幼少期 02話 俺はっ! 全力でっ! 赤ちゃんを楽しむっ!


 この世に生を受け、自我の芽生え(?)と共に前世の記憶が蘇った俺。

 とは言え、生まれたての赤ん坊にそんなモノがあったところで物の役に立つわけでもなく。まだまともな発音すら出来ないからな、俺。

 そもそも思い出した記憶なんて、ほぼ『黒歴史的な何か』だしさ……。もしも現状で成人していたとしても何か出来たのかすら疑問である。

 ということで! 今の俺に出来ることはと言えば……この赤ちゃんライフをエンジョイすること以外に何も無いのである!


 うん? 赤ちゃんのうちにも出来ることは一杯あるだろうって?

 確かに、俺が昔スマホで読んだことのある異世界転生モノ作品では『魔力の循環がウンタラカンタラ』とか、『寝る前にMPを使い切って……』などという生き急ぐような行動がデフォであった。

 もちろん? 俺だってそんなチート主人公に憧れ恋い焦がれてたからさ、何度も、そう、何度も頑張って試してはみたんだよ? ……でもさ、これと言って何の成果も……得られなかったんだよ。


 そもそもさ! 一体どうすれば魔力なんて得体のしれないものを感じられるって言うんだよ!? もしもソレがそんな簡単に成功出来るような事なら、日本で何度も練習した幽体離脱だって一度くらい成功わ! 体から出るオーラを見れるようにだってなってるわ! もちろんみんなも練習したことあるよな? 幽体離脱。 

 てかさ、この世界に魔法が有るかどうかすら未だ分かっていないんだから慌てる必要があるのかどうかも不明だっていうね。


 そんな何も出来ない、喋ることどころか自力で寝返りをうつことすら出来ないような状態の赤ちゃんの俺。

 今選べる選択はと言えば、


⇒おっぱいを吸う

 笑う

 泣く

 ウ○コする


 の四択になってしまうのである。

 内容がとても酷いように見えるけど、俺は赤ちゃんなんだから仕方ないね?

 そしてこの四つの選択肢であるのだが……思ったよりも素晴らしい実行効果があったりする。


 例えばおかん――これがもう、物凄い銀髪美女なんだけどさ。

 おかんの前で俺が『笑う』とするじゃん?

 そしたらその美女も物凄い破壊力の笑顔を俺に向けてくれるんだよ! それも抱っこされて頬スリスリのサービスまで付いて!

 もうね、完全にヘヴン状態だからな? 俺の顔とか完全に緩みきってるからな?


 もしもアラサーのオッサンが、同じようなニヤケ顔を街なかで晒したとしたら……それはもう通報待ったなしの表情なんだけど……今の俺は純真無垢な天使。

 そんな俺の顔を見たおかん……どうなると思う?

 なんと! 銀髪美人が俺と同じ様な、緩みきった、トロトロに蕩けきった表情になるんだよ!

 前世ではそこそこの大金を払っても嬢はこんな顔してくれたこと無かったのに……。


 例えばメイドさん――金髪美少女で俺の乳母さんらしいんだけどね?

 てか『美少女』って言ってもおかんと年齢はそれほど変わらないんだけどさ。

 そのメイドさんの前で、俺が『ウ○コする』を選ぶじゃん?

 ……いや、ちょっと待って、何となくこの言い方だと語弊がある気がする!


 別にあれだぞ? わざと脱糞してるわけじゃないからな? 俺って赤ちゃんだからな? 生理現象に逆らえないというか……な?

 たまたま、そう、たまたま金髪美少女の腕に抱かれてる時に便意を我慢できなかっただけなのだ!

 言い訳がとても気持ち悪い? せやな。


 まぁ……あれだ。メイドさんに抱っこされながらウ○コしちゃうとするじゃん? もうこの時点でそこそこキツめの変態がするプレイである。

 そしたら……赤ちゃんとしては問題のない行為であってもオッサン的には非常に申し訳ない気持ちになっちゃうじゃないですか?

