女男比率100対1の異世界を『ギフト・放置ゲー』で無双する!

あかむらさき

幼少期 01話 大きなたまね……スイカはないけど、無尽蔵の愛の下で

 一番最初の感覚……

 よく見えない……

 よく聞こえない……


 人の体の温もり。

 柔らかいふくらみ。

 二人の女性の楽しそうな声。


 二番目の感覚……

 ぼんやりと輪郭が……

 もしかしてこれはおっぱい……


 思ったよりも膨らんで……無いだと?

 てかこっちのおっぱい……母乳が出ねぇな?

 とりあえず吸うけど。むしろ舌先で転がすけど。

 良い……おっぱいは実に良い……それがおっぱいで有るだけで良い……


 三番目の感覚……

 だんだん見えてきた……

 銀髪美人と金髪美少女……

 そしておっぱい……いっぱいはないけどおっぱい……


 クールな銀髪美人のとびきりの笑顔……もしかしてこれがクーデレと言うものか?

 メイド服らしき服を着た、だらしない顔の金髪美少女……この雰囲気、もしかして駄メイド?

 水面に映る幼児……てかこれ、俺だよな!?

 えっ? 幼児? あれだけ好き勝手におっぱいを吸っておきながら今更だけど、俺って赤ちゃんだったの!?


 オーケイ……大丈夫。そう、俺は何時だってクールに生きてきたはず。

 いや、幼児なのに生きてきたってなんだよ! むしろ生まれたて……でもないな。

 食っちゃ寝、正確には母乳を飲んじゃ寝してただけだけど、それなりの日にちは経ってるしさ。


 思い出せ……クール美人……おっぱい……母乳の味……

 ……推定おかんのおっぱいとか今はどうでもいいんだよ!

 思い出せ……駄メイド……おっぱい……出ない……

 ……このメイド、母乳も出ないのにどうして俺におっぱい吸わせてたんだよ!?

 違う、今必要なのは二人のおっぱい情報ではない!


 いや、でも『俺』って赤ちゃんなんだよな? それなのに一体何を思い出そうとしてるんだ?

 そもそも自分で自分が赤ちゃんだって認識してるのおかしくね? むしろそれをおかしいと気づいてる俺おかしくね?

 なんかこう物凄く哲学的な事を考え出した赤ちゃん(俺)。

 自我の目覚めってこんな突然、こんなにハッキリとした感じで訪れるモノなの?

 もしかして俺が天才か……。


 などと自分の置かれている状況に混乱し、よく分からない心理状態の俺。

 誰だ! 人は慌てると逆に冷静になるとか言ったやつは!? ハンマーでワニを叩きつけそうなくらいパニック状態だわ! 何その動物虐待。いや、ワニはヤラなければヤラれるから殴っても問題無さそうだけどさ。

 えっと、ここっておれん家……でいいんだよな?


 何かこう俺の知ってる『日本家屋』とはまったく違うんだけど?

 無理やり例えるならまるで異人館みたいな感じの家……って日本家屋? 日本?

 日本……日本……そうだよ! 俺って日本人だよな!?

 それがどうして異人館で異人さんのおっぱいを無料で堪能……だから今はおっぱいはどうでもいいって言ってるだろうが!


 ……いきなり興奮しすぎて冷静さを欠いてしまった事、申し訳なく思っている。

 うん? どうしていきなり賢者モードなのかって?

 それはほら、俺……赤ちゃんだしさ。興奮したら出るものが出たりするじゃないですか?

 あれだぞ? 赤ちゃんに出ないおっぱいを吸わせるという奇行に走る駄メイドであろうとも、美少女に嬉々とした顔でシモの世話をされたらアラサーの日本人は羞恥心で死にたい気持ちになっちゃうんだぞ?


 いや、アラサー? 赤ちゃんなのにアラサー?

 てかこいつ、オ○ン○ンを拭う時間長くね? 手つきがちょっとイヤラシくね?

 これまでの行動から薄々感じてと言うか郊外型のアトラクションレベルで体感してはいたけど……もしかしなくともこいつって悪いタイプのショタコンだよな?

 とりあえずマジで恥ずかしいから、この『ちんぐり返し』の状態からとっとと開放してもらいたいのだが?


