第18話 誰が、あの噂を広げたのだろうか
翌日。
移動教室での授業が終わると、
クラスメイトである
そんな中、昨日ファミレスで、亜佑奈と会話していた内容を思い出していた。
それは莉子が色々な人と付き合っているかどうかの件である。
莉子がビッチであるかどうかなんて、何なる噂。
そもそも、誰が最初に、そんな発言をしたのかは不明だが、莉子の事を陥れるような発言はあまり好きではなかった。
莉子本人は、そういう噂を知っているのだろうか。
彼女が嫌な思いをしているのならば、どうにかしてあげたいと内心考えていた。
しかしながら、その元凶が分からない時点では、何の対策も打ち出せなかったのだ。
啓介が校舎の三階の廊下を歩いていると、近くの部屋から声が聞こえてくる。
気になるセリフがいくつか飛び交い、啓介はそこに耳を近づけてみた。
「というか、あの噂ってさ、本気で信じてる人っているのかな?」
「さあぁー、でも、私。あの人の事は好きじゃないし、その噂で潰れてくれた方がいいと思ってんだけどね」
部屋から誰わからない子らの笑い声が聞こえている。
嫌な会話のやり取りを耳に、心がグッと締め付けられるようだった。
噂というセリフが聞こえてくるものの、それ以外の言葉が扉越しからだと聞こえづらかった。
それでも、苦しかったのだ。
でも、知りたい。
啓介はモヤモヤしていた。
噂と言えば、莉子の話であるに違い。
啓介はそう考え、もう少し扉の方に耳を近づけてみた。
嫌な内容かもしれないが、今後のためにも知りたいのだ。
「でも、あいつってさ、今誰と付き合ってるんだって?」
「それは――」
「へえ、そうなんだ」
部屋に耳を近づけてからは、声がある程度聞こえるようになったが、重要な事だけが全然聞き取れないのだ。
啓介は気になってしょうがないが、誰がこの部屋の先にいるかもわからず、ほぼ初対面であろう人に、いきなり話しかける事も出来るわけもなく、部屋の扉を開けられずにいた。
啓介が部屋の前で戸惑っていると――
「そこで何をしてるの?」
聞き覚えのある声に、啓介はハッと顔色を変え、そちらの方へ視線を向ける。
歩み寄ってきているのは莉子だった。
「な、なんでもないから」
ここで会話を続けるのはまずいと思い、啓介は咄嗟に、莉子の手を引っ張って、その場から離脱する事にした。
廊下を早歩きで移動し、二階に繋がっている階段を下って、いつもの教室がある階へと向かう。
「な、なんとかなったぁ……」
「それにしても、難波君って強引なんだね」
「え、そ、そうじゃないけど。さっきは色々あって」
あの部屋から聞こえてくる内容を莉子には聞かせたくなかったからだ。
「そう言えば、月見里さんはどうして三階に? 教室に戻ってたんじゃないの?」
「だって、難波君が来るのが遅かったから」
「それだけ?」
「そうだけど。それに、あともう少しで次の授業も始まるでしょ」
「た、確かに」
スマホ画面を見てみると、あと二分だった。
あのままいたら、啓介は余計な事で、先生から怒られるところだったのだ。
啓介は助かったと胸を撫で下ろし、彼女と共に教室に向かって行くのだった。
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