第16話 彼女は何かを隠している気がする

 クラスメイト――亜佑奈あゆなのバイト先というのは街中にある。

 亜佑奈がバイトの店長と話してくると言い、バイト先の裏口から入っていき、二〇分が経過していた。

 しかし、彼女が戻ってくる気配はなかったのだ。


 外から亜佑奈のバイト先の店内の様子を伺ってみるが、彼女の姿はどこにもなかった。


 おそらくだが、バイトをしているわけではないみたいだ。

 本当に店長と会話するだけだと思われるが、それにしても遅い気がする。


 何をしてるんだろ……。


 それほどにも店長と重要な話をしなければいけないのだろうか。


 啓介けいすけは首を傾げ、店屋の前で待っていると、やっと扉が開いたのだ。


 そこから外へ出てくる亜佑奈の姿が見えた。


「では、失礼します」

「じゃあ、これからの事もあるから。君の方でも色々と考えておくようにね」

「はい……わかりました」


 外に出ている亜佑奈は店屋の奥にいるであろう店長に対し、頭を下げていたのだ。


 彼女は深呼吸をした後、扉を閉めていた。


「……まあ、そういう事もあるよね」


 亜佑奈は肩から力を落とし、独り言を呟いていた。


「どうかしたの? そんな顔をして」

「え?」


 啓介が近づいていくと、彼女は少し驚いていた。


「んん、なんでもないよ。気にしないで」

「そう?」

「うん……ただ、今後のスケジュールについての話だったから」


 亜佑奈は無理しているような気がする。

 放課後。道端で会った時からだが、さらに表情が暗くなっている気がした。


「話は終わったから。予定通り、どこかに行こうよ」


 亜佑奈は、啓介に対して、ぎこちない笑みを見せてきたのだ。

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