 クッ……前世で一体どんな徳を積めばこんなご褒美……ちがう、こんな辱めにあわされなければならないのか……こんな思いをするくらいなら……『自我(ひとのこころ)』なんて欲しくは無かったよ……。

 そんな、一人で薄っすらと涙を浮かべながらレイプ目で黄昏ている俺。

 それからぼんやりと、そしてだんだんハッキリと思い出される前世……前世界の記憶。


 家族……

 ヒステリックな母親とほぼアル中の父親、両人ともに博打狂い。

 そんなアレな両親だったので親戚付き合いなどするはずもなく。

 そのくせ、親戚の集まりに呼ばれてもいないのに勝手に参加して好き勝手に飲み食い、さらに嫌われるという悪循環。

 他の家族、祖父母の記憶? 金の無心の為に両親に連れて行かれ、嫌な顔で睨まれた思い出しかねぇわ。

 ……うん、とっとと忘れよう。


 幼少期……

 そんな両親がまともに働くはずもなく、よく腹を空かせてた記憶しかねぇな……。そう言えば俺、小さい頃からあまり泣いた記憶が無いような? もしかしてそんなところも可愛くなかった……いや、泣いたら泣いたで殴られてたから関係ないか。

 保育園、幼稚園……金がかかるからと一人で家で放置……ならまだしも、近所の公園で朝から夕方まで放し飼いにされてたな。

 もちろんそんな子供を数回も見かければ『心配して(邪魔になるので)』110番通報してくれる『心優しい(笑)』近所のオバハンなども居るわけで。警察に補導というか保護されること複数回。

 迎えに来た母親が大声で意味のわからないことを吠え立て喚き散らして警察官がドン引きしてた。あと、迷惑を掛けるなと帰ってから父親に殴られた。

 ……特に覚えておく必要はないな。


 小学校……

 そんな、近所でも評判の○○○○家族の子供に友達など出来ようはずもなく、一人で過ごした六年間。『○○さんの家の子供とは口を聞いちゃいけません!』って俺の聞こえる所で何度言われたことか。

 いじめ? だから最初から誰も近寄ってこねぇんだよ! あっ、もしかしてそれがいじめだったのかも?


 学校給食があったので平日の昼飯だけはちゃんと食えた。……給食費とか持っていった記憶は無いが。土日? 運が良ければ通称片○パンくらいは食えたよ? もちろん買ってもらえた物ではなく、賞味期限が切れて自分たちが食わない物の始末をさせられていただけだが。

 夏場は学校の手洗い場で体を拭いている俺を見て教師がドン引きしてたなぁ。

 春夏冬の長期休暇や連休はかなり辛かった三日に一食とかザラだったからな?

 ……これも忘れよう。


 中学校……

 給食は続く……が、育ち盛りの時期に『一日一食(土日不定休)』は厳しい。とても厳しい。

 小学校の保健体育で色々と学んだ結果、このままでは栄養が足りなくて成長できないと思い、この頃から懸命にバイトしてたな。

 もっとも、俺の財布からなけなしの金を勝手に抜きやがるクソ親にパチンコ、競艇、競輪、競馬代にされた額のほうが自分の食費に使った額よりも多かったが。

 相変わらず友人などは出来ず。というか三年間通して教師ともほぼ喋ってねぇや。


 小学校の時は教育というものに夢と希望を持った年若い教師が俺の境遇を改善しようと家庭訪問してきたこともあったんだけどな? 結果は日本語は話しているが会話にはならない両親に困惑して教師と言う職業に嫌気が差しただけだったみたいだが。

 中学の教師は……良く言えば落ち着いた、普通に言えば冷めた人間しかいなかったな。あと体育教師が女生徒に対するアレで居なくなった。

 部活? 俺に集団行動なんて出来るはず無いだろ! いい加減にしろ!

 ……記憶の片隅にも置いておく必要性を感じないな。


 高校……

 これ以上搾取されてはたまらないと、高校は全寮制の学校に特待生として入学。

 アレな家庭で育ったのに頭が良かったのかって? もちろん頭は良くないぞ?

 でもほら、家に居たくない人間が金も掛けずに使える施設って限られてるじゃん?

 だから物心付いてからはほぼ毎日、むしろ休日なんて率先して図書館通いしてたからさ。


 図書館、冷暖房完備で静かで暇つぶしも勉強も出来る素晴らしい場所だからもっと率先してみんなも利用すべきだぞ?

 てか、高校で初めて部活動に参加! 道具とか買う金はもちろん無いので身一つで大丈夫そうな柔道部に入った。

 陸上系も道具はいらないだろうって? タンスに○ン……裸足の○ンじゃないんだから、まともに走ろうと思ったらクソ高いシューズが必要なんだよ!

