第15話 亜佑奈は悩んでいるらしい?

 学校帰りの放課後。通学路で、クラスメイトの桜田亜佑奈さくらだ/あゆなと出会った。

 そんな彼女は啓介けいすけの存在に気づくなり、近づいてきたのだ。


「難波君はこれから帰るの?」


 茶髪ショートヘアな亜佑奈の方から話しかけてきた。


「そうだけど。桜田さんは?」

「私は今からバイトしている店に行かないといけなくて」


 彼女は軽くため息をはいていた。


「じゃあ、バイトってこと?」

「でも、そういうわけじゃなくてね」

「?」

「バイトっていうか、本当は休みなんだけど。店長がちょっと話したいことがあるらしくて。それで行くところだったの」

「へえ、何か大変だね。あ、そうだ、この前のバイトの件は誰にも言ってないからね」

「その件に関しては、ありがと」


 彼女は礼儀正しく頭を下げていた。


「でもね、すぐには話が終わると思うんだけど」

「そうなら、早めに行動した方がいいんじゃないかな?」

「そ、そうだよね。行動しない事には何も始まらないよね」


 亜佑奈はグッと両手に力を込めた後、少し深呼吸をし――


「そうだ、難波君はこれから用事ってあるの?」

「今日はないけど」


 本来は今日、莉子と遊ぶ約束になっていたが、自動的に、その予定は消滅していたのだ。


 啓介は手にしたスマホの画面を見て、一応時間を確認する仕草を見せる。

 時間帯的にも問題はなさそうだった。


「だったらさ、私の用事が終わったら一緒に遊ばない?」

「俺と?」

「う、うん。ちょっと色々と聞きたい事もあるし、他にも話したい事があって。難波君的にはどうかなって」

「俺は別にいいけど」

「じゃ、そういうことで、決まりね!」


 先ほどまで落ち込み気味だった亜佑奈は、パアァと表情を明るくしていた。

 元気になったらしい。


 啓介は成り行きで、一先ず彼女のバイト先まで移動することにしたのだ。

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