第9話 総力戦へ
共和暦215年9月18日 ロドリア共和国 首都サン・ペテロ
「艦隊が、壊滅だと…!?」
共和国最高評議会議事堂で、ロベルス第一統領は唖然とした表情を浮かべる。他の閣僚も同様に、軍高官からの報告に唖然となる。
「は…大型巡洋艦2隻を含む艦艇16隻が撃沈され、制海権を敵に奪われたとの事です。また元老院議員の使節団の消息も不明です」
報告が終わり、沈黙が訪れる。と直後、一人の官僚がダンと机に拳を叩きつける。
「何故だ、何故我が軍が見知らぬ連中にここまでコケにされるのだ!?」
「…これの失態に対し、軍は如何様に対処するつもりか?」
その問いに対し、ドラクムス国防委員長は険しい形相のまま答える。
「…現在、軍総司令部では本国軍の大量動員と、別管区からの引き抜きによる強化で戦線を強化。1か月後の大規模攻勢でエルディア・モーギアの戦線と、スヴァン半島に攻め込んでいる敵軍を蹂躙します」
そう答えると、ロベルス第一統領は怒鳴る様に言う。
「それだけでは足りん!陸軍は『赤獅子騎兵団』を、海軍は『白海艦隊』を繰り出せ!『メギド』の使用許可も出す!徹底的にフロミアの抵抗勢力を叩き潰せ!」
その言葉に、会議室にざわめきが響く。共和国陸軍で最新の装備を身に纏う精鋭の機甲師団『赤獅子騎兵団』に、海軍の主力艦隊である『白海艦隊』を投入するというのだ。これはもはや総力戦である。
果てにはロドリア最大の破壊力を持つ兵器『メギド』も、抵抗勢力の掃討に用いると宣言したのだ。どうやらロベルスは完全に激高している様だ。
「ここからは、我々ロドリアの国家・民族の偉大なる名誉のための戦いとなる。総員、気を引き締めてかかれ!」
「は、ははっ…!」
・・・
日本国東京都 内閣総理大臣官邸
「こちらが、現時点での稼働率です。『転移』以前からの防衛力整備計画によって稼働率は改善しておりますが、弾薬や燃料以上に車両や航空機の整備用部品の消耗が激しく、メーカーは多くの失業者を雇い入れてフルタイムで工場を稼働させ、生産を急いでおります」
防衛大臣から提出された資料に、矢口は思わず天を仰ぎそうになる。
「やはり、弾薬や燃料よりも、『ハコモノ』の維持の方が厳しいか…」
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