 てかさ、部活って上級生からの歓迎……ぶっちゃけるとシゴキとかあるじゃないですか?


 でもほら、俺ってずっと他人と接触していないというか無視、いないもの扱いされてたじゃないですか? ○○菌が移るらしくてさ。

 だからこう、肌が触れ合う感覚ってそれまで全く無かったんだよ。それで、稽古中とか自然と笑顔になってたら……先輩にホ○だと勘違いされた。

 そして勘違いを訂正する為にこれまでの生活の説明をしたら……厳つい顔をした連中に、輪になって泣かれた。そして……よくわからないが俺も泣いた。お前らはちびっこカウ○ーイか。


 もしかして俺……高校になって、初めて人間扱いされたんじゃないかな?

 休みの日に先輩に連れられて一緒に遊びに出掛けたり、同級生の彼女の友人を紹介されたり、県大会で、団体でだけど準優勝したり、紹介された女の子に告白してないのに何故か振られたり。……楽しかった。三年間、物凄く楽しかった。

 もちろんそこでも必死にバイトして……もちろん必死に勉強もして。

 奨学金を借りてそこそこの大学に入学。


 大学時代は……

 こちらから話しかけられるようなコミュニケーション能力を持ち合わせていないのでもちろん開幕ボッチスタート! そしてそのままゴール。

 借金返済と日々の生活のために他の連中の様に遊ぶことも無く、むしろ遊べる余裕もなく、必死に生きていただけだった。

 なんかこう、俺の想像してた大学生像とまったく違う……まぁこれまでも特殊な環境で生活してたし仕方ないね?

 青春真っ只中のはずなのに、思い出せるイベントがまったくねぇや……。


 家族? 高校に入学してから一切連絡も取ってないから生きてるか死んでるかすら知らん! いや、死んだらどこかから連絡が入ると思うからたぶん生きてるんだろうけどさ。


 そして成人してから……

 高校時代に良い出会いがあり、かなり真人間というかまともな人付き合いが出来るようにはなってたんだけど……まだまだ半分人間不信、むしろ人間嫌いを拗らせてた俺。それなりの企業に務めだしたは良いものの……半年で心を病んだ。

 なんなの? 社会人って他人の悪口を言わないと、他人の足を引っ張らないと死ぬ病気か何かなの?

 まずい……非常にまずい……このままだとギリギリ形を保っていた心が壊れてしまうかもしれない……。


 そんなわけで病気療養を理由に職場を退社。俺のような人間は別に珍しくも無いらしく、特に引き止められるような事もなく。

 そして俺が『コレだ!』と選んだのは住んでいた風呂無し木造アパートから離れてはいるが地方の工場でのお仕事。

 黙々と工場で単純作業。いい……実にいい……この仕事、とても心が満たされる。

 てか人間嫌いのクセに……人肌恋しくて風俗通いを始めたり……もちろん最後までする度胸もなく、毎回抱きついておっぱいばっかり吸ってた。



 ……非常に長い思い出話になってしまい申し訳なく思っている。最後はまたおっぱいだし。

 なんかもう……我が事ながらこうして振り返ってみると碌な人生を送ってなくて、これ以上の個人情報を曝け出すのが辛いので回顧はこれくらいにしておく。

 そもそも小さい頃からの記憶とか今は特に重要なファクターでは無いから語る必要も無かったしね? ならどうして振り返った俺。

 そう、そんな無駄な過去の記憶ではなく、今大切なのは『どうして俺が日本では無く海外の様な場所でで赤ちゃんプレイをしているのか?』なのだから。

 いや、プレイじゃなくて本物の赤ちゃんになってるんだけどさ。


 『ずきり』と神経に何かが触れたような痛み……そして浮かび上がるのはその時の映像。


 勢いよく坂道を駆け下りてくる……暴走自転車のハンドルを片手で握ったクソBBA。

 前に後ろに子供を三人も乗せ、特殊な訓練はまったく受けていない某国雑技団のような四人乗りの自転車が坂道を駆け下りてくる。

 そしてその自転車の先には自販機……の隣でエナジードリンクを流し込む、残業続きで疲れ果て、体はまともに動かせないが目だけはガンギマリの俺。


「誰か止めてぇぇぇ!! 助けてぇぇぇ!!」


 と、ブレーキを握ることもなく――握るも何も右手にはスマホ、左手には某ハンバーガーショップの袋をぶら下げてるのでブレーキに触れてすらいなかったが――真っ直ぐに、むしろブレをハンドル修正しながら俺に突撃、ランスチャージならぬマ○ドチャージしてくるBBA……。

 せめて仕事終わりじゃなければ、せめて十五連勤の後じゃなければ自力で避けることも出来たと思うんだけど……。

 時が止まったように、その場で身動き一つ出来ずに暴走自転車にぶち当たられた俺。まさか自転車に撥ねられて宙に浮くとは……。


 まぁそれでも? 撥ねられただけなら多少の怪我くらいですんだんだよ。

 運が良いのか悪いのか、撥ね飛ばされた先にはなんと立派な『いけず石』。

 てか『いけず石』って京都以外にもあるのかな?

