第2話 母なる者

「───マジ、かよぉ!!?」


ルススの頭上を、流星群と見間違う量の巨石が通りすぎる。


着弾地点は遙か遠方。


───最悪だ。


ルススの脳内には恐るべき結論が構築されていた。



(さっきの岩石は正確にゴーレムを撃ち抜いていた。そして今回の投石、複数弾が飛んできていた。僕の距離から発射地点を目視できないのにも関わらず、だ)


情報をまとめると、敵は範囲外から目標を補足しゴーレムを一撃で破壊できるほどの威力とコントロールで投石できる。

一回目が一発、間髪を入れずに二回目を複数ということは、ゴーレムの位置は補足していて、次弾は大まかに絨毯爆撃といった具合だろう。



───精度の高い投石が可能なゴーレムが、複数体。



これが敵戦力の正体なのだろう。



───はっきり言って絶望的だ。



間違いなく敵は『銘付き』


先ほどの複数弾の投石は、こちらの切り札である一級造形師を狙ったものであるのだろう。


仮に今の投石を生き延びていたとして、一撃でゴーレムを撃ちぬける精度を持つ相手に、もう一度ゴーレムを生成して障害物になった岩石を避けながら遙か遠くの射撃地点までゴーレムを進める?



無理だ。



ふと、脳裏に過去の光景がよぎる。


『銘付き』


一級造形師を超えた、尋常ならざる造形師に与えられる称号。


『銘付き』でこの国最強とも言われる兄との会話の記憶。



『ねぇ兄貴、ゴーレムになんで口が付いてんの?いらねーでしょ口』


『ん?いやいるでしょ口。口はいるよ口は』



───はは、なんだこの走馬灯。



そういえば、コネだと蔑まれながら必死に三級造形師になったのは兄貴に褒めてもらいたかったからだったな。



せめて臆病者としてじゃなく、勇敢に死ねば少しは兄貴も胸を張れるかな。



『生まれろ────!!!』



両手を地面に付けて、造形師としての仕事を始める。

自分の力を大地に流し、人型を生成するイメージ。


やがて地面はボコボコと盛り上がりだんだんと形を成していく───。



そして出来上がったのは、人型の、いや、完全に人と見間違うほどの精度のゴーレム───!!!



「───いや、人じゃね?」



そう、地面から出現したのはゴーレムではなく女性だった。



その女性はゆっくりと手を広げ、高らかに掲げた。



そして、



「───私の子供が困ってるでしょうがぁ!!!!」



スナップの効いたビンタをルススに喰らわせた。

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