りたがらなかったその人をその場に
赤くなった指先を
「……。帰ろっかな」
家に帰りたくなくなったのは、自分の方だった。
去年の冬、たった三か月前ほどの出来事を、郁人はふと思い出したように夢に見た。あの日どうしてあのような行動に出たのか、あれは予兆だったのだろうか。
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