 だから俺の顔が味噌を出されたアシ○パさんみたいな、苦い表情になっちゃうわけですよ。


 でもね? そんな顔をしてる俺のことを見た金髪美少女がだよ? 何一つ嫌がる素振りなど無く満面の笑顔で……おしめを替えてくれると言うね。

 もうね、その笑顔で俺、完全にヘヴン状態になっちゃうじゃないですか?

 お尻を拭くだけじゃなく、


「ボーゼル様、お○ん○んがきちゃないきちゃないになっているといけませんのでちゃんとふきふきいたしましょうね?」


 とか言いながら俺のジョン○ンヴィル……ポークな、むしろボークなビッツもふきふきしてくれるじゃないですか?

 前世ではそこそこの大金を払っても嬢はこんな顔……いや、そもそもソッチ系のお店には行ったことないからいい歳したオッサンに眼の前で脱○された嬢の表情とか見たことは無いけれどもっ!


 そして、そしてだよ!


 『おっぱいを吸う』


 このコマンドの破壊力と言ったらもうね……。

 別に? 俺赤ちゃんだし? むしろ赤さんだし? そりゃ吸うよ? 遠慮なく吸いまくるよ? だって食事だもん!

 でもさ。その相手が……おかんなんだよ!? あたりまえだろうって?

 お前……そんな戯言はクール系銀髪美女のおっぱいを吸ってから吐かせって言うんですよ。


 もうね、おっぱい。超おっぱい。……まぁサイズはこう……小さいと言うか、むしろ無きに等しいんだけどさ。でもほら、相手はクール美女だからね?

 逆に? 大きいほうが違和感があるっていうかさ? 小さいことがありがたいって言うの? むしろ小さくてありがとうってなモノですよ。

 それをこう……力強く、でもおかんが痛くないように細心の注意を払いながら吸うんだよ。

 そしたらね! おかんがそれはもう幸せそうな顔をするんだよ!

 前世ではそこそこの大金を(ry)


 そして懸命なる諸君ならもう気付かれていると思うが……金髪美少女である。

 彼女、俺付きのメイドさんなんだけどさ。役職として『乳母』も兼ねてるんだよ。

 乳母知ってる? もちろん俺は知ってる!

 そう、乳母っていうのはね、赤ちゃんにおっぱいを飲ませるお仕事の人なんだよ!

 彼女、おかんが居ない時を見計らって俺が『お腹すいたよー?』みたいな声を出すとね、おっぱいを……出してくれるんですよ。


 乳母だから当たり前だろうって? うん、俺も最初はそう思ってたんだけどさ。

 なんと彼女……乳母なのに母乳が出ないんだよ!

 もうね、まったく意味がわからない。それ、絶対に乳母になっちゃいけない人だよね? でもほら、母乳は出なくとも、おっぱいは出てくるんだよ。

 つまりおかんのおっぱいが日々の粮だとすれば、彼女のおっぱいは……娯楽? おしゃぶり? おしゃぶりとかさすがにちょっと表現がストレート過ぎか。


 でもまぁそんな感じでね? 俺が『お腹すいたよー!』って言うと……出てくるわけですよ! パッキン美少女の! おっぱいが!

 これ、一体前世でどこまでの徳を積めば……自転車でぶちかましてきた親子を助けた? あいつらは間違いなくまたどこかで何かやらかすだろうから助けたことは地球にとってマイナス要素でしか無かったと思うんだけどなぁ……。


 てかちょっと冷静になっている今だから言えるけど……俺、長々と一体何の話をしてるんだろうな……。

 まぁそんなね? 異人館の様な立派なお屋敷で何不自由無く、美人のおかんと美少女メイドさんに囲まれ、泣いて笑ってウ○コして……いや、物心付いてからは泣いたことって無いような気がするな。


 ここんちの子になってから寂しい思いも悲しい思いも痛い思いも悔しい思いもしたこと無いし。前世で泣かなかった理由『泣いても何も改善などされないから』とはまったく別の理由で泣いていない俺なのである。

 そして、そんな幸せしかない生活で一日が過ぎ……三日が過ぎ……五日が過ぎ……。

 ナニコレ怖い。幸せすぎて怖い。間違いなく何らかの揺り返しがあるだろこれ。


 そう、幸せであれば幸せであるほど過去の記憶がフラッシュバックして、いつか何かが起こりそうでビクビクしちゃうというさ。

 最初の数日は『ヒャッハー! 働かないで飲むタダ母乳ウメェwww』とか、『ウェーイwww おとん見てるー? おかんなら今俺のとなりでおっぱい丸出しになっちゃってマースwww』とか頭の悪いチャラ男みたいなこと考えてたんだけどね?