 これでも元柔道部員なのに……受け身も取れず、歪な形の石とご対面。そのまま頭部を強打してしまい……。

 赤から黒に、ブラックアウトしてゆく意識の中で俺が最後に見たのは――人に自転車をぶつけておいて、まるで自分が被害者かのように口から泡を飛ばしながら俺のことを口汚く罵倒するキ◯◯イBBAの顔だった。

 最後の最後で母親を思い出させたこのBBAを俺は死ぬまで許さねぇっ!!

 まぁ、その後数秒で死んじゃったんだけどな。


 とりあえず自分で勝手に思い出しておいて何だが自分の死ぬ場面の記憶とか口の中でちっさいゲロ吐きそう……。

 そして次に思い出したのは俺が死んだ後の記憶。

『いや、死んだのに記憶があるって一体何なんだよ!?』

 って話なのだが……あるんだから仕方がない。


 そこは白い部屋、ただただ白いだけの何もない部屋。壁も床も白が広がっているだけで他には見えなかったから部屋ではなく無限に続く空間だった可能性も微妙なレベルどころか大きな可能性として存在する。

 そんな、天国と呼ぶにはあまりに無機質な世界で……俺は神様に出会った。

 あくまでも自称神様だったんだけどな? なんかこう、『白い玉(まりも)』みたいなのが俺の脳内に話しかけて来たんだからきっと本当に神様だったのだろう。

 だって神様じゃなければもっと怖い存在かも知れないから。


 まぁ相手が誰であろうと超常現象であることには変わりないし?

 なんかこう、俺自身も元の体――人間の体ではなく神様と同じ様な白い玉状態だったし?

 大人しく、三角座りしている雰囲気を醸し出しながら神様の話を聞いたんだよ。

 そして判明した事実、交通事故で死んでしまった俺氏……実は八十八歳まで生きる予定だったらしい。


 いや、どうしてだよ! それじゃあどうして二十九歳で死んでるんだよ!

 ……もちろん理由があってのことだった。

 ほら、落語で『死神』ってのあるじゃん? 死にそうな人間の枕元には死神が居るからタイミングよく布団を回転させて死神を足元に移動させるってやつ。

 知らない? なら動画サイトでも見て落語の検索をしてもらいたい。

 つまり何が言いたいかというと……どうやら俺、運命を取り替えられたらしい。


 そう、本当ならあの場所で死ぬ予定だったのは『自転車で俺を跳ね飛ばしたBBAとその子供』だったのだが、 それを見ていた『心優しい天使(フェミBBA)』が、


「このままだとギャンブル狂いでDV上等のDQNとズッコンバッ婚したもののふた月で離婚、そのあともシングルマザーとしてズッコンバッコン、三人も子供を生んで日本の人口減少を食い止めるために大きく貢献したママさんとその子供ちゃん達が死んじゃう!

 どうにかして助けなきゃ……ああっ! ちょうどいい場所に独身で役立たずの気持ち悪い目をした男がいるじゃないの!

 あんな二酸化炭素を浪費するしか脳が無さそうなクソ袋男なんて生きていても仕方がないわよね?

 うん、そう、そうよ!

 SNSで『自分はまったく理解していないけど、声の大きな女性政治家が騒いでるのできっと正しいのだろうと政治の話題に乗っかって与党批判をする事と、妬ましくて羨ましくてイライラすると言う理由で幸せそうな芸能人ママさんの作る料理をディスるのが趣味』の素敵なお母さんと毎日家の中で叫び暴れまわりご近所さんに多大なストレスを与えるその子供たちの身代わりになれるんだから唯々諾々と運命に従って、むしろありがたいと私に感謝しながら死になさい!」


 と言う理不尽通り越して何一つ理解することが出来ない内容で俺とそいつらの寿命を取り替えやがったらしい。

 何だよその『ゲームキャラのおっぱいの大きさにキレ散らかす仕事で大金を手に入れられるポリコレ団体が模範解答を出したトロッコ問題』みたいな展開は……。

 いやもうね。あれだよ? 別に死んだことに対しては文句は無いんだよ?

