第6話 初めまして?

「...まだ仮想空間の中なのかな?」


リビングに着いた井上朱莉はソファーで寝転がってゴーグルをしている銀髪の少女を見てそう呟くが、すぐにその考えを捨てる。

家の間取りや家具を再現できるわけが無い...

そう思いながらその少女に近づいてみる。


わぁ.....

少女の体が良く見え始めた時点で小さく感嘆の声を上げる。

ダボダボなTシャツから出ている雪のように白い腕を指でつつくと柔らかくスベスベでとても触り心地が良い、特徴的な銀髪はサラサラ・ツヤツヤである。

そんな現実離れした体を少し羨ましいと思いながらまじまじと見ているとあることに気づく。

この少女にしては大きすぎるゴーグル、兄が好きなアニメのステッカー...


「いや...これお兄のギアじゃん」


何故この子が持っているんだろう...ていうかこの子が着ているのは兄の服...

はっ、もしかして今この子をこれから家で預かることになっている...とか?

親は『しばらくどこか行ってきます』とか書いてある紙を置いてどこかに行ってしまったし、ワンチャンあるのかもしれない。ちなみに親は毎月お金だけ銀行の方へ渡してくれているので特に困ったことは無い。

ていうかこの子がギアを持っているということは兄はバルスへ入っていないということ...この子を放置してどこに行ったんだろうか、もしどうでもいいことでこの子を放置しているのなら説教が必要かもしれない。


「はぁ、あの兄は...まったく...」


朱莉は溜息を吐き頭を悩ませていた。





バルスの製作者が話している特殊な配信を強制的に見せられ突然の事であっけにとられていたが、バルスのプレイヤーが強制ログアウトされるという言葉を思い出し現実に帰ろうとオープンサーバーから離脱しギアの電源をOFFにした時だった。


むにゅ...むにゅ...

誰かに腕をつつかれているような感覚がする。

ゆっくり目を開けると、そこには少し見惚れているような目線でこっちを見てくる朱莉の姿が見える。

マジックミラー式のゴーグルのおかげで俺が起きたことに気づいていないようだ。


ていうかなんだこの状況。

何故か少し機嫌の良い妹に腕を指でつつかれたり撫でられたりしている。

正直少しくすぐったいからやめてほしい...


「はぁ、あの兄は...まったく...」


少し悩んだような表情で呆れているような声を出す妹に、思わず俺はゴーグルを外しながら起き上がり声を出す。


「何も悪いことしてないんだが!?」

「えっ?」


妹はとても驚いたような顔でこっちを見る。

あっ...やっちまった。








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