 うん、調子に乗っていたとは言え本当にすこぶる頭の悪い思考である。


 それから十日が経ち、二十日が経ち、ひと月、ふた月、み月……特に何も起こらず。もしかしてもしかすると……俺、この世界では、少なくとも子どもの間は幸せに過ごしても大丈夫なのだろうか?

 いや、駄目だ! 少しでも気を抜いたらきっとまた碌でもない不幸な出来事が巻き起こってしまうだろうから。

 ……とか思ってたんだけど、半年が経過しても俺にもおかんにも回りの人達誰にも不幸など起こらず。もしかしてここ、異世界じゃなくて天国なのでは?


 そんな、他の人に知られたら『一体お前は何をそんなに警戒しているんだ?』と呆れられそうな赤ちゃん生活。

 美人と美少女のおっぱいにもずいぶんと慣れてきて、最近は不要な興奮は抑えられるようになってきた今日この頃。

 てかさ、マリーベルのおっぱいって……おかんとは違って出ないじゃないですか?

 だからこう……甘噛したり舌先で転がしたりしてたわけなんだよ。


 いや、お前何してんだよ……って話なんだけどね? でもほら、そのへんはもう男の性とかそういうものだから仕方ないよね?

 で、それ(舌の運動)が功を奏したのか、それともただの時間経過による成長か。おおよそ四ヶ月で、多少舌っ足らずではあるけどちゃんと意味のある単語を発することが出来るようになった。

 もちろん一番最初に口に出した言葉は、


「かぁちゃま、かぁちゃま」


「マリー……ああマリー……なんてことなのかしら……

 ボーゼルちゃんが……私のことを……私のことを呼んでくれたわ!

 ああ、なんて可愛い……

 ボーゼルちゃん、ここにいますよ? あなたのおかあちゃまはここにいますよ?」


「グヌヌヌ……まさか初めてが母親なんて……

 ボーゼル様! ほら、いつもご一緒のマリーですよー?

 毎日リディ様に隠れてボーゼル様が一生懸命乳首を吸ってるマリーベルですよー?」


「あなた、私が見ていない間にうちの息子にいったい何をさせているのかしらっ!?」


 ……おかん、その駄メイド、俺に乳首を吸わせるだけじゃなく入浴時には人の○ん○んいぢり倒してるからな?

 もちろん俺だって嫌じゃないから? それに関して一切の抵抗はしないんだけどね? そう、あれはあくまでも入浴介助であって決して疚しい行為では無いのだから!

 でもその時の目がなぁ、ちょっとだけイッちゃってるんだよなぁ。そこだけどうにかしてもらえれば非常にありがたい。


 そしていきなり出てきた『ボーゼル』と言う聞き慣れない単語だが……当然俺の名前である。そしてこちらもいきなり出てきたが、おかんの名前は『リディアーネ(リディ)』と言う。

 てかさ、おかんとマリーベルなんだけど……この二人、たぶん性的なあれやこれや……つまりユリユリな関係だと思われる。

 ソースは……普通に俺の部屋でおっぱじめた事があるから。

 すまん、調子に乗っておっぱい吸いすぎた!

 あと知り合いのそういう行為って……興奮するよな!


 てかさ、既に疑問に思われてると思うんだけど、俺が生まれてから――正確には意識がハッキリとしてから――これまでにおおよそ半年という、それなりの時間が経過しているんだけどさ。未だに一度も父親の姿を見たことがないんだけど……もちろん? 好き好んでオッサンに抱っことかされたくもないし? これと言って何か問題があるわけではないんだけどね?