 死に方もほぼ痛みを感じる間もない死に方だったし? 自分のこの先の未来に夢も希望も持ってなかったしさ。

 でもほら……な?


 もしも今回助けたのが自転車に乗った女子中高生とかならさ、俺も心安らかな気持ちで成仏出来たと思うんだよ。

 きっと最後にその子のパンツくらいは見えたと思うし。

 逆に? 相手が怪我をしなかったか心配する心の余裕を持って死ねたと思うんだよ。

 それがさ、よりにもよって助けた相手が母親を思い出させるような○○○○BBAとかさ……これ、納得出来る奴おる?


 でもほら(勝手に俺の命を)捨てる天使があれば、それをなんとなく、その時の気分で拾う神様もあり。つまり眼の前に浮かんでる光のまりもだな!

 なんと! 俺を哀れに思った神様が『……し人口の少ない』異世界に『転生』させてくれることになったんだよ!


 ……寿命を残したままの生き物を死後の世界に旅立たせると『冥界神』から物凄い苦情が来るとか、そいつの『魂(ソウル)』が送り返されてくるとか、その処理をするのが非常に面倒くさいとか、それならいっそ自分の管轄外である異世界に捨てちった方が後々楽じゃね? と言う神様の本音らしきモノが脳内に伝わって来たけど……そんな細かいことを気にしてはいけない。

 何故ならその時の俺は『異世界FoooooooooU!!』と心のなかで喝采していたのだから。



 と、ここまでが俺の前世、地球、日本での記憶なんだけど……なんだこれ。

 前前前世あたりでよほどの業を背負うような事をしたのか俺? 第六天魔王とか名乗ってそこかしこで寺とか焼いてたのか俺? 南蛮人が奴隷にしていた黒人を小姓として譲り受けたら……いや、この話題はこれくらいで止めておこう。

 そして自分の死因を思い出した事により手に入れたのはあちらこちらのBBAに対するフラストレーションだけという。

 ……いや、ちょっと待て! 神様……確か最後に何かくれたはず!


 何だっけ……確か……そうだ! 『祝福(ギフト)』!

 なんかこう、なんかもらった! 語彙力皆無か俺。

 もちろん普通なら魂が違う世界に送られるとしてもそんなモノは貰えないらしいんだけどな?

 そもそも地球から別世界に魂が送られること自体がそうそう無い事なのは置いておくとして。


 ほら、俺って小さい頃からあまりにも不幸って言うか不運な人間だったみたいでさ。

 普通の人間はだいたいフィフティ・フィフティで幸運、不運が調整されてるらしいんだけどね?

 俺の場合は不幸九割五分、ささやかな幸福五分くらいの割合だったらしくてさ。

 あれ? なんだろう? 目から汗が止め処なく溢れて……。


 ま、まぁ? そんな感じで?

 神様からギフトである『放置ゲー』というのを貰えたわけなのである!

 やった! スゲェ! 放置ゲー万歳!

 ……いやいやいや、何? 放置ゲーis何?


 放置ゲー……ゲーっていうくらいだからゲームのことなんだよな?

 知らないの俺だけ? みんなは放置ゲープレイしてるの? そもそも放置なのにプレイするってどういうことなの? これ日本語として正しい使い方? 大丈夫?

 頑張れば頑張るだけ風俗店に通える……もとい、いずれ血となり骨となる職場で『週休二日? 馬鹿なの? 死ぬの? むしろ月に二日休めたらいいね?』な環境で働いてた俺である。


 家でゲームどころかスマホでアプリを触る時間があるなら少しでも目をとじ、十秒でも寝ることを選ぶのは当然の行為じゃん?

 それでも入浴中とか休憩時間とかトイレタイムにネット小説みたいなのは読んでたんだけどね?

 いいよね! ネット小説! ……何のステマだこれ。


 ……まぁ今はそんな事どうでもいいか。

 神様が親切で何かをくれた!

 そして……この世界の俺のおかんは美人で優しい! メイドっぽい美少女まで完備! お家は異人館! これもう人生の勝ち組確定だろ?

 なんたって今の俺は生まれて数ヶ月しか経っていない赤ちゃんなのだ!

 これから幸せになる、楽しく生きるための時間はいくらだって……いくら……だって……。


スヤァ……。


―・―・―・―・―


長い……とても長い……でも二つに分ける場所がない……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る