第2話 非日常

「な...なにこれぇぇぇぇぇぇ!?」

手や髪を見て疑問交じりの大きな声を出すが次は自分が出したであろう高い声にびっくりして体が後ろに倒れる。

「うわっ!」

いつもの自分とは違い高く可愛らしい声、寝ぼけているのではと思い目を擦ろうとするがその手すら小さく俺の体とは思えないほど柔らかい。変な夢なのだろうかと思いその手で顔を叩いてみるがペチペチとかわいい効果音のようなものが聞こえてきた。

「な...なにがなんだか...」

ようやく今の状況を整理しようと思考を巡らせているところで違和感を感じる、この17年共にしたはずの存在が感じられないからだ。そんなわけ...そう思いながら違和感を確かめるためその小さな手をサイズが合わずぶかぶかになっているズボンに恐る恐る伸ばす。

「無い」

そう、本来ならあるべきはずのあるものが無いのだ。何故ないのか、今の状況はどうなっているのかと思考するべきであり、実際それをするために脳を動かそうとしていたのだが、それらを吹き飛ばす考えが俺の頭に浮かぶ、そうこれは目の前の未知を知りたいという好奇心、と変わり果てた体を見ながらそれっぽいことを考える。高校二年、『彼女いない歴=年齢』な俺にとってこの好奇心は消せない、消せるはずが無い。これは今の状況をしるための状況把握であり他意は無い、そう無いのだ。

「そう...これは状況把握のためだから仕方ないこと...」

そう声に出しながら手を伸ばそうと決意し手を伸ばしかけていた時

「お兄!!!話したいことが...」

聞きなれた妹の声が突然どこからか聞こえてくる。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

妹がしゃべり終える前に俺の高い声が部屋に響く、突然のことに驚くと同時に何をしようとしていたのか妹に見られたと思い羞恥心から布団の中に体を潜らせる。

み、見られた、完全に終わった。これから変態と呼ばれてあのゴミムシを見るような目がデフォになるんだ...そう思い布団の中でくるまって悶えていると妹が何かをしゃべっている、まずいと思った俺は慌てて布団の中から顔を出す

「ち、違うぞ、これは、その、あの、とにかく違う!!!」

勢いに任せて言葉を並べようとするせいでまったく言葉がまとまらない。

「俺はお前の兄の井上翼(いのうえつばさ)なんだ!」

とりあえずこれだけは言っておかなければと妹の声がする方に顔を向けるがそこに妹の姿はなく、俺の携帯が置いてあるだけで妹からの返事は帰ってこない。そもそも冷静に考えれば何故俺の携帯から妹の声が聞こえてくるのだろうと疑問に思っていると

「何かわかったらまた連絡する。ごめん、お兄」

いつもの妹からはあまり考えられない弱ったようなその言葉を最後に俺の携帯からは妹の声が聞こえなくなった...













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