 むしろこの二人以外にも使用人らしき女の人は何人も部屋に入って来たことがあるんだけど誰一人として男は見たことがないんだよな。


 顔を見たことがあるだけでもおかんとマリーベルの他に五人の使用人。

 そしてこの異人館の様な、子供部屋にしては立派すぎる設えの個室。

 もしかして俺ってやんごとない身分だったりするのだろうか? もちろん王族ってほどではないだろうけどさ。貴族? それとも豪農? もしかして商人?

 非常に気になるところではあるが、おかんを呼び始めただけの赤ん坊がいきなり流暢に「もしかしてうちってそれなりにお金持ちなの?」などと質問したらビックリされるだろうからなぁ。


 そんなわけで会話……と言うほどの意思疎通はまだ出来ていないというか、しちゃうとオカシナ子(または天才)扱いされそうなので次はハイハイの練習である。

 今でもそれなりに動けるようにはなったんだけどね? ハイハイじゃなくてゴロゴロだけどさ。

 一応これまで手を握ったり開いたり、おっぱいを触ったりして握力の鍛錬、腕とか足を上げ下げしてジタバタの鍛錬はしてたんだけど自分の上体を支えられるほどの筋肉はない。


 がんばった。

 動画サイトのダイエット動画よりも頑張った。てか何なんだろうね、ああいう動画って。どう考えても一日に数十秒の運動で痩せられるはずがないだろうに。

 その結果、それからひと月ほどした頃、


「かぁちゃま! かぁちゃま!」


「マリー! マリー! ボーゼルちゃんが! ボーゼルちゃんが一人で立ったわよ!」


「ふふっ、リディアーネ様は情報が遅いですね?

 すでに二人きりでお風呂の時に、そう、ふた月前からその可愛らしいオ○ン○ンは天を突き上げるように」


「あなた、本当に一体うちの息子に何をしてくれてるのかしらっ!?」


 俺氏、生まれて五ヶ月にしてベッドの囲いにつかまり立つことに成功!

 そしてその後、さらにひと月かかって、


「マリー……ボーゼルちゃんが……ボーゼルちゃんが何も掴まずに歩いているわ!

 ほら! 私の方を目指して一生懸命に!

 ああっ大変! ボーゼルちゃんがこけちゃうっ!」


「これでボーゼル様も独り立ちした一人の男ですね!

 それで、私との婚約は何時にいたしましょう?」


「世界中で女があなただけになろうともそんな日は絶対に訪れないわよっ!」


 ハイハイから掴まり立ちを経由して二足歩行に成功したのである!

 ……いや、何だこのモビ○スーツ開発の歴史みたいな扱いは。

 でも俺、頑張った! むっちゃ頑張ったよ!

 もちろん歩けるようになったからといってこちとら体は一歳にも満たない赤ん坊、自由に出歩くことなんて許して貰えるはずもなく。

 新たに出来るようになったことはといえば、マリべ(マリーベル)じゃないメイドの女の子が部屋に入ってきた時にその足にしがみついてニコニコしながらふくらはぎを撫で回すくらいなんだけどな。


 うん? セクハラ?

 いいか? イケメン無罪と言う言葉が日本には有ったように、異世界には『御主人様無罪』という免罪符が存在するのだ!

 何だその度を超えたパワハラは……で、でもほら、メイドさん、みんな全然嫌がって無かったから! むしろ喜んでくれてたから! もちろん俺の勝手な思い込みだけじゃないからな?

 この屋敷のメイドさん、全員にマリべと同じ性癖(度の過ぎたショタコン)の疑惑が芽生えてきた今日このごろである。


 そんな歩くことも出来るようになり、お気に入りの『リリアちゃん』とお部屋で玉遊び(もちろん下ネタではない)などをしながら体を少しずつ鍛えて過ごすこと……一年と少し。

 二歳になった俺氏、とうとう自室の外へと出してもらえることに!

 ……これって遅いのか? それとも早いのか?

 日本での赤ちゃんの頃の自分の記憶も、他所様の赤ちゃんと触れ合った記憶も無い俺にはさっぱり解らないんだけど?


 マリべを後ろに従え、隠れてこっそりと、心配そうにこちらを伺っているおかんに熱い視線で見つめられながら、いよいよ俺の初めてのお使い(屋敷内探検)が始まる!

 扉の外では大量のゾンビが待ち構えている……などというようなことはもちろん無く、扉の外に広がっている光景は俺の部屋と同じ石造りの壁。

 長い廊下、すれ違うたびに笑顔でこちらに頭を下げる知ってるメイドさん、初めてのメイドさん、そして女山賊。


 ……いや、山賊!? どうして家の中に山賊がいるんだよ!?

 まさかのエネミーエンカウントで『すわっ! これが不幸の始まりかっ!?』と、ビビり散らかす俺に「あの方はヴェルツ騎士団の騎士団長、バーバラさんですよ?」とマリーベルが教えてくれる。

 なるほど、よく見れば確かにお尻の○が弱そうな顔してるけれど……俺が夢見てた女騎士様とはまったく違うっ! 何かこう……全体的に小汚いっ! てか『ヴェルツ騎士団』って何ぞ?


 ちなみに女騎士様、少しは汚れを落としてから屋敷に入れとマリーベルに叱られてシュンとなった。悔しいがちょっと可愛らしいと思ってしまった。

 おかんとは別ベクトルの凛々しい……むしろ厳つい感じの女性のしおらしい態度とか、ギャップでちょっと萌えた。


 そこからは新たな出会いも驚きも無く、思ったよりも広い屋敷の中をあっちウロウロ、こっちウロウロと特に目的もなく歩き回る俺。

 俺の部屋、応接室、おかんの執務室、客室、メイドさんの個室……あっ、そこ(マリーベルの部屋)はいらないです。『いらないです』と『はいらないです』の二つの意味でいらないです。 

 食堂、厨房、倉庫、そして図書室。いや、図書室っていう程も広くないから書斎かな?


 もちろん書斎などと呼ばれるくらいだから室内には沢山の本。

 これまで寝物語に、日本に居た頃に聞いたことのある昔話のパクリ……オマージュ作品のような内容の本をマリべに読み聞かせてもらったことがあるから、この家に本があるのは分かってたけど想像してたよりもいっぱいあるな。

 おかんとかマリべの普段の衣装とか俺の部屋の内装とか見た限りでは(もちろん今日初めて見た屋敷の中も含め)、紙の大量生産が出来る文化レベルにあるとも思えないんだけど……本ってかなりの高級品だよね?


 思わず一冊の本を手に取って開いてみる俺。

 和紙のような薄いモノではないが羊皮紙でも無さそうな……木目っていうか『スジ』のような物が見えるしパピルスっぽい何かかな? 裏面にインクが透けるからか、字は表面だけに書かれている。

 もちろんこの世界ではまだ文字も数字も教えてもらっていないので本の内容は一切わからず、棚にそっと本を戻す俺。

 ……自由に歩くことの次の目標は『この世界の文字』を自分で読めるようになることだな!


 てかさ、少し前に『まだ父親と一度も会ったことがない』って言ったのは覚えてるかな?

 今日初めて屋敷の中を歩き回ってみたんだけど……目に付くのはメイドさん、メイドさん、メイドさん、そしてメイドさん。もちろんメイド服とかは来てないんだけどね? 一応お揃いっぽい服装で統一はしてるけど。

 女山賊……じゃなくて、女騎士様も含めても全員女性なんだよ。


 つまり何が言いたいのかというと……ここまで男の気配が一切無いのはさすがにおかしいのではないか? ということ。

 うちってもしかして貴族なのか? とは思ってたんだけど……ここって大奥とか後宮とかオルドとかそういう感じの場所なのかな?

 俺氏、想像よりもやんごとない身分である疑惑が浮上。

 でも、屋敷の雰囲気だけ見ると王族の線は無さそうなんだけどなぁ。


 それから数日して分かったことだが、どうやら我が家――ヴェルツ家は王国貴族、それも子爵様とそれなりの位の貴族だった。

 山賊団……じゃなくて騎士団なんてモノを持ってるくらいだし、うちって中々凄いのではないだろうか?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る